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二度目の四天王ライフ  作者: 羅弾浮我
第一作:〜異世界への突入、『聖陽郷』での波乱〜
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番外編④:メリークリスマス

 龍翔を目掛けて全員が襲いかかり、龍翔はベッドへと倒れ込む。


「だぁぁぁぁぁっ」


 一気に襲いかかられ、条件反射で手足をばたつかせてしまう龍翔。そんな龍翔を見て、優輝は直ぐに体の動きを封じようとする。

 別に抗うつもりはなかったが、やはり条件反射はある。我慢しきることが出来なかったが故に、龍翔は強制的に手足を押さえ付けられる。


「龍翔くんってどこが弱いの? 首? 足? 脇腹とか?」


「ちょっ、そこはダメ! マジでそこよわっ、ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


「脇腹かー。上と下どっち? こっち? それともグリグリする方が効く?」


「脇腹はマジでやめっ、全部、全部ダメなんやって! うぁっ、ん、んんんんっ!! いぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!! ――はっ、はっ、はぁ……」


 一箇所ずつ確認されながら擽られ、ついに狙いは脇腹へと到達。基本的には、どこの部分でも擽りに弱い龍翔。首や足裏はもちろん、太ももや手のひらも弱い。が、その中でも脇腹だけは本気で弱いのだ。

 そんな脇腹を集中砲火され、龍翔はベッドから転がって逃げてしまう。


「あーあ、逃げちゃったぁ……逃げなかったら使わないでおいてあげよーと思ってたのに。逃げちゃうんじゃ仕方ないよねー……」


「ちょ、なんでそれ持ってんの!? え、もしかして――ぅぁ、まさか、こっから……?」


「いやー、この前にチラッと見えてさー。まだあるのかなーって思って、さっき確認して残ってたから持っておいたの」


 ベッドから逃げた龍翔を見ながら笑っている優輝の手には、手錠のようなものが握られている。

 それを見た龍翔は、一瞬だけ戸惑ったあと、直ぐにベッドの下を確認。ベッドにかかっているシーツをどけると、ベッドの下からプラスチックの衣装ケースが複数個出てくる。

 そしてその中の白いケースを開けると、目を見開きながら上にいる優輝を見る。

 龍翔は、部屋の中に飾っておけないものや余ったものなどをまとめてベッドにしまってある。そしてその中には、コレクションボードに入り切らないフィギュアや、本棚に置ききらない本。そして、クローゼットに飾りきれない衣装がしまってある。

 その中でも、白い衣装ケースの中には小道具が色々入っていて、ハロウィンの時もそこから小道具を少し出していた。


「ちょっと待ってね。それはダメだと思うんだ、さすがに……それ、リアリティと強度が高くて、結構な値段したんだけど……」


「強度があるなら大丈夫だね。丁度四つあったし」


 そう言って、残る三つも出してくる優輝。

 優輝の持っているものは間違いなく手錠で、しっかりとした鍵付き。鍵なしでは開かないうえに、強度的に素手で壊すのは不可能に近い。

 そんな物だから、龍翔は調子に乗って二セット買ってしまった。結局飾ることもなく、たった今それに首を絞められることになっている。


「ほら、龍翔くん。早く仰向けで寝転がって」


「うぅ……本当にやるの? やっぱりやめよう?」


「だーめ。しっかり最後まで付き合ってもらいますー」


 手錠の片方をベッドの柵に取り付け、布団を叩いて龍翔を呼ぶ。

 そんな優輝に龍翔はかなり警戒して、なかなかベッドに近付こうとしない。


「自分で来ないなら、もっと酷くなるよ? ほら、こういうロープもあったし、羽とか、筆とか、ツボを押すやつかな? なんかそういうのとか」


「何個取ってんの……まるでドラえもんだぞ……?」


「はいはい、そーいうこと言ってないで早く来て。ロープ使うよ?」


「ううう……加減してよ……?」


 本気でロープの準備をする優輝に、龍翔は警戒しながら少しずつ近付く。


「うう……両手両足を拘束されるとか……これから牛に引っ張られて八つ裂きにされる気分だなぁ……」


「はいはい、そんな痛くて怖いことしないし、なんなら龍翔くんもちょっと楽しみでしょ?」


「うるっさいっ!! やるなら早くやれ!」


 四肢を広げてベッドに仰向けで寝ながら呟く龍翔に、上から優輝が煽る。ここで逃げたり抵抗したりすればどうなるか分からないので、動かないように我慢している。

 決して、逃げたくないわけではない。逃げられないのだと、逃げてはいけないのだと、龍翔は自分にそう言い聞かせる。


「はいはーい。しっかりとエムの自覚を再認識しつつある龍翔くんの頼みだし、やっちゃおっかー」


「まずは俺からやる! 右足がっちゃーん!」


「んじゃ次は俺! 左手がっちゃーん!」


「なんで片方ずつなんだよっ! それに無駄に焦らすな! やるなら一思いにやりやがれっ!!」


 手足を放り出す龍翔を見て、優輝は手をパンパンと叩いて合図を出す。そしてその合図を見て、訳の分からない順番で一つずつ嵌める秀と大地。そんな悪意のある嵌め方に痺れを切らした龍翔は、再び口を開いてしまった。


「龍翔くんに文句言う権利はないのー。受刑者は……いや、龍翔くんにとってはご褒美になるのか。そしたら貰う側はわがまま言っちゃいけませーん」


「別にご褒美になんて……うっ、やめっ! 分かった、もう言わない! 何も言わないからっ!」


 優輝の言葉に反射的に口答えしてしまい、龍翔は脇腹に指を刺される。体がビクついてベッドの上で軽く跳ね、手に嵌められた手錠がジャラジャラと音を立てる。


「はい、ありがとね。そしたら続きやるよー。翼、次嵌める? なんか今日静かじゃない?」


「え……だって、天野先輩とあんまり話したことないから……その、良いのかなって……」


「あーあ、龍翔くんが全然話してあげないから翼が変な心配しちゃったー。どーするの、龍翔くん?」


「え、俺の所為!? あ、いや、うん。そう、俺の所為。分かったから、分かってるから、その手はまだ俺にかけないでください!」


 またもや反論しようとしてしまう龍翔の脇腹に、優輝がゆっくりと手を翳す。

 そんな優輝に右手で待ったをかけ、龍翔は必死に命乞いをする。必死に訴えた後に優輝の手が無事に退けられ、安堵の息を漏らした龍翔。

 そして小さくなっている翼の方を見て、龍翔はそっと手招きする。


「まぁ、変に気使っちゃうのは俺があんまり話してあげなかった所為だよな。ごめんね? 今日は後輩が多くて、手が行き届いてないからさ。でも安心してくれてえーよ。卓球部に、嫌いな後輩なんていないから。全然タメで大丈夫だし、先輩とか付けなくていい。だからさ。――あい。今は片手しか空いてないけど、ハグしよ? 翼とは一回もやったことなかったっしょ」


「あ、え、でも……天野先輩は……」


「ん? 別になんも心配しなくていいよ。あー、もしかしてハグが嫌? それなら無理はしなくていいけど」


「あ、いや! そんなことは……」


「そうか? んじゃほら、はい!」


「ぁ……」


 手招きをして少しずつ近付いて来る翼の頭を優しく撫で、柔らかな笑みを浮かべる。かける言葉や行動、それだけを見れば先輩の鑑だ。

 但し、肝心の龍翔の状態が悪い。右足と左手を拘束され、中途半端な形で翼の頭を抱く。


「ほら、これでもう平気! 一回でもハグすれば、先輩後輩以上の関係やで!」


「あ、ありがとうございます……!」


「敬語なんて使わなくていいけど……まぁそれも可愛いからいっか。蒼空と晟の次は翼にしようかな?」


「その前に龍翔くんがいじられるの、忘れないでね?」


 何となく良い感じに話を締めようとする龍翔だが、優輝はそれを許さない。意地でもいじり倒すつもりでいる優輝は、龍翔のペースを絶対に作らせないのだ。


「ぐっ、ダメかぁー……でもまぁ、今回ので翼も何となくは楽になるだろうし、それなら仕方ないな。一肌脱ぐか」


「てことで龍翔くんの覚悟も決まったみたいだから、右手でも左足でも自分の好きな方でいいよ?」


「あ……うん! じゃあさっきハグしてもらったから、こっちの右手にしよーかな」


「あ、ハグしてくれたからそっちは少しでも長く自由にみたいな感じじゃないんだ!?」


 まだ慣れていない後輩の為になるならと、龍翔は本気で覚悟を決める。そんな龍翔に翼も少しだけ心を開き、自分の手で龍翔の右手に手錠をかける。

 しかし、翼の言葉と行動に少し違和感を感じて、龍翔は若干驚いた様子。すると優輝が首を傾げ、龍翔の方を向く。


「あれ、龍翔くん知らなかったの? 翼は結構なサイコパスだよ? 翼相手にあんなこと言えるなんて凄いなーって思ったけど、知らなかっただけなんだね。ご愁傷様……」


「え、なにそれ……? なんかちょっと、怖いよ? 冗談でしょ? だってほら、こんなに可愛い……って、何してるの?」


「んー? こうやって拘束されると、指を食べられても何も出来ないんだよなーって。そう考えたら、なんか美味しそうに見えてきたなーって」


「ダメじゃん! これ完璧にサイコパスやん! 怖い怖い! 優輝!晟!蒼空! 助けて! 食われるってば!」


 優輝にサイコパス扱いをされる翼を庇おうとして、龍翔は翼の方を向く。龍翔の目に映る翼はずっと龍翔の右手を握っていて、さらにじーっと見つめている。

 そして何をしているのかと聞けば、完全なサイコパス発言が返って来たうえに、その小さな口を開けて、龍翔の指を食べようとしている。


「翼のことが可愛いんでしょ? それならいいんじゃない? 翼と一緒にたくさん遊びなよ。大丈夫、まだ怪我させたことはそんなにないから」


「なんか晟が冷たいよぉ……? てか、そんなにってなに!? 何回かあるの!?」


「んー、五~六回くらい?」


「結構じゃん! やだよ! ねぇお願い!助けて! ちょ、ほら! 口がすぐそこまで来てるからっ! お願い!!」


 優輝と晟、そして蒼空に助けを求めたが、優輝は龍翔の上でそれをじーっと見つめているだけ。蒼空はまだ何かを出そうと衣装ケースを漁っている。そして唯一の晟にも、冷たくされてしまう。

 晟に冷たくされたうえに、翼のサイコパスでこれまでに五~六回も怪我をさせているという事実を知り、龍翔は二重の恐怖を味わう。


「分かった、翼! 俺が拘束されてる時はダメだ! 後でじっくり付き合ってあげるから、今は一旦やめとこう! 今度暇な時にでも、またここに来ればいいよ! 二人きりでいてあげるから、今はやめよう!」


「――ん? じゃぁ約束ね? 今は我慢してあげるけど、後で絶対に食べる。天野先輩……もー龍翔くんでいい? 龍翔くんのこと、食べていいよね?」


「呼び方はなんでもいいし、なんか食べるって色んな意味があるから怖いけど、俺が死なないなら取り敢えずいいよ、もう! もうそれでいい!」


 取り敢えずは今の恐怖から抜けることが最優先と考え、してはいけなかったような約束までもを交わしてしまう。それでも、指がなくなるよりはマシだ。

 舐められるだけかもしれないが、最悪の場合を考えれば仕方がない。その時はその時で考え、危なくなれば逃げればいいのだ。

 ――我ながら卑怯な生き方だと、龍翔自身もつくづく思っているが。


「さてと、龍翔くんの童貞が近々消えることがわかったとこで、再開しよっか。晟、左足嵌めちゃっていいよ」


「ちょっと待て! 今の言葉だけは聞き捨てならないぞ!? ――うが、左足も捕まった……」


「えーっと、蒼空。どーする?」


「そして完全無視!? あぁぁぁぁぁ! 納得がいかないぞぉぉぉぉぉ!! ――ぎゅむっ」


 完全に繋がれた四肢をばたつかせ、ジャラジャラと音を立てる龍翔を見て、龍翔の上に乗っかっている優輝が龍翔の顔を両手で挟む。


「うるさい。あんまりうるさくすると、このまま頬引っ張るよ?」


「ふぎぃ――。おーひっはってるらん(もーひっぱってるやん)……」


「――龍翔くんの頬って、意外と柔らかいね。結構伸びる……翼ー? 龍翔くんの頬、結構柔らかいよ? 抓ってみる?」


「つねって()(じゃ)ねーよ! らえ(だめ)! つ()さ! わらうな! こわい!」


 頬を引っ張られて顔を歪める龍翔を見て、その感触に何故か感心している優輝。その感心を他にも分けてあげようと、龍翔の右手をひたすらにいじっていた翼に声をかける。

 そんな呼びかけにパーっと顔を明るくして、翼は可愛く……しかし少しだけ不気味に笑う。


「まぁ全身繋げられたし、いい加減始めよっかー。まぁ俺は脇腹やるからー、あとは足とか手とか好きにしてていいよー」


「好きにしてていいよって、優輝が決めることじゃぁぁぁぁぁぁっ! 早速!? 何もなしにぃぃぃぃぃぃぃっ!! うがっ、足裏! 待って、一気にやらないで! んあっ、がっ、だぁぁぁぁぁぁっ!!!」


「つ――ーってやって、ぐりっ! ぐぐぐぐぐ――!」


「うあっ、抉るな! んで地味に痛くないのが腹立つ! ぐっ、くすぐった! こしょばっ!? 太ももやめ! ひぎぃぃぃぃぃっ!! 」


 体全身を十人に一斉放火され、龍翔の脳は既にパンク寸前。もう具体的にどこが擽ったいかも分からず、ただただ今までにない感触が身体中を駆け巡る。

 動き難い体を必死に捩り、龍翔は自らの体力を自分で減らしていく。


「再開してからまだ一分くらいしか経ってないのに、もう息切らしてるの? 楽しみすぎじゃない?」


「楽しむとか、そういうんじゃぁぁぁぁぁぁぁっ!! くはっ、わきっ! んにゃっ、くびっ!」


「なんか、時々動物になるね……今なんか完璧に発情した猫だよ……」


「はっ、はつじょぅなんかしてな……っ!! はっ、はっ、はっ、はっ、もう、そろそろ……んなぁぁぁぁっ!!」


 奇声や顔、奇妙な体の動きなど。今の龍翔は、あらゆる面から見て過去最高に狂っている。


「ね、ねぇ……こんな夜中にそんなに大きな声出して、大丈夫なの……? 近所迷惑とか、そもそも龍翔くんのお父さんとかお母さんは?」


「あー、それなら……あいや、そぉだよな! そう、近所迷惑だし、親に気づかれる! よし、今日はこの辺で終わろう!」


「龍翔くん。この部屋の構造と、今日の龍翔くんの親の予定。もう一回しっかり言ってみて?」


「な、なんの事だよ……? い、今言った通り、親に気づかれるぞ? 別にこの部屋は、普通の部屋を二つくっつけただけで……その……怖いんですけど、優輝くん……」


 龍翔の奇声に、いい加減近所迷惑を気にし始める蓮。今までは場の雰囲気に飲み込まれて騒いでしまっていたが、蓮は元々成績の優秀な優等生。周りの状況が見れない人間ではない。

 そしてそんな蓮の言葉を聞き、全員が手を止めて苦い顔をする。

 全員のその表情にはっとした顔をして、龍翔はここぞとばかりに終わらせようとする。――が、優輝は止まらない。必死に終わらせようとする龍翔に顔を近づけ、じっと龍翔を見つめる。


「ロープ、羽、筆、鞭……使って欲しくないなら、正直に言ってみて? さぁ、龍翔くんのお父さんとお母さんは、今どこにいるの?」


「つ、務めてる仕事場のクリスマス企画で、明後日の朝まで泊まり込み……」


「この部屋の構造は?」


「夜になると自動的に窓の外にシャッターが掛けられたりして、壁も含めて完全防音……爆竹とか太鼓とか鳴らしても、隣の家にすら届きません……」


 隠そうとしていた、両親と自宅の事実。鞭を手にした優輝にそれを聞かれ、龍翔は止むを得ず全てを話す。

 そして龍翔の部屋の仕組みに、晟たちは口を開けて唖然とする。


「はい、よく言えました。来た時から龍翔くんの親いなかったし、そういう大きいイベントの日は二~三日いないんだもんね。この前電話した時に一人で盛り上がって、防音だーってことも含めて全部言ってたよ? ちゃーんと、覚えてるんだからね?」


「ごめんなさいです、はい」


 隠そうとした事実を全て知られていて、そんな情報の発信源は全て自分。自分で話したことすら忘れていた龍翔は、間違いなくこれまでで一番のポンコツ具合だ。


「でもまぁ、夜遅いのは事実だね。明日が休みとはいえ、昼間はみんなでばーって遊びたいし、最後にプレゼント交換だけしてそろそろ寝よっか」


「あ、そーいえばプレゼント交換とか言ってじゃん。せっかく用意したのに忘れるところだったわ」


 時刻は既に二時を回っていて、流石にもう寝てもいい頃合いだ。

 そんな時間になってようやくプレゼント交換を思い出し、それぞれがバッグの中からプレゼントを取り出す。


「あのー、俺のこれも外してもらえないでしょーか?」


「あ、ごめん、普通に忘れてた。待ってねー、今外すからー……はい、これでおしまい。」


「優輝が付けるとか言い出したんだから、忘れないでくれよなぁ……」


 そう言いながら肩を回し、龍翔は体を軽く揺する。

 その後自分のプレゼントも取り出し、全員のプレゼントに番号の書かれたシールを貼る。


「んーっと、プレゼントは全部で十一個だろ? 一からじゅうと、十一面ダイスはどーれかなー……あ、これか」


「十一面のサイコロなんてあるの!?」


「あるぞー。一から百面のダイスは全部もってるし、なんならもっとあるしな。訳の分からないガラクタ類の物なら、学校で一番持ってる自信あるぜ?」


「なんの自慢になるか分からないけど、意外と凄いんだよね……」


 またもや衣装ケースを取り出して、今度は無数のサイコロが入っているケースを取り出す龍翔。サイコロは10毎に分けられていて、意外と綺麗な箱にしまってある。

 そんな中から十一面までのサイコロを取り出し、龍翔は片手でポンポンと投げる。


「んー……順番決めるのもめんどーだから、俺最後でいいやー。あとはー……あ、夕飯食った人からにすっか。丁度正の字振ってあるし、晟からやな」


「え、俺からでいいの?」


「結局誰が何持ってきてるかなんて分からないしね。大丈夫だよ!」


「ん、分かった。ありがとー」


 そう言ってサイコロを回して、全員がどんどんと回していく。回していく仕組みは簡単。1人回す毎にサイコロの面の数をひとつずつ減らしていき、でための数はほかの数で代用する方法だ。

 そして全員がサイコロを回し終え、それぞれにプレゼントが行き渡る。


「んーっと、我のは〜……なんだ、これ……」


「あ、俺のじゃん! それねー、俺もよくわかんないの。なんか面白そーだったから買ったー」


「なんだか分からないもんをプレゼントにするなよ……でもまぁ、これくらいなら置いときゃ可愛いぃ――!?」


 龍翔が手にした大きくも小さくもないものには、サボテンの形をした置物のようなものが入っている。仕様のわからない置物に首を傾げると、それに反応するのは優輝。

 買った本人の優輝でも分からないものを貰ってしまい、取り敢えず机の上に置く。そしてサボテンに顔を近づけてサボテンを観察すると、いきなり水が発射される。


「ふふーん! ドッキリ大成功ー!! それねー、サボテンの置物の形したドッキリ用の道具! ほら、このボタン押せば水出てくんの」


「顔面に直撃したんだけど……びしょ濡れだぞこれ……うりゃぁぁぁぁっ!」


「わっ、ちょ、撥ねるよー!」


 水でびしょ濡れになった顔を勢いよく左右に振り、その水を優輝にかける龍翔。若干晟たちにもかかってしまったが、そこは笑ってご愛敬。


「ったくー。ちなみに、優輝が持ってるそれ、俺のだから」


「うえっ!? なんで! 晟、こっちあげる! 交換しよ!」


「なんっでそうなるんだよっ! 優輝ほどの意地悪しないから!」


 まさかの相互交換で、優輝は晟とプレゼントをさらに交換しようとする。そして何より困るのが、晟もそれを見て少し顔を顰めたことだ。せめて、笑って交換しようとするくらいが良かったと、龍翔は心の中で泣く。

 そんな龍翔を見ながら、優輝が警戒してプレゼントの箱を開ける。


「ううう……ん? これって……」


「だから意地悪なんてしないって言ったのに。普通にネックレス。そろそろオシャレし始める年頃やろ?」


「えっ、それかっこいいじゃん! 優輝、それ付けてみなよ!」


「そ、そうか? こんな感じ?」


「凄い! めっちゃかっこいいよ!」


 さらに、落ち着いてみれば入っていた箱もかなり洒落たものだ。地味でもなく、かと言ってそこまで強めの強調はない。中学生がつけていても、おかしくはない柄だ。


「ふ、普通にありがと。うん、これから使う」


「よーやく素直なデレ来たかー? ツンデレは分かってたけど、最近は全然デレがなかったからなー……って、水!」


 珍しく素直になった優輝を見て、龍翔がそう言いながら笑う。するとそれが恥ずかしくなったのか、優輝は机の上に置かれたサボテンから水を出す。

 またもや机が濡れ、龍翔は慌てて拭く。

 ちなみに、晟のは蒼空へ、蒼空のは幸希へ、秀のは晟へ、大地のは翼へ、賢人のは大地へ、聡のは賢人、翼のは聡へ、幸希のは蓮へ、蓮のは秀へと渡った。


「結局、ふざけたプレゼントは優輝だけだったな。そして被害者は俺……なんか、今日は優輝から俺への攻撃が多すぎると思うんだわ……」


「まーまー、いつも龍翔くんは晟とか蒼空いじってばっかだったし、たまには弄られるのもいいでしょ?」


「いじり方が本格的なんだよ! あんなガッチガチに固めて擽ったことなんてないし!」


 布団を敷きながら、いじり方のレベルが違いすぎると訴える龍翔。

 それになにより、擽られる側で楽しめてしまったことに龍翔は陰ながらショックを受けている。

 龍翔は後輩相手にはずっとエスを貫き、エムの可能性がある自分を否定してきた。それなのに、ここで楽しめてしまってはその事実を否定できない。

 それでも、楽しかったから大丈夫と割り切り、龍翔は今日の出来事もしっかりと思い出に残すと決めた。


 新たな思い出の誕生と、新たな自分の発見。その言葉の形だけなら、最高の日だ。


「それじゃ、明日は十時くらい起きで頼むよ。朝早くに起こすのだけはやめてくれ。先に起きたら先に起きたで、静かだったらてきとーに遊んでていいから。なんなら隣の部屋に卓球台あるしな」


「分かった、早く起こして日中楽しめないのも嫌だし、起こさないようにはするよ。割りと真面目にね」


「おう、そうしてくれると助かるわ。明日もめいっぱい遊ぼーな」


「うん! 絶対!」


「したらもう電気消すぜ、おやすみー」


「おやすみ――」


 いくつもの布団を寄せて、そこへ皆が集まる。

 ちなみに、龍翔がいつも寝ているベッドでは、擽りの続きができなかったことを理由に龍翔と蒼空が寝ている。

 そして全員が寝静まり、幸せなクリスマス・イヴが幕を閉じる。


 ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲


「ふっ、あぁぁ……」


 ベッドに寝転がったまま大きな欠伸をしながら腕をグイッと伸ばし、龍翔はようやく目を覚ます。時刻は九時半。やや予定より早いが、眠りの質がよかったのか、二度寝するほど眠くはない。そう思いながら、龍翔はゆっくりと体を起こす。


「あ、龍翔くん起きたよ! おはよ、龍翔くん」


「ん……あぁ、おはよ。静かにしといてくれてありがとなー」


「どーいたしましてー。――あ、それよりさ。朝起きたらみんなの枕元にこれが置いてあったんだけど、これ置いたの龍翔くん?」


 そう言って、晟は綺麗に包装されたクリスマス仕様のプレゼントボックスを龍翔に見せる。

 それを見た龍翔は少し視線を横にずらし、軽く口を尖らせる。


「さー、知らなーい。サンタがプレゼントでも持ってきてくれたんとちゃう?」


「そっかー。今年のサンタさん優しいんだね? もしも会ったらハグでもしてあげよーかなって思ったけど、もうさすがに来ないかなー」


「うぐ……そ、そーだな、もう、来れない、かも、な……うん……」


 分かりやすくとぼける龍翔を見て、晟は軽く龍翔を煽る。

 そんな煽りを受けた龍翔は、言葉の最後に誰にも聞こえないほど小さな声で「ちくしょう」と悔やむ。


「んー、何が入ってんだろ」


「え、これってスリースター!?」

「しかも三つも入ってるじゃん!」

「え、タオルとラバーフィルムも入ってるよ!?」

「普通にやばくない!?」


 晟たち10人の枕元にあったプレゼントの中身は、全て同じもの。卓球の試合で使うスリースターが三つと、卓球の有名メーカーのロゴが入ったタオル。そして、ラバー保護フィルムの二枚セットだ。


「ほー。それじゃ、卓球頑張れってことかもなー。良かったじゃん!」


「ホントだよー! ありがとね、龍翔くん?」


「うっ……べ、別に俺があげたわけじゃないし、お礼ならサンタに言えばっ!」


 素直な感謝を、万遍の笑みに乗せて龍翔へ届ける晟たちに、龍翔は顔を赤くしてくるりと後ろを向く。


「そんなことなーいよ。龍翔くん、ありがとねーっ!」

「卓球頑張るから、大会とか、たまには応援来てね?」


「――あぁもう! 分かったよ! そうだ、せっかくあげたんだから頑張れ……はぶっ」


 後ろを向いた龍翔に、晟たちは後ろから抱きつく。そんな晟たちに負け、龍翔は開き直ってもう一度晟たちの方に向き直る。

 すると、向き直った瞬間にもう一回抱きつかれ、龍翔はそのままベッドへ倒れる。


「ありがとう、世界一のサンタさん!」


「――っ! ――プレゼントのお返しは、おまえらの大会勝ち進みな」


「もう。サンタがプレゼント貰ってどうするの……ちゃんと、見に来てね?」


「おう!」


 ――朝からそんな幸せなやり取りを終えて、今日もまた、幸せなクリスマスが訪れる。






  〜Merry X'mas〜

以上、クリスマス企画でした!

ちょっとBL感が見えるシーンもありますが、そこを含めてが龍翔たちの仲の良さなので、暖かい目で見守ってください!

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