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二度目の四天王ライフ  作者: 羅弾浮我
第一作:〜異世界への突入、『聖陽郷』での波乱〜
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24話:余韻は少し苦く

 ギルを倒しリゥが家の反対側へ戻った時、既に邪陰郷の下っ端は倒されていた。それはベイも例外ではない。

 そしてそんな邪陰郷の襲撃から二時間後。四天王とアキラの五人は、夕日に赤く照らされた庭園に集まっていた。


「――なるほど。襲撃が来るとは予想していたが、こうも早く来るなんてね……」


「それでも、リゥとアキラが無事なら良かったわ。これでリゥがやられててアキラが連れて行かれてたら完全にアウトだかンな……」


「それにしても、相手は幹部だったのだろう? その体でよく勝てたね」


「他の幹部がどれほどの強さかわからないけど、多分あいつは強くない。あいつの能力だけを見れば確かに強いが、実力は十二人衆にも遠く及ばない。それに、あの能力は俺にとって相性が良かったな」


 現に、ギルの戦い方は素人そのものだった。自身の能力を過信した故に自らの実力が高いと勘違いし、隙の多すぎる余裕ぶった態度。それが自分の首を絞める行為だと、理解すらしていなかったのだろう。

 ギルの攻撃も、不意打ちだからこそダメージを負ったものの、後に響くような痛みはなかった。あの不意打ちがゴウやゲンのものなら、きっと起き上がれていなかっただろう。


「たしかに、俺が前に対峙した幹部は、十二人衆が数人がかりで苦戦する強さだったな」


「って考えると、やっぱそいつは弱かったンだな」


「まぁ、向こうとしてはリゥの不意をついて、アキラくんを奪う作戦だったのだろうね」


 そう言って、レイはアキラの方を見る。

 今回の襲撃がギルであったことに、リゥは心の底から良かったと思う。十二人衆が数人掛りで苦戦するような幹部では、今のリゥにも持て余しかねない。


「でも、二ヶ月後にはそんなやつらと戦うことになる。安心してる暇は、やっぱりねぇな……」


「今回のようなこともあるだろうし、僕らはなるべく一緒にいることにしよう。少なくとも、アキラくんを一人にしてはいけないね」


「ああ、そうだな。まぁ俺は絶対に離れねぇけど」


「――うん、ありがと」


 レイの言葉を聞いて、リゥとアキラは目を合わせ、穏やかな笑みを浮かべて頷く。


「俺たちも、二人のトレーニングを全力でサポートしよう。だから、心置き無くトレーニングに集中してくれ」


「そゆことだから、早速始めようぜ」


「おう! アキラも、頑張ろうな!」


「うん!」


 ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶


 それから数時間、リゥたちのトレーニングは、日が完全に沈むまで続いていた。

 ゲンは今回の事件の報告に行き、リゥはゴウのサポートを受けながら、アキラはレイのサポートを受けながら、それぞれのトレーニングをしていた。


 ゴウのサポートを受けながら、リゥは一定の型に沿って切り離されている板の間を通すように、素早い蹴りを連続で放つ。しかし、板と板の間はリゥの足がギリギリ通るサイズで、少しでも足がブレれば火のついた板にぶつかり、足に火傷を負う。

 そんな危険な板の間も、リゥは難なく足を通し、色々な形の板に連続で挑戦する。


 そんなリゥの横では、アキラがトレッドミルを使用し体力の増強を行っている。

 ダッシュとジョグを繰り返し、体力の他にも足が鍛えられるトレーニング。確実に効果の得られるトレーニングだが、その分少々精神的にも辛くなる。しかし、そんなトレーニングの中で、アキラは自分の体に違和感を感じる。


「いつもより、体が疲れない気がする……」


 トレーニングの休憩でトレッドミルから降り、アキラは水分補給をしながら自分の体を見渡し、首を傾げる。

 普段なら数回で音をあげるようなトレーニングのはずだが、呼吸は直ぐに整うし、足の疲れもそこまで感じない。鍛えられたにしては急速すぎるほどの違和感だ。


「ああ、それね。リゥの庭を見て、何か気づかないかい?」


「ん、えっと……広い?」


「広いのもたしかなんだけどね。それ以上に、小さい川や池、滝、生い茂る木々。かなり自然に近くないかい?」


 レイの質問に対し、顎に手を当てて考えた結果が広い。たしかに広いが、期待していたものと違いすぎる答えにレイも思わず苦笑いだ。


「あ、たしかに。でも、それって関係あるの?」


「こうやって自然に近づけるのはね、二つ、意味があるんだよ」


 そう言って、レイは先ず人差し指を立てる。


「一つは、リゥのペットにストレスを与えないようにするため。リゥのペットは、ヴォルフくんのように、戦いにおいて役に立つ『クディ』という種類の動物と、愛玩対象とされている『ティーア』という種類の動物がいる」


 新単語が二つ出てきたが、アキラの知識で言うと、ライオンなどの野性的な動物と、犬や猫などの家庭的な動物の違いだろう。


 これは余談だが、今でもこの世界の知識が少ないアキラも、今では自分の知識と結んで想像することが出来るようになってきている。そして今回も、そんな風に頭の中で想像して関連付け、出来るだけ自分の中で理解を深める。


「それで、クディのような動物は平気だが、ティーアたちはかなり繊細なんだ。ストレスを与えないように、できる限り穏やかな場所に住む必要がある」


「あー、なるほど! その動物たちが住みやすい環境にするためだ!」


「そう。それともう一つ。今回のアキラくんの疑問は、こっちがメインだね」


 そう言って、コホンと咳払いをしてから何かを掬うように手のひらを上に向けるレイ。

 すると、そんなレイの手のひらの上に、小さな光が現れる。


「この世界には、僕たちのような人間と、それに近しい人型の種族。ヴォルフくんたちのような動物や、それに近しくも獰猛さがある魔獣。それから、特殊な生命体である精霊と呼ばれる存在などがある」


 レイの手の中にある光。精霊と呼ばれたそれらは、個々の大きさはかなり小さい。アキラの知識で言えば、卓球のピンポン玉と同じくらいの大きさだ。

 そして、そんな小さな精霊は、レイの手の上でクルクルと回っている。


「このコたちは、精霊の中で一番数が多い『ミニィ』と呼ばれる種類だよ。普段はあまり目に出来ないけど、至ってどこにでもいる」


 そう言って、手の上の精霊をひょいと空へ放つレイ。すると池や草木の周りから、無数の精霊が次々にその姿を現す。


「ミニィの中でもたくさんの種類があって、あの青いコたちは水辺に生息する『ルーブ』で、あっちの緑のコたちは草木の周りに生息する『リング』だね」


 因みにその他にも色々な種類があり、火の周りなどの暑い(熱い)ところには赤い『トロー』、電気や光の周りなどの明るいところには黄色の『コット』、氷山などの寒いところには水色の『アクラ』がいる。また、夜や暗闇にだけ姿を現す『ネーラ』という種類などもいる。


「その、みにぃ? と、関係があるの?」


「そうだね。アキラくんの周りにいる桃色のコたち。このコたちは『キュア』といって、治癒に特化してるコたちでね。傷を癒すのは勿論だが、筋肉の緊張を解したり、血液循環を良くしたり、空気中にあるクラフトを吸収し、人に分け与えることができる」


 そう言いながらレイは自分の腕を少し傷つけ、それがキュアによって治されるところを見せる。


「つまり、このコたちが俺の体を疲れ無くしてくれてるってこと?」


「正確には、疲れる前にヒーリングしてくれてる感じだね。それでも、このコたちはそこまで強い存在ではない。これだけの数がいれば今回のトレーニングくらいは助けてくれるけど、一匹では到底そんなことは出来ないし、傷の治癒も軽いものか、治癒師の手伝いくらいしかできないよ」


 この世界で、精霊とされる存在にはいくつか種類があり、その中でも力のない存在がこのミニィたちだ。力がない反面、世界のどこの場所にでも大体存在していて、扱いやすいのが特徴的だ。


「そしたら、リゥくんは?」


「リゥの場合は核がしっかりと作られているし、今はその核に体を慣らす段階だからね。僕たちと比べれば体力は少ないけど、それでも尋常じゃないから。心配はいらないだろうね」


 さっきからひたすらに足を鍛えているリゥは、それこそ休憩など全くしないで、黙々とトレーニングを重ねている。

 事ある毎にアキラの方へ来ていたリゥが、トレーニング開始からずっとあの調子だ。そんなリゥが近くにいるからこそ、アキラも頑張ることが出来る。

 リゥや他の四天王がいなければ、アキラはもうとっくに止めていたかもしれない。そう思わせるほど、リゥたちの存在は大きい。


「――それじゃあもう暗くなってきたし、そろそろ終わりにしようか」


「あ、はーい」


 そう言って、レイとアキラはタオルなどを持って、リゥの家の方へ向かう。


「レイたちも戻るンじゃ、俺らもそろそろ戻ろうぜ?」


「ん? あぁ、もうそんなに時間経つか」


「ンだよ。一生懸命になりすぎて暗くなったのにも気づかなかったってか?」


 そう言って、ゴウはガハハと笑いながら家の方へ向かう。そんなゴウの後ろを歩くリゥの表情は、少し重たい。

 日が落ちたことに気づいていなかったのはたしかだ。それを態々ゴウに言うつもりはないが、そうにもなって集中していた自分に気づくと、どれだけ今回のことを気にしているのかが理解出来る。


「今回のヤツらの襲撃、被害はほとんどなかったが……ああ、クソ! 考えてても仕方ねぇ! 守るって決めたんだ。それだけは何があっても果たす……!」


 回らない頭を使うことを諦め、頭を乱暴に掻き回すリゥ。それから右手で拳を作り、その拳に誓うようにグッと力を込める。


「あいつのことは、そのあとだ……」


 遠く、手を伸ばしても届かないある位置にある星を眺め、リゥはボソッとそう呟く。

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