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二度目の四天王ライフ  作者: 羅弾浮我
第一作:〜異世界への突入、『聖陽郷』での波乱〜
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番外編②:ハッピーニューイヤー

リアルタイムで読んで頂いている方、あけましておめでとうございます!年越し早々本作品を読んでいただき、本当にありがとうございます!


こちらの話は、前の話よりも翼が暴れますので、もしも苦手だったらすみません!

それでももし宜しければ、是非読んでみてください!

 テーマパークを後にした七人は、人の少ない夜の電車に乗って羽依美町に向かう。


「翼、どーした? 眠いなら寝てても良いぞ? なんなら肩貸そっか?」


「ん、んん……いいの?」


「今日は疲れたもんな。夜も遊ぶし、今のうちに寝ときな」


「ぅん、ぁぃゃと……」


 眠そうにうとうとする翼を見て、龍翔は翼がいない方向に首を倒して肩を差し出す。すると余程眠かったのか、翼は肩に頭を置いた瞬間熟睡する。

 そんな翼を微笑ましげに見守りながら、龍翔はスマホを取り出す。


 《翼寝ちゃったねw》

 《俺も結構眠いかも……》

 《なら優輝も寝る?俺眠くないし、ちゃんと起こすよ?》

 《そーしよっかなー》


 そんな会話は、龍翔たちの手にするスマホのLINEで行われる会話だ。夜の電車で 翼が寝たということもあり、LINEで会話をする。

 こんな時のために、龍翔たちは予定を立てるときに作った七人のグループを残していた。

 流石に全員打つのが早く、直接的な会話に近い速度で話も進められる。

 そんな風にスマホを駆使しながら、目立った苦もなく羽依美町へ到着する。


「翼? 着いたよー。起きてー」


「んん……眠いぃ……」


「――仕方ねぇなぁ……ほら、おんぶしてってあげるから。乗って」


「ん……」


 駅に着いてもなお眠そうにしている翼を、龍翔は荷物ごと背負う。半分寝ている翼は自らの力で龍翔に掴まることは出来ず、ほぼ龍翔の力のみで翼を背負っている。


「龍翔くんの方が疲れそうだよね……コーヒーカップ三回乗って、ジェットコースターで舌噛んで、ゴーカート乗り回して、お化け屋敷で蒼空くん背負って、観覧車なんて翼と乗った後に晟と二回も乗って……」


「まぁ、それが後輩のためになるなら本望よ。蓮も、翼みたいになってもいいんだぜ?」


「んーん、大丈夫。優輝くんはドSで、蒼空くんはいじられキャラ。晟はツンデレで、翼が甘えん坊。俺くらいまともなのがいてもいいでしょー?」


「まーたしかに、一人くらいまともな後輩がいてもいいかもな。ゆーて蓮も天然あるけどね」


 まるで介護しているかのように、翼の面倒を見続けている龍翔。そんな龍翔に並ぶ蓮は 時々天然が紛れるものの、龍翔が慕う後輩の中では一番まともな存在。相手をしていて疲れると思うことは、ほかの後輩に比べればかなり少ない。

 そんな蓮が、翼を背負う龍翔を見て手を伸ばす。


「天然は仕方ないの。意識してるわけじゃないもん。まぁはい、荷物重いでしょ? 持ってあげる」


「んや。大丈夫よ、こんくらい平気。蓮も疲れてるだろうし、気にしなくていいよ」


「もう……そんなこと言って、明日になって疲れたーとか言われても困るの! 明日はみんな楽しみにしてるんだから! ほら!」


「――そっか、そーだな。ここで変な意地張って、明日迷惑かけても本末転倒だしな。分かった、ありがとな」


 意地を張って無理をしようとする龍翔に、蓮は頬を膨らませる。龍翔の無理を気にしてくれる蓮に、流石の龍翔も根負けする。蓮の優しさに甘えて、今回は翼の荷物だけ持ってもらうことにした。


「――んじゃ、俺はもう行くわ。龍翔も、こっち断わったんだからしっかり楽しめよ?」


「当たり前やろー。後輩を独占できる空間で、俺が楽しまないわけねーってーの」


「はいはい。じゃ、おまえらもまたなー! 良いお年をー」


「うん、ばいばーい! 良いお年をー」


 駅を出てからすぐの所で、優也は龍翔たちに手を振って別れる。そして優也を見送ったあと、龍翔たちは家へと向かう。


「ふー、やっと帰ってきたぁー! ほら翼、着いたよー」


「――ぃよっと! うん、知ってるー!お疲れ様ー!」


「――!? 翼、おまえ! 絶対に途中から起きてただろ!」


 駅から歩いてようやく家に着き、背中の上にいる翼を起こそうと背中を揺らす龍翔。そんな龍翔の背中からひょいっと跳ねて、翼は綺麗に着地。そのまま元気そうに親指を立てる。


「んっとねー、駅に着いた時はまだ眠かったけど、外に出た瞬間寒くて目ぇ覚めちゃったの」


「結構前からじゃねぇか! 起きたなら自分で歩けよ!」


「だってー。龍翔くんの背中気に入っちゃったし、楽だからいいやーって」


「楽だからいいやの前の一言で、強く言えるか言えないかが変わってくんの! ズリぃなぁ、背中が気に入ったとか言われたら強く言えるわけねーやーん! くっそー!」


 悪気なく笑う翼に、背負っていた時の背中を褒められた龍翔は何も言えない。そしてそれが天然で出た言葉ということに、納得のいかない龍翔は子供っぽく地団駄を踏む。


そんな二人を見て優輝たちも笑いながら、六人は龍翔の部屋へと向かう。


「さてとー、もう疲れたし、ちゃっちゃか風呂入っちゃうかー」


「あ、龍翔くん! それなら俺一緒に入りたい! この前入った時の大きさは覚えてるし、二人くらいなら大丈夫でしょ?」


「ん? まぁ多少狭くなるけど、二人くらいなら平気か? うん、多分。別にいいけど、俺は風呂洗うから最後になるよ?」


「そんくらい全然待つー!」


 ぴょんぴょんと跳ね回り、最後にはベッドにダイブする翼。まさかの誘いに龍翔も一瞬だけ驚いたが、翼の遠慮なさは今日でだいたい把握している。ーー正確には、把握出来ないほどだと把握している、といったところだろうか。

 そんなやりとりを見ていた優輝たちは、翼の発言にも 龍翔がそれを了承することにも驚く。


「龍翔くんと翼って、結構なハイペースで仲良くなってくよね……クリスマスで敬語じゃなくなって、今朝まで龍翔くんは翼のこと警戒してたのに、もう完全に打ち解けてるもんね」


「たしかに翼の押しにはビビるけど、これが素なんじゃ仕方ないよなー。断るわけにはいかないし、そもそも断る理由もないし。――あ、なんなら優輝も蒼空と入って、その次に晟と蓮で入っちゃえば? 時短にもなるし、背中でも流してあげたら仲良くなるんじゃない?」


「龍翔くん……翼に影響されすぎじゃない? 前からぶっ飛んだこと言うなぁとは思ってたけど、最近はもっとだよ?」


 既に、龍翔の家に着いてからの数分間で、翼と龍翔の発言だけで二回も驚かされている優輝は、急に変なことを言い出す龍翔にまたもや驚く。


「でも、修学旅行とかで一緒に風呂入ったりするっしょ? その延長線だと思えば、そんくらい別に変な事じゃなくない?」


「あー、たしかにそうかも……」


「そうなの!? え、そうなの!? 蒼空までどうした!?」


「でも、たしかに修学旅行とかじゃ普通に入るもんね。それにそこで時短できればその分遊べるし」


「晟も!? んでもって蓮もそれに頷くの!? え、今の状況で納得出来てないの俺だけ!?」


 龍翔の言葉を蒼空が最初に肯定し、それに続いて晟と蓮も首を縦に振る。そんな中で一人納得に苦しむ優輝は、あたふたと辺りを見回す。


「あれ、優輝ってもしかして友達とお風呂とか緊張する系? 修学旅行とかでも、バカな男子たちが桶で遊んでる中一人だけ端っこにいて一番に出るタイプ?」


「いや、修学旅行は流石に友達と話したりするけど……」


「したら大丈夫よー! 蒼空だって友達……え、友達? 友達、だよね……? あれ、違う?」


「ねぇ待って! なんでそこ自信なくすの!? え、友達だよね!? 龍翔くんも! 友達でしょ!?」


 友達という発言に自信をなくした龍翔に、蒼空は驚いたように声を大きくする。


「大丈夫だって、俺は友達って思ってるし、龍翔くんだってちゃんと思ってるでしょ?」


「ん? 俺は別に友達だーなんて思ってねーよ?」


「えぇ!? 思ってないの!? え、なんで!? 龍翔くん、蒼空のこと楽しそうにいじってるじゃん! え、あれ嘘なの!?」


「え……な、なんで……? 俺、龍翔くんになんかした……? え、龍翔くんは俺のこと、嫌い?」


 声を大きくする蒼空を落ち着けるように背中を摩り、優輝は龍翔にも確認を取る。しかし、龍翔は無表情にそれを否定。蒼空の目を見て、友達ではないとはっきり言ってしまう。

 そんな龍翔に優輝は目を丸くして、蒼空は涙ぐみながら全身を震わせて床に崩れ落ちる。


「あいや、別に蒼空が嫌いなわけじゃねーよ? いじるのは楽しいし、こうやって遊ぶのも嫌じゃない。むしろ大好き。今すぐにでも襲いたい。でも、蒼空は友達じゃない。――友達以上だから」


「――ぇ? あ、え?」


「いや、驚かせて心配させたならごめんな? でも、蒼空は友達じゃない。友達以上。ここにいる全員、友達以上。蒼空も、優輝も、晟も、翼も、蓮も、みんな友達以上。だってそうじゃないと、クラスのやつらと同等に扱わないといけなくなるだろ?」


 床に膝をつく蒼空に、龍翔はツッコミ難いボケを入れながらそっと近寄って頭を撫でる。

 龍翔の中では、蒼空たちのような後輩を友達とは言わない。その理由は単純で、クラスメイトという一般的な友達と一緒にしたくないからだ。


「な、なんだぁ……よかった、俺何かしたのかなって思って……知らない間に龍翔くんから嫌われてたのかなって思って……」


「いやいや、そんなこと気にすんなよー。あんだけいじってくる優輝も、あんだけグイグイ来る翼でさえも受け入れてんだぞ? それなのに今更……蒼空だけ嫌いになるなんてあるわけないっしょ」


「は、はは……そっか。そうだよね、ありがと」


 全身から力が抜けて、膝をついていた蒼空はさらに腰を落として正座する。そんな蒼空の肩をポンポンと叩いて、龍翔はニカッと明るく笑ってみせる。


「んで、優輝と蒼空は友達やろ? ならほら、風呂入っちゃおーぜ? なんなら風呂入って、友達以上になっちゃえよ」


「同性と一緒に風呂入って友達以上って結構ヤバくない!? てかここ龍翔くんの家でしょ!? そんな好き放題やらせるの!?」


「え、好き放題って……優輝はどこまで考えてるの? 俺はただ背中でも流してぐんと仲良くなっちゃえよって言いたかっただけなんだけど?」


「うえ!? いや別に、どこまでとか……俺もそこら辺までしか考えてないし……」


 龍翔が想像していたよりも踏み込んだ想像をしてしまい、優輝は途端に顔を赤らめる。そんな優輝を見て、龍翔や蒼空はシンプルに笑い、晟と蓮は苦笑い。そして一番いい反応をしているのは言うまでもない。

 ――翼だ。


「優輝くんと蒼空くんってそこまで行くの!? そっかー! だったら俺らも負けてらんないね、龍翔くん!」


「いや待て、俺らはそこまでいくなんて一言も言ってないぞ!?」


「そ、そうだよ! 俺も優輝も友達。友達以上になっても親友とかで止まるから!」


「あれ、そーなの? だったら俺らだけだよ! おんりーわんってやつだよ、龍翔くんっ!」


 一人で誤解して一人で盛り上がる翼に、優輝と蒼空は慌ててそれを否定。翼が間違えている部分を直ぐに訂正する。

 しかし、翼のメインはそこではない。あくまでも話のメインは龍翔にあり、龍翔の背中に飛び乗る。


「あ、あのな? 翼には悪いけど、俺も流石にそこまでいくつもりはないぞ?」


「え、そーなの!? ――何よ、あれだけ思わせぶりな態度をとっておいて、いざとなったらそうやって言って逃げるのね!? この意気地無し!」


「おいおい、″初めてのなんかを楽しみにしてたけどいざそのタイミングになって誤魔化された彼女″みたいなこと言い出すなよ……」


「だってー! 龍翔くん、全部受け止めてくれるって言ったじゃんー!」


 龍翔との『友達以上の行為』を期待していた翼は、龍翔の言葉に愕然とする。そして彼女のようなことを言い出し、右の頬だけを膨らませて視線を下げる。

 そんなふうに怒っていじける翼を可愛いと思いつつ、方目を瞑った龍翔は苦笑いをしながら頬を搔く。


「ま、まぁさ、今はまだーってだけだから。また後でもっと仲良くなってから誘ってよ。翼のことはずっと好きだから、ね?」


「むぅー……そしたら、約束だからね?」


「ああ、約束。だから、今日は機嫌直して?」


 口を尖らせて不貞腐れている翼に、龍翔は両手を合わせる。そんな龍翔の顔を覗き込むようにして目を合わせ、しっかりと約束を交わす。

 そうして翼は機嫌を直し、再び龍翔に寄り添う。


「まぁ、とりあえず風呂入っちゃおーよ。最初、晟と蓮のペアで行ってらっしゃいな。んでもって、二人が出たら直ぐに優輝と蒼空が行くこと」


「え、ペアで行くのは決まりなの?」


「なの」


「それって絶対?」


「絶対」


 質問の最後を切り取って、龍翔は無理矢理に押し切る。それ以降の質問にも龍翔は一歩も引かず、晟と蓮は龍翔と一緒に風呂場へ向かう。


「そこ置いてあるタオルは巻くなり食うなり好きにしな」


「食うって……素直に巻いていいよって言えばいいのに……」


「なんか言ったか?このままドア蹴り破っても身ぐるみ剥がしに行っても良いんだぞ?」


「何も言ってない! ごめんね! もう既に剥がされるものないからやめて!」


 二人に同行した龍翔は、タオルなどの用意をして脱衣所の外へと出る。一応体に巻くためのタオルを用意したが、何故かそれを伝えることに恥じらいを見せる龍翔。

 そんな龍翔に晟がボソッと呟くと、龍翔はドアを軽く蹴って晟を脅す。そんな龍翔に、来ないとわかっていても二人は近くにあったバスタオルを持って小さくなる。


「んじゃ、着替えバスタオルのとこに置いとくから。風呂出て左が晟で、右が蓮の着替えな」


「え、どっちがどっちのとかあるの?」


「せや。あるからしっかり着てこい。因みに晟たちの服は洗濯機にポイするから、着なかったら今夜は全裸な」


「いや、別に着るけどさ……って、もしかしてあんまり着たくないような服用意してるんじゃないよね!? 変なコスプレとかだと嫌だよ!?」


 何故かよく分からない確認をする龍翔に、晟の中でとてつもない不安が頭をよぎる。

 ちなみに、今回は荷物になるからという理由で着替えは持って来ず、龍翔のものを借りるということになっている。


「流石にコスプレは用意してねーって。至って普通の服だから、安心しろ。俺の持ってる服から、二人に合いそうな組み合わせで服を用意しただけ。あ、別に俺が着たやつとかじゃないから安心しな。買ったあとにしまいっぱなしだったやつとかだから」


「なんだそんなこと……分かった、ありがとー」


「どーいたしまして。んじゃ、ごゆっくりー」


 そう言って、龍翔は自分の部屋へと戻る。そして優輝たちと四人でゲームをしながら、晟たちが出るのを待つ。


 ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶


 そして、四人でゲームを続けること十数分。晟たちはかなり早い時間で入浴を終える。そしてドタドタと階段を駆け上がり、晟は勢いよくドアを開く。


「――ねぇ! 龍翔くん! なにこれ!?」


「おー、結構いいやん! てか、かなりいいなそれ……」


「良くないよ! なんでこのズボンこんなに短いの!パーカーの方が長いし! てかパーカーのサイズXXLだし! ぶかぶかじゃん! 何が俺に合う服なの!」


「いや、合ってるやん? 短いズボンがぶかぶかのパーカーで隠れて、下履いてないみたいなエロさよ。袖が出ないぶかぶかのパーカーとか、晟みたいに可愛い後輩にはピッタリやろ」


 入浴を、終えて風呂から戻った晟は、荒々しくドアを開けて部屋に入る。晟の服装は、太ももの半分ほどしかないズボンがXXLのパーカーで隠れている。

 そんな晟の服装に龍翔は親指を立て、満足の行ったような顔で微笑む。


「ピッタリじゃないし! それに今冬だよ!? このズボンじゃ寒いって!」


「わかったわかった。ほんの冗談やって。ーーほら、これが本当の着替え」


 服で遊ばれる自分と、完全に暖かい服を選ばれた蓮との待遇の差に、晟が龍翔へ飛びかかる。

 そんな晟をベッドの上にぽんと座らせ、龍翔はクローゼットから服を一セット取り出す。


「だからなにこれ! なんで着ぐるみみたいな服なの!」


「え、それ良くね? 怪獣着ぐるみってふつーに可愛いやん。晟なら似合うから着てみ? もしくはパーカーのままでもいいけど?」


「もう! パーカーのままじゃ寒いじゃん! なんでいっつも俺だけ……結構(あった)かいなぁ!」


 着ぐるみを着るのは恥ずかしいが、パーカーで隠れるほどのズボンでは確実に寒い。そう思った晟は、我慢して着ぐるみを着る。

 着てみると、その着ぐるみはかなり暖かい素材でできている。龍翔の微妙な配慮に、晟は地味に納得出来ない。


「ほら、フードも着ければ完璧。がおーってやってみて?」


「やるわけないでしょ! 龍翔くんだって言われてもやらないくせに! 龍翔くんがやったらやってあげるよ!」


「クワゥウォォォォォォォ」


「え、やるの!? しかもなんにも躊躇わないで結構本格的に!?」


 怪獣のような真似を要求する龍翔に、晟はプイっと横を向いて龍翔にその要求を突き返す。

 流石に怪獣の真似など、自身に可愛さを求めていない龍翔ならばやらないと思った晟。しかし龍翔は、全く可愛いという要素のない本格的な真似をしてドヤ顔を決める。実物が存在しないため、似ているのかどうかは分からないが。


「ほら、やったぞ? 晟もしっかりやりんしゃーい」


「うぅ……が、がお……お?」


「恥ずかしがってしっかり出来てない辺り、やっぱ可愛いなぁ……」


「う、うるさいなぁ! 龍翔くんみたいにはできないの!」


 簡単にやってのけた龍翔に対し、途中で自信をなくす晟。そんな晟を見て、龍翔はくしゃくしゃと晟の頭を撫で回す。


「あのー……そろそろ俺らも風呂行ってきていい?」


「あ、ごーめん! いいよ、タオル用意してくっからちょい待ちー」


 晟の相手をして、優輝たちを忘れてしまう龍翔。そんな龍翔の肩を叩き、龍翔と一緒に脱衣所へと向かう。


「服は優輝が左で蒼空が右な。タオルはそこら辺にあるの好きに使っていーから」


「あー、やっぱり服は選ばれてんのね……こわ」


「こわってなんだよ! 晟みたいに遊んでねーから平気! 優輝は黄色メインで蒼空は青メインにしただけ!」


「あ、そう? それなら大丈夫。ありがとー」


「へいへい、ごゆっくりー」


 晟の服を見た優輝たちは、龍翔が選んだ服を警戒する。そんな優輝たちに口を尖らせ、龍翔は思いっきり服を広げて見せる。その服に優輝たちは安心そうな顔をして、龍翔に手を振る。

 そんな優輝たちに龍翔も手を振り返し、そのまま脱衣所を後にする。


「――龍翔くん? 何してるの?」


 部屋に戻った後、いそいそと部屋の中を歩き回る龍翔に、翼が首を傾げる。


「ん? あぁ、クリスマスの時にさ、俺が風呂行ってる間に優輝が衣装ケースとか開けてたっしょ? それ思い出して、また変なもん引きずり出されないように鍵かけとこーと思ってさ」


「あー、こちょこちょの時に使ってたやつね。龍翔くん、あの時やばかったもんね」


「二度とあんな目に遭いたくねーかんな……」


 クリスマスの日、龍翔は色々な小道具を多用されて擽られた。その出来事を思い出すと、龍翔は今でもブルブルと身震いをする程だ。

 そんなことにならぬよう、龍翔は優輝が入浴をしている最中に鍵をかけて回る。


「その点、翼はいい仕事してくれたぜー」


「え、俺? 俺なんかした?」


「二人で風呂に入ろって言ったっしょ? 翼がそれ言ってくれたから、二人組で風呂に入るのを提案しやすくなったんよ。二人組で入れば一人の時より時間はかかるだろうし、鍵もかけやすいっしょ」


「あー! だから龍翔くんはあんなに拘ってたのね! 全然引かないからなんかあるのかなって思ってたけど、優輝くんのためだったんだ!」


 虱潰しに鍵をかける龍翔は、思わぬ形で助け舟を出していた翼の頭を優しく撫でる。

 頭を撫でられた翼は機嫌を良くして、龍翔と一緒に鍵をかけて回る。とはいえ、翼としてはこれもご褒美が目当てだ。しっかりと、対価は要求した。


「ハグくらいいつでもしてあげるのに……他の要求でもいいと思うけど?」


「ご褒美としてしてもらうハグがいいのー。あ、ついでに頭も撫でてね! いーこいーこ!」


「そんくらいでいいならいつでもしてあげるよー」


「やたー!ごっほーびー!ごっほーびー!」


 ご褒美という言葉に、何故か拘る翼。龍翔であればハグくらい自ら進んでやるが、翼はご褒美としてのハグを望む。ちゃっかり頭も撫でてもらうつもりでいるが、簡単なことなので龍翔も拒まない。

 そうして余裕を持って鍵をかけ終わり、余った時間で『わりばし』や『指スマ』といった簡単なゲームをする。そうして待つこと三十分。優輝たちが部屋に戻って来る。


「龍翔くん、この服いい! めっちゃ(あった)かいし、触り心地が気持ちいー!」


 そう言って、蒼空は袖で頬を擦りながら戻って来る。優輝も気に入ったように袖同士を擦ってみたりするが、蒼空ほどははしゃいでいない。

 内側にも外側にも綿のようなものが目立ち、強く擦り付けてもほとんど痛みがほどに柔らかい。


「そっかそっか、気に入って貰えたなら何よりだわ! ――んじゃ翼、俺らも行くか」


「やったー! りゅーしょーくんーとーおっふーろー!りゅーしょーくんーとーおっふーろー! ぶーーーーん!!」


「おーい、置いてくなーって……そんなにはしゃぐか? ――まぁ行ってくるわ、楽にしててなー」


「龍翔くん! 早くー!」


「分かったよ、今行くってー!」


 歌いながら手を広げて走る翼に、龍翔は笑いながら着いていく。部屋を出る時に優輝たちへ手を振り、翼に急かされて風呂場へと向かう。


「遅いよー、もー!」


「そんなにはしゃいでどーしたよ……そんなに風呂入りたかったの?」


「だって、龍翔くんがもっと仲良くなってからって言ったんでしょー! 早く仲良くなりたいもん! 善は急げ!」


「風呂だけ急いでも意味ないっしょ……急がば回れ、急いては事を仕損じる、果報は寝て待て。ちゃんと覚えときな」


 逸る気持ちを抑えきれず、一度の入浴でさえも急ぐ翼。どうしても急ぎたいとことわざを使ってドヤ顔する翼に、龍翔はそれを三倍にして返す。


「むぅ……龍翔くんのいじわる……」


「いじわるじゃないって! ごめんね? ほら、ハグしてあげるから許して?」


「分かったよー。仕方ないなぁ……でも、もうお風呂入ろ? ここ地味に寒いし」


「あぁ、それもそーやな。わりわり」


 クルっと言い丸められる翼は、またもや不貞腐れたように頬を膨らませてしまう。そんな翼を抱きしめて、龍翔は顔を横に傾ける。

 抱きしめられた翼もしっかりと龍翔を抱きしめて、その後にササッと服を脱ぎ始める。


「ほい終わり! 龍翔くん遅いよー!」


「タオルとか用意してたんだから仕方ないだろー……っておい!? え、タオル渡したよね? 巻かないの?」


「え、なんで? だって仲良くなるんでしょ? それなのにわざわざ隠してたら意味ないじゃん」


「あ、そういうもんなの? 普通は恥ずかしがると思うけど……」


 タオルを用意していて、まだ服を脱いでいない龍翔。逸る翼に急かされて龍翔が振り向くと、そこにはタオルを巻かずに堂々と立っている翼がいる。


「恥ずかしい? 別に恥ずかしくないもん。ほら見て、この肉体美!」


「ふにゃふにゃな筋肉でそもそも発育途中なくせに、なーに言ってんだよ。――ほら、こんなに直ぐ持ち上がるやん。大人しく先に入ってて」


「うひゃー! 服着てないとくすぐったー! ……っと、龍翔くんも早くしてよねー! ゴボゴボゴボ……」


「はいはーい」


 腹筋も割れていなければ腕もひょろひょろ。さらには中一としてでもまだまだ発達していない方の体で、ボディビルダーのようなポーズを決める翼。

 そんな翼を龍翔はひょいと持ち上げ、腕の中でキャッキャとはしゃぐ翼を浴槽まで運ぶ。そしてそのままゆっくりと湯船に浸からせると、口まで湯船に浸かる翼に手を振って一旦扉を閉める。


「はいはい、お待たせ。こっち翼のタオルだから、風呂上がる前にちゃんと体拭けよ?」


「ありがとー。おぉ、なんだかんだ言って龍翔くんも巻かないのね。じーっ」


「じーっじゃねーよ! ガン見すんな! 俺だけ巻いてたらどうせ不貞腐れるだろ? だからだよ、だーかーら。ったく……ってい!」


「痛てー! ――お? お、おぉー! 溢れるー! びしゃびしゃー!」


 ポイと投げられたタオルを受け取ると、同じようにタオルを巻かないで入ってきた龍翔をガン見する。そんな翼の額を軽く弾き、龍翔も湯船に浸かる。

 すると、体積が増えた浴槽からお湯が溢れ出す。


「こんなにお湯入れてねーし、壁もかなり濡れてるし、あいつら絶対にシャワーで遊んだだろ……ったく、元気なこったなぁ……」


「あれ、そーいえばさっき水鉄砲なかった? ほら、タオル置いてあったとこ!」


「翼もよく見てんなぁ……あったけど、やりたいの?」


「やりたーい! いいでしょ! 後で服着せるの手伝って上げるから!」


「はい!? いやいいよ! 着替えくらい自分でやるわ! 何もしなくても取ってきてあげるから、ちょっと待ってて」


 何故か着替えを手伝うと言う翼に、流石の龍翔も驚きを隠せない。普通に取ってくると、龍翔は軽く身体を拭いて脱衣所に置いてある水鉄砲を取りに行く。


「ほら、取ってきたよ。――ほい」


「やたー! ありがとー! 水鉄砲とか久しぶりだー!」


「そりゃ冬だしな……そもそも今回はお湯鉄砲だし……うがっ!?」


「隙ありー! もう一発くらえー!! うりゃうりゃー!」


 久々の水鉄砲にはしゃぐ翼を見ていた龍翔に、翼は不意打ちでお湯鉄砲を発射。そして間髪入れず、お湯をひたすらに連射。


「あ、もうなくなっちゃった……もう一回入れないと……うひゃ!?」


「その水鉄砲はお湯入れるのに時間かかるだろー! こっちならお湯なんて入れなくて済むんだぞー?」


「あ、それずるいー! 俺それ出来ないんだもんー!」


「翼だって不意打ちで打ってきただろー! あいこだあいこ!」


 水鉄砲の中のお湯がなくなり、再びお湯を入れようとする翼目掛けてお湯をかける龍翔。両手を握り、その中に貯めたお湯を圧縮させて外に飛ばす方法だ。

 お湯を貯めるのに時間のかからない方法を使い、お湯を用意する翼に容赦なくお湯をかける。


「ねー、それ教えてよー! 俺もできるようになりたいー!」


「んー? しょーがねーなー。じゃーこっち来てみ」


「うん!」


「んで俺と同じ方向いて……ちょっと手貸して。したら、右手と左手をこう重ねて、握る。んで手の中にお湯を貯めて、キュって閉じる。そしたら、こう!」


 手でお湯を飛ばすことが出来ない翼を呼び、龍翔と翼は同じ方向を向いて重なる。龍翔の足の間に翼が入り、後ろから抱くように腕を回して翼の手を握る。

 そして翼の手を組んで、実際にやってみせる。


「おー、すごい! こうして、貯めて、こう? うあっ!?」


「あーあー、後ろに隙間があるとこっちにも飛んでくるから、後ろはしっかり閉じる。んで、前だけ力を緩めて……握る!」


「うー、難しいなぁ……ね、もっかいやって」


「ん? こうやって手のひらを合わせて、膨らませるでしょ? それで水貯めて、後ろから出ないように、こう!」


 自分に向かっている手に力を入れ忘れ、自分の方にお湯を飛ばしてしまい、お湯は翼の顔を直撃。そんな翼の手をもう一度組んで、再び飛ばして見せる。


「――なんか、お風呂でこれだけ密着するとアレだね」


「何がアレだよ。そんなひょろひょろな細くてちっこい体じゃなんも始まんねーよ」


「むぅー……ひょろひょろでも小さくもじゃないもん! こっちだってちゃんと大きくなるし!」


「わ、わーったわーった! ごめんって! 分かったから、もうそれ以上はしようとすな!」


 また変な妄想を膨らませる翼を、龍翔が揶揄う。すると翼はバッと立ち上がり、ゴソゴソと動き始める。

 そんな翼を龍翔は慌てて抑え、翼を湯船に戻す。


「だって龍翔くんが揶揄ってくるんだもん……」


「だからそれはごめんねって。もう揶揄わないから、そろそろ体洗って出よ?」


「じゃー龍翔くん、体洗って?」


「そこまですんの!? ――ったく、ほんとに甘えん坊だなぁ……」


 両手を広げる翼に、龍翔は目を丸くする。しかし直ぐに軽く笑い、翼を椅子に座らせる。


「ほら、手伸ばして。――あい、反対」


「ひゃひゃ、くすぐったいー!」


「こーら、動かない。じっとしてて。――あい、背中おしまい。前は自分でやりな」


 擽ったさにぐにゃぐにゃと動く翼を抑え、腕と背中を洗い終えた龍翔。そして背中をポンと叩き、龍翔は浴槽に戻ろうとする。


「えー! 前も前も! もっと仲良くなりたいー!」


「少しは恥じらい持てって……ったく」


「だって恥ずかしくないんだもーん」


「普通は恥ずかしがるんだっつの……ほら、足やるから伸ばして」


 全く恥じらう気配もなく、翼は堂々と体を向ける。そんな翼に龍翔の方が恥ずかしくなって来るが、それで不貞腐れても困るので一応洗う。


「ひぃーっ! 足の裏くすぐったいーー! ひゃひゃひゃっ!」


「ちょっ、おい! バタつかせるなって!」


「だってくすぐったいんだもんー! ひぃーっ! くすぐったー!」


「はい終わり! もう向こう向いていいぞ」


 仕方なく足を洗っていると、擽ったさに勝てない翼は足をドタドタとバタつかせる。そんな翼の足を抑え、龍翔は一気に洗い終える。

 そして翼をクルっと回転させ、前や頭を洗ってからシャワーをかける。


「はい、終わり! これでいいだろ! 人のは時間かかるなぁ……」


「ありがとー! じゃ、俺も洗ってあげるねー!」


「ありがと。でも、背中だけな。前はもちろん、足もやるな。そして脇腹には絶対に触れるな」


「一番気にするとこ脇腹なんだ……まぁいいよー。龍翔くんに洗ってもらえれば満足だし、龍翔くんの体洗うのはもっと仲良くなってからにとっとくー」


 そう言うと龍翔は自分の腕や足を洗い、翼が龍翔の背中を洗う。

 万が一でも脇腹をつつけば、頬を引っ張られる可能性があるため、脇腹だけには細心の注意を払う。

 そうして龍翔の体も洗い終え、最後に二人でゆっくりと湯船に浸かってから風呂を出る。


 時間にして、実に小一時間といったところだ。


 ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶


「ふぅー、ただいまー。時間かかってごめんなー」


「めっちゃ長かったね。二人とも、一時間も何してたの?」


「水鉄砲で遊んだりー、手でやるのも教わってたのー! あ、あとは体洗ってもらってたー! あのね、龍翔くんの結構でk……もがっ! もがもがっ!」


 翼の頭を拭きながら、申し訳なさそうに部屋へ戻った龍翔。

 そんな龍翔に四人は首を傾げ、頭を拭いてもらっていた翼が元気よく答える。そして余計なことまで言いそうになった翼の口を、龍翔が咄嗟に抑えた。


「あ、ははは……で、でも体洗ってたって、背中流すとかだけでしょ? そんなに時間かかるの?」


「んや、全身だから……」


「全身!? え、背中だけ流すーとかじゃないの!? 全身!?」


「いや、俺も最初はそのつもりだったんよ? 腕と背中だけと思ってたんだけど、翼がどーしてもって言うんだもん……」


「だって腕と背中だけじゃ普通じゃんー! できるだけ早く仲良くなりたかったんだもーん」


 翼の体を洗ってもらったという発言に、まさか全身だとは思っていなかった優輝たちは、声を上げて驚く。

 驚かれる龍翔は少し恥ずかしそうにしているが、洗ってもらった本人である翼は余裕綽々といった様子だ。


「り、龍翔くんたち、凄いね……まだクリスマスから一週間なのに……」


「いや、俺だってビクるぜ? でも翼がなー。可愛いからいっかーとも思っちゃうし」


「そこでいいって思っちゃうんだ!? やっぱ、龍翔くんも翼も似てるよね。二人とも仲良くて、楽しそーだし」


「そうか? 俺的にはやりすぎなような気もしてんだけど、まぁこのメンツならいっか」


 元々、今集まっているメンバーの中で気を使わなければ行けないような存在はいない。関わった短いが、同級生以上に信頼できるメンバーだ。

 なんだかんだ言って、優輝たちも龍翔が頼れる存在であることは知っているし、龍翔も後輩たちを頼りにしている。このメンバーは、ただの先輩後輩といったメンバーではない。


「ま、そーゆー事だから、今日は夜更かししないで、年越しのジャンプだけして寝よっか。明日もあるし」


「うん! 賛成! 今日は龍翔くんと寝るし、早く寝るー!」


「でもまぁ、あと三十分くらい余裕あるから。なんかゲームしてよーぜ?」


「いいよー!」


 そう言って、龍翔たちは年越しの数分前までゲームをする。


 ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶


「残り一分!!」


 龍翔たちはそんな掛け声をかけて、年越しのジャンプに備えている。年越しをした瞬間に全員の顔が見れるようにと、龍翔たちは円になって手を繋ぐ。

 そしてしっかりと電波時計を確認して、高鳴る胸の鼓動を必死に抑えている。


「きたきたきた!」


「ごー!」

「よん!」

「さん!」

「にー!」

「いち!」


「ゼロー!!」


 年越しの五秒前からカウトダウンを始め、日付が変わった瞬間ーー正確には、日付が変わる瞬間から変わった瞬間にかけて、六人は一斉に跳ぶ。


「あけおめー!!」


「ことよろー!!」


 待ちに待った年越しの瞬間を、龍翔たち六人ははしゃぎにはしゃいで迎える。


「新しい年の始まりーーー! いえーい!!」


「やっふぅーーーーー!!」


 龍翔の部屋で全員がはしゃぎ、ドタバタと暴れ回る。龍翔は晟に抱きついてベッドへ転がり、そんな龍翔を追って翼もダイブ。優輝と蒼空は二人で蓮を持ち上げ、三人でグルグルと回っている。


「あー、このメンツで年越しっていいなー! 思う存分はしゃげるし、思う存分はしゃいでもらえるし!」


「クラスの人とかだと少し気使っちゃうもんねー」


「龍翔くんの部屋じゃなきゃこんなに暴れ回れないしねー」


 クラスのメンバーでは、本当にはしゃいでいいのかが分からずかなり遠慮してしまう。そして、自分の家はもちろん友人の家でもここまではしゃぐことはできない。

 そんな意味では、龍翔の部屋でこのメンバーというのは、龍翔はもちろん優輝や晟たちにとっても最高な環境だ。

 そんな環境で年越しを迎え、龍翔たちは今年度一番に大はしゃぎ。恥じらいや遠慮を忘れ、思い切り抱きついて思い切り手を叩いて思い切り笑って思い切り楽しむ。


「はぁー、最っ高……! こんな年越し一回もなかったし、やっぱあれだな。ハロウィンの日に晟が寝坊してくれたおかげだな」


「確かに、あの日が楽しかったからまた遊ぼーねってなったんだもんね。寝坊万歳だ!」


「も、もう! それって絶対に褒めてないでしょ! 恥ずかしいんだからほじくり返すのやめてよっ!」


 床に手足を放って思い切り寝転がり、龍翔がハロウィンの日を思い出す。そんな龍翔に便乗して優輝が晟の肩を叩くと、大会の日に寝坊したことをほじくり返される晟は顔を赤くして頬をふくらませる。


「でもまぁ、晟の寝坊がキッカケってのは本当だから。そこには割と感謝してるよ?」


「それねー。晟が普通に来てたらハロウィンなんて何もなかったし、本当に良かったよ」


「そ、そう? なんか、普通に感謝されるのもむず痒いね。でも、無駄にならなくて良かった……の、かな?」


 寝坊をからかわれて顔を赤くしていた晟も、素直に感謝されるとそれはそれで恥ずかしい。結局顔を赤くしてしまう晟に、龍翔たちも声を揃えて笑う。


「や、やっぱりこれ以上はもういいよ! もう寝よ!? また明日! ほら、早く布団敷くよ!」


「なんで晟が仕切るんだぁ……? って、こういうときは仕事早いんだな……」


「いいから、龍翔くんも手伝うの!」


「はいはーい。ほら、優輝たちもやるぞー」


 恥ずかしさを紛らわせるために、かなりのハイペースで動く晟。そんな晟に珍しく龍翔が押され、全員で渋々布団を敷く。


「よーし、終わったー!」


「あい、お疲れさん。したら明日もあるし、もう寝るか」


「そだね! んじゃ、俺ここでー」


「俺は龍翔くんと同じベッドー!! 早く早く! 早く寝るよー!」


「あいあい。よし、電気消すぞー?」


「あ、ちょっと待って!」


「ん? どした?」


 それぞれが今日の寝る場所を決めて、翼はベッドに飛び込んでパンパンとベッドを叩いて龍翔を呼ぶ。そんな翼に返事をして、ベッドから電気を消そうとした龍翔。

 しかし、そんな龍翔を優輝が止める。そしてそんな優輝に視線が集まり、優輝はゆっくりと体を起こす。


「――今年も、その先も、龍翔くんが高校行っても、俺たちってずっと一緒?」


 優輝の言葉に、龍翔を含めた全員が目を丸くする。

 たしかにそれは、ここにいる誰もが思っていた疑問であり、不安だった。しかしそれが、優輝の口から出るとは思っていなかったのだ。


「当たり前だろ? 優輝がそんなこと気にするなんて珍しいな。そんなに心配だったか?」


「う……だって、このメンバーが一番楽しいから」


「まぁたしかに、俺もこのメンツが一番好きやわ。だから、俺はずっと一緒にいたいと思うぜ?」


 新年早々、突然素直になった優輝。そんな優輝に驚きながらも、龍翔は優輝の言葉を肯定する。

 そしてそれは、この中にいる全員が肯定できる内容だ。


「俺も、一緒にいたいかな。優輝とは同学年だけど、先輩も後輩も、龍翔くんとか晟たちみたいに好きになれる人いないし」


「俺もー! 龍翔くんのこと大好きだし、みんなと遊んでるのも楽しい! 龍翔くんも楽しそーだし、このメンバー好き!」


「俺も、このメンバーが一番だと思う。あんまり気使わなくていいし、龍翔くん以上にしりとり続く人いないし」


 優輝と龍翔に続き、蒼空に翼、そして蓮もがそれを肯定する。

 そして残るは最後の一人。全員がその方向に視線を向け、たった一人の少年視線を浴びる。


「晟はどーよ? このメンツ、好き?」


「――おん! たしかに気使わなくていいし、皆が笑い合っててめっちゃいいと思う! クラスにいても、これだけ仲良いグループないもん」


 最後の一人、晟の肯定を得て、この場にいる全員の思いは一つになる。


「じゃあ決まりやな! 今年も、これからも、このメンバーはずっとってことで!」


「うん!」


 全員の意見が一致したところで、パチンと手を叩く龍翔。そんな龍翔の宣言に、優輝たちの声が重なる。


 ――そんな約束を後に、龍翔たちの楽しい年越しが幕を閉じる。





ᎻᎪᎮᎮᎽ ꫛᎬᎳ ᎩᎬᎪᎡ

以上、大晦日年越し企画でした!

本当は正月での初詣などの短編も出したかったのですが、時間が厳しいので今回は年越しまでということで。

少しでも楽しんで頂けていたら幸いです!

今年も本作品を、よろしくお願いします!

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