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二度目の四天王ライフ  作者: 羅弾浮我
第一作:〜異世界への突入、『聖陽郷』での波乱〜
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35話:完遂のためには尽力を

 広く――ただただ広く、広大に、膨大に、莫大に広くなった、邪陰郷第6支部の4層。

 迷い森の上陸班としてここに訪れたリゥたちは、4層の待人――アリハルと対峙していた。


「このだだっ広い場所で、おまえが満足するまで生きればいいンだろ?」


「うん、そうだネ。お兄さんたちが生き残れば、あとは何してもいいよ」


「何してもいい、か。その言葉、撤回すンじゃねぇぞ?」


 4層の中央で、一番前に立ってアリハルと対峙しているのは、他でもないゴウだ。この迷い森上陸班での先頭は、常にゴウかリゥで決まっている。その理由は、何かあった時に一瞬で対応できるためであり、ゲンが前に出ないのは、状況把握がリゥやゴウより優れているためだ。

 それが分かっていないとしても、リゥたちを見て全く動じないアリハルに、敵ながら感心してしまう。が、それは手を抜く理由とはならない。

 相手が邪陰郷に尽くすものであれば、相手が行く手を阻むものであれば、相手に戦闘意思があるのであれば。リゥたちは、全力でそれの相手をする。


「お兄さんたちも、途中で死んじゃったりしないでネ。つまんなくなるから」


「当たり前だ。早く始めやがれ」


「はいはーい。じゃ、ワタシは高見の見物人ってことで。先ずは第一段階、始めー!」


「は? おいおまえ、逃げんじゃ……あァ!?」


 ゲームスタートの合図を出した瞬間、硝子のようなキューブがアリハルを覆い、そのままキューブごと上昇。それを追おうと、ゴウは地面を踏みしめて跳躍。瞬間、ゴウの体は何かに引っ張られる。


「ネス、おまえか!? なンのつもりだ!」


 見えない力に引っ張られ、地面に着地するゴウ。そんなゴウの目前には、ゴウを見ているネスの姿がある。が、ネスに向かって怒鳴るゴウに、リゥが割って入る。


「ちゃうちゃう、俺が指示出した……の! 見ろ、ゲームはもう始まった。今は全員でなんとか対処してる。俺らも早く対処に回るぞ」


「こ、れは、そうか……ネス、悪かった。――これがゲームか……おもしれぇ、やってやンよォ!」


 リゥから現状を伝えられ、視野が狭くなっていたゴウは漸く状況を把握。

 ゴウたちの周りでは、矢や槍といった飛び道具が一斉に降り掛かっていて、十二人衆や特戦隊で対処をしている状態だ。


 状況を理解した直後、ゴウは直ぐに立ち上がる。そして指をポキポキと鳴らし、咆哮と同時に物凄い勢いで地面を蹴る。


「ちんたらやってんな! とっとと一纏めにぶっ潰すぞ! ――炎幕(フレイムカーテン)!」


 地面を蹴ったゴウは、一気に上昇。一定の高さで体を止め、空中で体を回転させながら全方位に右手を振り翳す。すると手の軌道に合わせ、炎の弾幕が現出。

 降りかかる武器の全てが、ゴウの放った炎によって焼き焦がされる。


「おー! あれを一瞬で消しちゃうなんて、やっぱり凄いネ! でも、まだまだこっちも序の口。次、行っちゃってー!」


「はン! 何度やっても同じこと! 在庫が切れるまで焼き焦がしてやンよ!」


「ゴウ! 飛んでくるものだけ搔き消しても意味がない! それを放っている元を叩くんだ!」


 再び第二段階を準備するアリハルたちに、ゴウもまた想術の準備をする。そして右手を翳そうとした瞬間、下にいるゲンが壁を指して叫ぶ。

 しかしそこで、はいわかりました。といかないのが難しいところだ。なぜなら――、


「バカ言うな! ここは俺が別荘に貰うンだ! ぶっ壊してたまるか!」


「おい、待ちやがれ! なんでお前が貰うんだよ! 普通俺だろ!」


「いやお前の普通とか知るか! これは俺が貰う! お前にはバカでけぇ家があるンだからいいだろ!」


「お前こそ何十個も別荘あるだろうが!」


「それはそれ! これはこれだ!」


「したら俺も、それはそれ! これはこれだ!」


「ンだとぉ!?」


「やるかぁ!?」


 邪陰郷そっちのけで口論を続けるリゥとゴウ。そんな二人に、アキラや十二人衆たち、そして邪陰郷であるアリハルたちや、壁の裏にいるであろう作業員たちも、その場にいる全員が唖然としている。


「だいたい、おまえは昔からそうだ! 俺が目ぇ付けたもん全部に手ぇ出しやがって!」


「はぁ!? おまえが目ぇ付けてたガキたちには手ぇ出してねぇわ!」


「ガキじゃねぇ! ショタだ! そこんじょそこらのガキと一緒にすんな!」


「知るか! 俺はお前の性癖に構ってる暇はねぇンだよ!」


「――ね、ねぇ! ワタシ、待ってるんだけど! 遊ぶって言ったよネ!? ワタシ、さっきから第二段階始めようと待ってるんだけど!」


 一向に終わる気配のない二人の口論へ、最初に口を挟んだのは4層の待人、アリハルだ。頬を膨らませてぷんすかと怒るアリハルは、若干涙ぐんでるかのようにも思える。


「そうか。だが、無駄なことだったな」


「きゃっ、いつの間に!?」


 二人に向かって怒るアリハルの後ろから声をかける人物。落ち着いた、しかし物凄い鬼気を放つその声がした方へ、アリハルは咄嗟に振り向く。そこには、赤茶色の短髪を逆立てた、体格のいい男――ゲンが、静かに佇んでいる。

 そんなゲンに驚くアリハルに、さっきまで言い合いをしていたリゥとゴウは同時にガッツポーズをする。


「よし、ナイスゥ!」


「悪いな、幼女」


「――きゃっ!?」


 驚くアリハルに、ゲンは一言だけ呟き、そのまま腕を伸ばす。そしてアリハルを囲うキューブに触れた瞬間、キューブは忽ちに壊れ落ち、原形を失ったキューブからアリハルが落ちる。


「な、なんであなたはここに……? というか、なんでキューブは壊れたの!?」


「リゥ様とゴウ様が言い争いをして皆様の気を引いている最中、私がキューブを構成しているであろう元を断ちました。そしてキューブは硝子と同じほどの強度になり、ゲン様にそれを割って頂きました」


「つまり、おまえはまんまとこっちの罠に引っかかったってわけだよ。俺とゴウの芝居に、シロの迅速な行動に、そしてゲンの隠密行動に。誰かが気を引いている最中に、他のところから別の攻撃を入れる。有名な戦術だぜ?」


 突然の出来事に、アリハルは未だ理解が追いついていない。そんなアリハルの傍に、部屋の端から歩いてきたシロが説明をしながら到着。リゥとゴウも降りてきて、アリハルは四天王三人と天使一人に囲まれた。


「因みに、キューブに篭ったおまえをゴウが追ったところから作戦は始まっていたぞ」


「俺がおまえを追いかけたのは、キューブと繋がっていそうなものを探すためだ」


「そしてそれを見つけた直後、合図を受けた俺はネスに頼んでゴウを引っ張ってもらった。空中ではとっさの行動が難しいからな」


「その後のことは、先程話した通りですね」


 四人からの説明を受けるアリハルは、悔しさに体を震わせる。そして震えた体で声を震わせ、その声は震えた笑い声に変わり、アリハルはバッと顔を上げる。


「みんな、今だよ!」


「な、なんだ!? おい、全員警戒しろ!」


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」


 突然に顔を上げたアリハルは、今までで一番大きな声を上げる。そんなアリハルの声にゲンは警戒を呼びかけ、そこにいる全員が戦闘態勢に入る。

 ――瞬間、先程まで発射台となっていた壁が一気に崩れ落ち、中から大勢の人間が現れる。


「なっ!? ……んちゃって。――レツ! フウ!」


「あいあいさぁ! フウ、行くぞ!」


「うん!」


「「炎風(フレイムウィンド)――ッ!」」


 一瞬、驚いたような様子を見せていたリゥの表情が変わり、舌を出して幼稚な笑みを浮かべる。そして直後に首を一振り。一瞬で真顔に戻ったリゥは、そのままレツとフウを呼ぶ。

 そんなリゥの呼びかけにレツが反応し、レツの呼びかけを経由してフウが合わせる。

 瞬間、炎を纏った突風が、リゥたちを中心に渦を巻く。襲いかかろうとした集団を空中で捕らえ、一網打尽にする。


「第一段階はゴウが一瞬で消し去って、第二段階は行うのを断念。第三段階は誰一人辿り着く間もなく終了……悪ぃな、ロリっ子。俺らの中に、ロリコンって性癖の持ち主いねーんだわ」


「俺らが油断してる隙を衝く作戦だったンだろーが、生憎今回は俺らもガチなンだ。何故かゼンジさンはアッキーラに対して厳しいし、アッキーラが不要なンて言われでもしたらリゥを掲げて戦争だかンな」


「ゼンジ様は、アキラさんを妙に忌避していますからね。私たちが原因で失敗したとしても、アキラさんを責める可能性は高いです。そうさせない為にも、私たちは不要な手加減はしません」


 アキラに対して、不必要なまでの悪態をとったゼンジ。その様子を思い返し、全員の決意は強く固まっている。

 現状、アキラを不要と割り切っている者はゼンジ以外にいない。リゥはもちろん、他の四天王や天使、十二人衆たちも、アキラのことを必要としている。

 よって、アキラの評価がかかったこの戦いで手を抜くものは、誰一人としていない。


「そう……それは、面白そうネ。お兄さんたち、全然わかってないわ。ワタシだって、ここの幹部だもの。既に勝った気でいるのなら、それは間違いだ……わ!」


「ぐ……っ! クソがっ!」


「ふっ、やっぱり、お兄さんたちは強いのネ。――でも、ワタシだって強いからネ」


 突然、アリハルは素早く立ち上がり、そのまま目の前にいるゴウへと飛びかかる。そんなアリハルを両腕で受け止め、ゴウは強引に跳ね返す。

 宙に舞ったアリハルは靱やかに着地し、清々しく笑ってみせる。


「お兄さんたちは、ワタシだけで十分。――さぁ、最終段階よ! ワタシと戦って、万が一勝つことが出来たのなら……」


「ゲン、頼んだ」


 両手を広げて高らかに喋るアリハル。そんなアリハルの言葉の途中で、リゥはゲンの肩を叩く。

 そしてゲンは「ああ」と短く返事をして、アリハルとの距離を一瞬にして詰める。


「ちょ、ちょっとなに!? まだワタシ、話してる途中だったじゃない!」


「最初にゴウが言ったはずだ。俺たちは、おまえと遊んでいる暇はない」


「第二特戦隊と、特援隊のリボンとルリはゲンの援護だ。――ゲン、頼んだぞ! そいつ片付けたら、直ぐに俺らを追ってくれ!」


「ああ、直ぐにでも後を追う。おまえらも、気をつけてな」


 真正面から跳んでくるゲンに、アリハルは文句を言いながら後退。ゲンの圧倒的な力に押され、リゥたちが向かおうとする方向とは反対側の、4層の入口へと下がる。

 第二特戦隊と、特援隊のリボンとルリにゲンの援護を任せ、リゥたちは部屋の奥、3層へと続く階段に向かう。


「あ、ちょっと待って! ワタシの許可なく上に行くなんて、許せないわ! ちょっと待っ……」


「おまえの相手は俺だ。リゥたちを追いたかったら、まずは俺を倒してからにするんだな」


「――なるほど、そういうことネ。いいわ。そういうことなら、せいぜい楽しませてよネ、おじさん!」


 3層に向かうリゥたちを追おうとするアリハルだが、ゲンがそれを引き止める。そんなゲンにニカッと笑い、アリハルはゲンに向き直る。

 そしてゲンをおじさん扱いして、数歩分後退。戦闘態勢をとり、再びゲンの方へと近づく。


 ここに、ゲンとアリハルの戦いが始まる。

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