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二度目の四天王ライフ  作者: 羅弾浮我
第一作:〜異世界への突入、『聖陽郷』での波乱〜
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69話:天使の務め

 聖陽郷北方鉱山地帯、ノーマント。その中にある死の山脈の山に、邪陰郷は本拠地を置いていた。


 そしてその本拠地がある山を、たった一人で一瞬にして吹き飛ばしてしてみせたゴウ。そんなゴウの攻撃に合わせ、一瞬でアキラを奪還してみせたゲン。さらにはレイとシロもそこに加わり、その後ろには優輝たちと一緒にいる十二人衆のもう半数も。

 クロ以外の聖陽郷主戦力が揃い、残る邪陰郷の面々と火花を散らす。


「――待て。お前らが助けに来てくれたことは、素直に嬉しい。ゲンもアキラを助けてくれてありがとう。でも、何で優輝たちを連れてきた? レイには、この戦いに優輝たちを巻き込まないでくれと、そう言ったはずだ」


 レイたちの後ろにいる優輝たちに目を向け、顔を顰めるリゥ。

 リゥはここに来る前、聖陽郷に残るレイに優輝たちを託し、この戦いに一切関わらせないことを約束していた。しかし、そんな約束を交わしたのにも関わらず、レイは優輝たち四人を全員連れてきた。それも、邪陰郷の本拠地――総戦力が集まる、決戦の舞台に。


「この戦いが終わったら、ここでの優輝たちの記憶を消し、元の世界に戻す。万が一があれば、俺がいなくてもそれをやっておいてくれと、そう言ったはずだ。こいつらの気配に気づいて来たのなら、それが万が一の事態だろう! 何で連れてきた!? クロの力があれば、数日の記憶を消すことくらい容易くできただろう!?」


「――リゥは、それで本当にいいのかい?」


 るか筋を立てた目を向け、罵声とも捉えられる声量と言葉でレイを責め立てるリゥ。そんなリゥに対し、やはりレイは至って冷静。ここ最近で日常茶飯事と化しているリゥの怒声に、こちらもまた落ち着いた態度でいつもの様に対応する。


「この子たちの気持ちは、しっかり聞いたのか? 君自身の気持ちは、しっかり考えたのか? 話し合って、お互いの意見を尊重し合って、しっかり時間をかけて、漸く決めることじゃないのか?」


「そんなこと……そんなことができるなら、俺だって――!?」


 レイの言葉に、再び声を荒げようとしたリゥ。段々と声量が上がり、ピークに達すると思われた瞬間。砂埃を上げながら、リゥの体は地面を転がる。


「交渉の続きがあるだろう、リゥ。何を勝手に話している? ゲンがそのガキを奪い返したところで、その檻には結界が張ってある。お前が邪陰郷に来ない限り、そいつは解放されない」


 吹っ飛んだリゥにゆっくりと歩み寄り、少しずつその距離を埋める男。それは、アキラを攫った張本人にして、聖陽郷の裏切り者――ゼンジだ。

 自分との交渉を忘れ、レイとの話を始めたリゥに、ゼンジは回し蹴りを放ったのだ。

 その攻撃は、普通の老人には出来るはずもない身の熟し。明らかに常人ではないことの表れだった。


「――いや、違うな。結界は、それを張った張本人が命を落とせばその効力を失う。リゥを邪陰郷に入れるくらいなら、俺たちは二人のためにお前と戦おう」


「俺と戦う? 何を言ってるんだか……俺が態々お前らの相手をすると思うか? ここがどこで、ここに誰がいるか、分かっていないのか?」


 リゥに歩み寄るゼンジの前に立ったゲン。アキラを結界の張られた檻ごとシロに預け、戦闘の準備は万端。ゼンジが常人ではないことを知っているからこそ、ゲンも本気で戦おうとしている。

 が、しかし。ゼンジの言う通り、ここは邪陰郷の本拠地で未だ邪陰郷の幹部たちが残っている。行動こそ起こさずに静かにしているものの、既に臨戦態勢には入っているのだ。


「さらに加えれば、お前たちが最も気にかけた存在――そう、嘗ての四天王までもが、今ここにいる。そしてそれが誰だか――シロ、お前なら分かるだろう?」


 ゲンに向けられた視線をシロに向け、ニヤリと笑みを浮かべるゼンジ。含みのある、嫌な気配しか感じ取られないその笑みに、シロはゴクリと息を呑む。


「――気配を感じとった時から、何となくは分かっていました。そして、今その姿を見た瞬間、それも確信に変わった。私とクロが初めて仕えた、初代の四天王」


「それが分かるなら、最早この戦いに勝ち目がないことも分かっているだろう? 歴代最強など、所詮は愚民の愚かな風評。歴代どころか先代の力すらも分からないのに、民衆は記録に残る成果だけで評価を付けたがる。初代の記録が、全て正しく残っている訳でもないのにな」


 いつどんな時でも落ち着いていて、四天王で言うところのレイと同じ立場にあるシロ。稀に取り乱すクロとは違い、姉である分シロの方は滅多なことでは取り乱さない。

 現に、リゥたち四天王はシロが焦っている様子を見たことは無い。内面では焦っていたとしても、それを表に出すことなどなかったからだ。

 しかし、そんなシロが今では誰の目にも明らかな程に焦っている。


 極度の緊張からか、顔が強張り目元が引き攣るシロ。動かす口は言葉を発することとは別に小刻みに震えていて、額からも汗が流れる。

 明らかに普段とは違う。リゥを初めとした四天王と十二人衆は、即座にそれを判断した。


「――初代四天王。まだ聖陽郷が人間を主とした世界ではなかった頃に、全種族の中で頂点を極めた四人組。私とクロが初めて仕えた四天王、忘れるわけもありません」


 ――しかし、それでもシロは天使だ。自らが仕える四天王という立場には、原則敬意を払って行動しなくてはならない。そう自分に言い聞かせ、焦る気持ちを落ち着かせながら四つの影――初代四天王と呼ばれた彼らの元へ足を運ぶ。


「犬人族の若き長、牙狗(ガク)様。貴方の持つ最大の武器である、研ぎ澄まされた牙と爪。研ぎ澄まされたのはその武器だけでなく、御自身の技術もまた同じ。その素早さと敵を確実に討つその戦闘技術は、多くの人の視線を集めて――いえ、失礼しました。多くの人から向けられた視線を掻い潜っておいででしたね」


 初代四天王の前に立ち、先ずは向かって左に立つ獣耳の男に視線を向けるシロ。四天王に仕える身として、最大限の敬意を払いながら言葉を送る。


「そして次に、圧倒的な力で同族から絶大な信頼を得ていた巨人族の族長、砕鬼(サイキ)様。他の追随を許さないその怪力は、多くの人からの憧れを受け、尊敬され、砕鬼(サイキ)様さえいれば大丈夫、という確実な安心感持たせておいででしたね。山すらも壊すそのお力が、多くの人の心を支えていました」


 次に、牙狗(ガク)と呼ばれた四天王の一つ右に視線を移すシロ。

 そして今度はさらに右、今回の四人の中では最も背丈の低い存在。その小さな体に大きな羽を備えた、三人目の存在に目を向ける。


「エルフ族の祖先であり、唯一無二の風と自然の使い手、華依(カイ)様。自然そのものを自らの居場所とし、拠り所としたその自然を自由に操る。木から木へのワープを可能にし、無から自然を形成することさえ可能にした『自然』属性の創立者。貴方のその功績は、今も尚重宝されるものとなっています」


 そして最後に目を向けるのが、この中で最も普遍的な体格の男。獣耳、筋肉、羽根の中に一般的な体格の存在があると、それが寧ろ異彩を放つ。

 今この中で最も警戒されているのがゼンジだとすれば、その次に警戒されているのがこの男だ。なんの特徴も持たない存在だが、それだけ周りからの注目を集めている。


「そして最後に、初代四天王リーダー。その素性は誰にも知られず、どこの種族にも属さない、本当の意味での唯一無二の存在。名無(ナム)様。存在だけでなくその戦闘スタイルも唯一無二の物であり、そのパターンもまた無数。相手に悟られないその戦闘は、いつも圧倒的で一方的なものでした」


 そう言うと、畏まった態度を解きゆっくりと顔を上げるシロ。そんなシロを見て笑みを浮かべるのは、ゼンジただ一人だ。


「今のお前の役目は、リゥたちの補佐じゃなかったか? それとも、数百年前の初代が懐かしくなったか……いいだろう、クロがいないのは解せないが、お前も邪陰郷に来たらどうだ? そうすれば懐かしの初代の補佐を再びやらせてやるぞ?」


「いいえ、私の役目はリゥ様たち今代の四天王の補佐。ですから、今も尚その仕事を全うしたつもりです。何か勘違いをされていませんか?」


 初代四天王を前に誠心誠意尽くした対応をするシロを見て、シロを邪陰郷に引き入れようとするゼンジ。しかし、好機と見て思わず笑みを浮かべるゼンジに対し、シロが向けるのは柔らかな嘲笑。悪意こそは篭っていないが、好意的な笑みでないことも確か。

 するとシロはサッと踵を返し、後ろで控える四天王と十二人衆に一礼。そしてそのまま颯爽とその場を離れ、その位置を四天王たちと交代する。


「情報提供ありがとう。これで僕たちも、未知の相手と少しは真面に戦えそうだ。各々、対戦相手も見定められたようだしね」


 シロと立ち位置を交代し、初代四天王の前に立った四天王。その中でレイが軽く髪をかきあげ、優しく微笑む。そしてリゥと後ろで構える十二人衆にそれぞれアイコンタクトをとり、リゥと十二人衆もまたアイコンタクトをとる。


 そう、シロが敬意を払っていたのは、初代四天王ではない。敬意を払い尽くしていたのは、聖陽郷側の彼らのためだ。実践的な内容を踏まえた功績を声に出して讃えたのは、全てこれから戦う彼らへの情報提供。初代を知らない彼らに、必要最低限の基礎情報を渡したのだ。


「そうか。何故長々と話すのかと疑問に思っていたが、最初からそいつらに情報を渡すだけだったか……! ――ふっ、まぁいいさ。そんな情報を渡したところで、初代に適うわけがない。圧倒的な実力を前に、精々頑張るんだな」


 シロの言動に一瞬だけ怒りを見せたかと思えば、再び笑みを浮かべるゼンジ。堂々と邪陰郷の勝利を宣言し、腕の一振りで初代四天王をリゥたちに嗾ける。

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