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二度目の四天王ライフ  作者: 羅弾浮我
第一作:〜異世界への突入、『聖陽郷』での波乱〜
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34話:4層の待人

 目の前にある扉に手をかけ、リゥはゆっくりとその手を引く。

 その扉の重量感は、それが開かれる音だけでしっかりと伝わってくる。扉の下部が地面に摺れているのは、地面に付けていないと支えられないからだろう。

 そして、感じられる重量感は物理的なものばかりではない。こればかりは開けている本人にしか分からないが、開けるのが躊躇われるような、異様なオーラを放っているように思える。

 しかし、そんな重々しい雰囲気も、次の一言で一転する。


「やぁやぁ! やっと来たー! ずーっと待ってたんに、なっかなか来ぉへんのやもーん!」


 体に緊張感を走らせ、心身ともに厳戒態勢で挑もうとしたリゥたちの静寂を粉々に打ち砕いた幼女。

 幼女は、透き通った水色の髪をバサバサと揺らし、明るすぎて目に悪いくらいのドレスでクルクルと回る。場の空気をぶち壊す、幼さ故の無邪気さ。

 そんな幼さ全開の幼女を、リゥたちは笑って見過ごしていた。

 ――相手が、邪陰郷でなければ。


「はしゃいでるとこ悪ぃけどよ、俺らはお前と遊ンでる暇ねぇンだわ。お前が出迎えたってことは、おまえが4層の待人でいいンだろ?」


「もー。お兄さんってばせっかちなんだからー……でもまぁ、訊かれたからには答えてあげる――ワタシは第6支部4層の待人、アリハル」


 ゴウの問いに文句を言いながらも、幼女――アリハルはしっかりと名乗る。

 支部長のアリウムといい、5層のモーサといい、丁度いい年齢の奴らはいないのかと突っ込みたくなるメンバー構成だ。

 少女が率いる第6支部の5層には老人がいて、4層には幼女。ここまで来ると3層と2層の待人が気になるところだが、今はそんなことを考えている場合ではない。


「さぁ、あなたたちの望み通りに名乗ってあげたよ。だから、次はワタシの番だよネ?」


「叶えてやるかは別だが、聞くくらいはしてやるよ」


「お兄さん、随分優しいんだネ? そしたら他のお兄さんとお姉さんも優しいのかな? ――まぁいっか! それじゃワタシのお願い。お兄さん、お姉さん、あーそーぼー!」


 一応聞くとしか言っていないのにも関わらず、もう既に叶えてもらうような気でいるアリハル。もしくは、聞くだけでも優しい判定になるのか。

 そんなアリハルの口から出た望みに、リゥたちは疑問と呆れを隠しきれない。


「お前、何言ってンだ?」


「ゴウ! 下がれ!」


「――ッ!?」


 意味のわからないアリハルの発言に、ゆっくりと近づいて言及しようとするゴウ。そしてゴウがアリハルに近付こうとした瞬間、後ろに待機していたゲンが叫ぶ。そして、ゲンが叫んだ直後、ゴウを目掛けて一本の矢が一直線に射られた。

 その矢は仰け反ったゴウをスレスレで通り越し、そのまま床に突き刺さる。


「は……?」


「おー! 今の矢に気づいたおじさんも、今の一瞬で矢を避けたお兄さんも、やっぱり凄いネ」


「なんの真似だ?」


「なんの真似もなにもー、ワタシは遊ぼって言ったし? この部屋に入ってきた時点で、お兄さんたちに拒否権はないよ?」


 人差し指を立て、それを口元に当てながら首を傾げるアリハル。アヒル口をしてリゥたちを見るその目には、やはり害意というものは感じられない。

 しかしそれより、その前にアリハルが放った言葉。それが何よりも重要である。

 この部屋に入ってきた時点で、リゥたちに拒否権はない。つまり、アリハルの″遊ぼう″とは、″遊べ″という命令、そして開始の合図でもあったのだ。


「お前の遊びに付き合ってやれば、次の3層に言っていいのかよ?」


「んーとね……ワタシとのゲームをクリア出来たら行ってもいいよ!」


「クリアだと?」


「そう、クリア! ルールは簡単。ゲームが終わるまで生き残ってればおーけー!」


 そう言って、アリハルは親指を立ててその手を前に出す。


「何やったら終わんだよ?」


「今飛んできた矢とか、そういう武器が無くなったりしたり、これから出てくる人たちが全員戦えなくなったり、あとはワタシが満足したらかナ」


「ンだよ、そんなことか。丁度体が鈍ってきてたとこだしな。面白ぇじゃン?  やってやるよ」


 武器の数も敵の人数も、アリハルがどこで満足するのかも分からないが、そんなことはお構いなし。取り敢えず体を動かしたいゴウが、躊躇なく承諾する。


「それじゃーまずは、ここをゲームステージに変えないとネ! はいはーい、お願いしまーす」


 そう言うと、後ろを振り向いたアリハルがパンパンと手を叩く。

 すると、何かのスイッチが押されたのか、4層がガタガタと揺れ始める。

 壁が下にスライドされ、壁のなくなった所には新たな床が構成。構成される床の動きが止まると、その床を囲うように新たな壁も構成されていく。

 外見も内見も、見た感じではなんの変哲もない石造りの塔だったはず。それが、からくり屋敷のように変形したのだ。


「これ、は……」


「すげぇな!? え、すごくね!? ちょ、ゴウ! お前はもう高火力禁止! この塔は絶対に壊すな! 後で俺の別荘にする!」


「はぁ!? お前何言ってンだ? 確かにこれがすげぇのは分かるけどよ、もう少し考えろよ」


 塔の変形を見た瞬間、リゥの目が輝く。

 普段の生活から見ても、龍翔時代と変わらず精神年齢は中二病が残っていてもおかしくないほどの低さであったリゥ。この手のことに反応しないわけがないと、隣にいるアキラは分かっていたかのように苦笑いをする。

 しかし、目を丸くしてガッツリと食いつくリゥに、ゴウは声を低くして首を横に振った。


「そうですよ、リゥ様。ここはあくまでも邪陰郷の支部。遺しておくべきではありません」


「いや、どう考えても俺の別荘にする他ねぇだろ! こンなにかっけぇンだぞ? お前には譲らねぇ!」


「ゴウ様!?」


 ゴウの言葉を肯定し、リゥを説得しようと話に入ったが、呆気なくゴウに手のひら返し食らうシロ。

 そもそも、シロが何故ゴウにまともな言葉を期待したのかが分からないが。


「もしもこの塔をクリア出来たら好きにしていいけどー、その前にこの4層をクリア出来るのかな?」


「ここにいる上陸班を、そんなに甘く見ない方がいいぜ?」


 先程までの巫山戯た姿勢とは一転し、リゥは少しだけ声のトーンを下げる。


「――まぁお兄さんたちがやる気になってくれるならいいけど、ワタシもそんなんで手とか抜かないからネ?」


「言ってくれるじゃねぇか。言っとくが、俺は見た目通りまだ大人じゃねぇ。ゲームだろうがなんだろうが勝ち負けがあんなら本気でやるし、大人気ねぇとかそんなもんは通用しねぇからな」


 アリハルとリゥは真っ向から睨み合い、お互いの戦闘意思を確認。アリハルからは初めて敵意に近しいものが見られ、リゥからは禍々しいほどの鬼気が感じられた。

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