31話:再臨のリゥ
仮面男を倒し、安堵の息を漏らすザイデとリオ。
――過去は、そこで終わってしまった。
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再び無の空間が広がり、リゥはただただそこに浮かんでいる。浮かんでいるという表現が正しいかどうかは分からないが、床も、壁も、天井もない空間なので、浮かんでいるという以外に表現ができない。強いて言うなら、『在る』だけだろうか。
――なんで?
そんな無の空間で、リゥの中には疑問しか浮かばない。
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――いつ
命を落としたのだろうか。
――だれが
命を落としたのだろうか。
――どこで
命を落としたのだろうか。
――だれと
命を落としたのだろうか。
――どうして
命を落としたのだろうか。
――どうやって
命を落としたのだろうか。
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声が、聞こえた。
どうしたの?
――見たく、なかった
なにを?
――自分の、過去を
どうして?
――頭が、混乱する
駄目なの?
――駄目というか、嫌だ
どうしたい?
――分からない
忘れたい?
――出来るなら
そっか。
――うん
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――え、聞いただけ?
救われると、そう思った。
忘れさせてくれると、そう思った。
それなのに、声はそこで終わってしまう。
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何も無い、今度こそ一人になった空間で、リゥはなにをすれば良いのか分からないまま、ただただそこに浮かんでいる。
景色、見えない。
音、聞こえない。
匂い、嗅げない。
声、出せない。
物、触れられない。
体、ない。
何も、出来ない。
――否。
一つだけ、できることがある。
思考力だけはある。
考えることだけはできる。
自分の体が存在しない中でも、脳だけは理解出来る。
喜怒哀楽はそこまでないが、考えることはできるはずだ。
でも、何を考える?
ここはどこか?
――分かるわけがない。
さっきのはなんだったのか?
――分かるわけがない。
なぜ体がないのか?
――分かるわけがない。
どうすればいい?
――分かるわけがない。
詰んだ。
答えが、何一つない。分からないことだらけで、分かることが一つもない。
なんで?どうして?
なんでこうなった?
どうしてこうなった?
ここのことは分からない。だから、ここ以外のことを考える。
現在のことは分からない。だから、現在以外のことを考える。
まずは過去。
ここに来る直前は……塔に、第6支部に、迷い森にいた。
次、なぜこうなったのか。
明確な理由は分からない。しかし、関係があるとしたらあの老人。それ以外には思い当たる節がない。
過去は、分かった。
現在は、分からない。
そしたら次は、未来だ。
どうしたいのか。
とりあえず、ここを抜け出す。抜け出さなければ、他のみんなが……
――他の、みんな?
そうだ。他のみんなは、どうした?
ゴウは? ゲンは? レツは? スイは? フウは? ライは? サドは? イオは? ネイは? セトは? クラは? イルは? グラは? ネスは? アイクは? エンジは? カイは? クレハは? レントは? ウレンは? アヤトは? レックスは? バルは? トートレスは? ヒールは? コントルは? ハイルは? リボンは? ルリは?
そしてなにより、アキラは?
ゴウやゲンは一人になっても大方大丈夫だ。
十二人衆も、彼らの実力ならば大丈夫だろう。
特戦隊も個の実力は確かに高い。大丈夫に賭けるしかない。
特援隊も、逃げる術くらいはあるはずだ。治癒術に特化しているだけで、他にも出来ることはある。
だが、問題はアキラだ。アキラが一人になった場合だけは、可能性が一番低い。相手が一般人なら可能性はあるが、リゥが今までに見た邪陰郷の連中で、一般人レベルの人間はいなかった。
――アキラが、危ない。
ゴウやゲンがアキラを放っておく訳はないと思うが、絶対に助けられるという保証もない。
それに、自分がこうして隔離されているのだ。可能性がないとはいえないが、あの場でリゥだけが隔離される可能性は低いはず。
――リゥよ、お前は何を誓った?
あの夜に、他の四天王の三人に勇気を貰った、この迷い森上陸への覚悟を決めた、あの夜に。お前は何を誓った?
アキラと、何を、誓った?
アキラと交わした誓い。
アキラのそばにいて、何があっても守ると、そう誓ったのではないのか?
アキラが危ない。
誓いは破ってはいけない。
アキラを守らなくてはいけない。
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でもさ、どうやるの?
再び、声がした。
目も、耳も、鼻も、口も、手も、足も、何も無いんだよ?
君には、体がない。動かせる身体がない。
目がなければ、見えない。
耳がなければ、聞こえない。
鼻がなければ、嗅げない。
口がなければ、話せない。
手がなければ、掴めない。
足がなければ、歩けない。
体がなければ、触れられない。
身体がなければ、何も出来ない。
そんな中で、どうするの?
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それでも、守らなきゃいけねェんだよ。
アキラが危ねェかもしれねェなら、何がなんでも近くにいてやらねェといけねェんだよ。
何があってもアキラのそばにいるって、約束したんだ。
どんなときでもアキラを優先するって、決めたんだ。
何としてもアキラを絶対に守るって、誓ったんだ。
あの一瞬で、俺が殺される訳ねェ。一度死んでる俺が言うんだから、間違いねェ。
だとしたら、この空間は瞞し。ただの夢に過ぎねェ。
――それが分かっても、起きられないよね?
内部から起きようと思って起きれねェなら、外部から起こされればいい。
――でも、起こされる気配はゼロだよ?
外がそれどころじゃねェってことだろ。だったら尚更、戻らねェといけねェ。
――どうやってやるの?
自分で動きゃァいいだろうが。周りに頼れねェなら、自分に頼るしかねェ。
――でも、腕とか足の感覚なんてないでしょ?
たしかに、この空間には体が存在しねェ。だから動かす感覚もねェ。
――じゃあ、無理なんじゃない?
手足が動かせねェだけだろ。俺にはまだ考えることが出来んだよ。
――考えて、何になるの?
考えられるってこたァ、想像が出来んだよ。想像が出来るってことは創造も出来んだよ。
――想術でも、使う気になった?
今は、外にいる俺の手の向きが分からねェ。だから、自分に撃てるって確信が持てねェ今は、好き勝手に想術を撃つことは出来ねェ。
――それなら、終わりじゃないの?
想術だけしか、使えねェならな。
――他にもなにか、方法があるって言うの?
お前、気安く俺に話しかけてくるくせに何も知らねェんだな。
――だって、そこまで興味無いもの。
ああそうかよ。それなら直ぐに行っても問題ねェな。
――ええ、行けるならね。勝手になさい。
なら、とっとと行かせて貰う。
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十数年久しぶりだな……
想術が使えたなら、お前も来てくれんだろ?
お前が来てくれなかったら、正直言って他に手立てはねェ。想術の乱射は最終手段にもしたくねェ。
だから頼む。出てきてくれ……!
――これを使えて、ようやく自分に戻れるってもんだ。
『想技』浮躍!!




