表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二度目の四天王ライフ  作者: 羅弾浮我
第一作:〜異世界への突入、『聖陽郷』での波乱〜
28/146

20話:ファクトリーの一角で

「――何、言ってンだ?」


 ファクトリーの一角。四天王、アキラ、ベイ、アイが集まった場所。そこにいる全員が、数秒前のリゥの発言から呆気にとられている。


「アイを救助する。それが今の俺の仕事だ」


「お前、何言ってるのか分かってンのか? 邪陰郷の仲間を救助するだと?」


「ああ、そうだ」


 リゥの思いがけない、意味の分からない発言。目の前にたちはだかる敵を、邪陰郷の一人を、救うと。リゥは確かにそう言った。

 リゥの真剣な眼差し。嘘や冗談ではないと、誰の目にも分かる。そして、それを誰も疑わない。なぜなら、それが今、一番怖いのだから。


「リゥ。それは僕も賛成できないな。君が幼い男の子が好きなのは分かっているし、それは否定しない。それでも、君は敵だと分かっていても、少年ならば助けてしまうのかい? 君も、味方と敵の見境が付かない訳ではないだろう?」


「勿論、俺もこいつが完全なる敵なら救助などしない。少年なんでもでも、敵は敵だ」


 そう言い切ったあと、リゥは目を瞑り一呼吸置く。そして落ち着いてからゆっくりと目を開け、再び口を開く。


「――でも、アイは、完全なる敵じゃない」


 リゥは、声を低くしてキッパリと言い切る。


「だからよ、お前はさっきから何言ってンだ? あいつは邪陰郷だ。邪陰郷が敵じゃないなんてこと、あるわけねぇだろ!」


 リゥの意味の分からない発言に、ゴウが少し声を大きくして反論する。

 しかしそれでもリゥは顔色一つ変えず、毅然とした態度を崩さない。


「たしかに、邪陰郷はみんな敵だ。でも、邪陰郷に囚われている奴らも敵か?」


「つまりリゥは、あの子が邪陰郷に囚われていて、仕方なくここに来ているだけだと、そう言いたいのかい?」


 リゥの問いかけに対し、リゥの発言の意味を理解出来たのはレイだけだ。積極的と消極的と、その差はあるものの、リゥとレイの考えは似ていることが多い。

 そしてそのレイの確認に、リゥは「ああ」と頷く。


「何言ってンだ! あれが芝居だったらどうする!?」


「それなら、本当に芝居じゃなかった時はどうするんだい?」


「レイ……っ! お前もか!?」


 ベイとアイのやり取りを芝居かもしれないと疑いをかけるゴウに対し、芝居でなかった場合を問うレイ。リゥの言葉に思考を変えたレイに、ゴウは驚きのあまり目を剥く。


「芝居じゃなかった場合、その少年はただの被害者になるな」


「ゲンまで……」


 レイに続いてゲンまでもがリゥ寄りの思考を強く持ち始め、ゴウは四天王の中で孤立。リゥは完全に助けるという意見を持ち、ゴウは怪しいという意見を持つ。レイとゲンはまだ半々だが、どちらかと言うとリゥに近い。

 しかし、四人の意見が割れているのはアイのことであり、四天王の前にある問題はそれだけじゃない。


「取り敢えず、このままでは話は平行線だね」


「それなら、話題を変えるまでだな」


「んじゃ、先ずははっきり敵だって分かるやつからやるか」


 もう少しで対立を生みそうだった現状から、呆気なく目を背けた四天王。そんな彼らの視線はアイを通り越し、その奥にいるベイに向けられた。

 四天王の中で、まずは確実に敵と判断出来るベイから倒すという意見がまとまる。

 ベイのあともう少しで仲間割れに発展するかという淡い期待は、膨らむ前に壊されてしまった。彼らの仲間割れという緊急事態に乗じれば作戦の成功率はぐんと上がると踏んでいただけに、ベイは露骨に機嫌を悪くする。が、しかし。膨らむ前に壊されたことは不幸中の幸い。まだ期待が大きくなかった分、舌打ちをして目付きが悪くなる程度で済んだ。

 そしてその直後、我に戻ったベイは深く嘆息し、ゆっくりと四天王の方へ歩み寄る。


「――どけ」


「あっ」


 後ろからアイの肩を掴み、そのまま自分の後ろに押したベイ。

 押されたアイは少しよろけながら、後ろへと下がる。

 そしてアイを押したベイはその直後に足を止め、前にいる五人を嘲笑するように左の口角をあげ、鼻で笑う。


「あばよ」


 目を大きく見開き、低い声を短く発した直後、右手を大きく振りかざして地面に何かを投げつける。

 ――瞬間、鈍い爆発音とともに、大量の黒煙が放出。

 リゥは、咄嗟に抱いていたアキラを抱きしめ、体を小さくする。そしてほかの三人も、腕で顔を覆った。

 四天王たちを黒煙が包み込み、視界が奪われ、咳き込み、元凶であるベイを追うことが出来ない。


 軈てゆっくりと黒煙が晴れて視力を取り戻すと、リゥたちは光に目を慣らしながら呼吸を落ち着ける。

 すると、目の前にベイとアイの姿はなく、咄嗟に辺りを見回すが、それらしき影はもうない。


「クソ! 舐めやがって……!」


「逃げられたか……」


 完全に敵を見失い、ゴウは怒りと悔しさで地団駄を踏む。


「――いや、まだ諦めるには早い。ヴォルフが敵を追っているはずだ。アジトを掴めば直に戻ってくる」


「アジトって、それは迷い森でほとんど決定してるだろ」


「迷い森がアジトなら、何故奴らはあんな少人数で攻めてきた? 全体の本拠地が迷い森だったとしても、他にもいくつかの支部のようなものがあるはずだ」


 邪陰郷がいくつかの支部ごとに分かれて、別々に行動している可能性を提示するリゥ。確かに、今回の現状を見ればその可能性は頷ける。あの程度の人数で四天王たちに喧嘩を売り、結局返り討ちに遭い撤退。現状とリゥの可能性から、ゴウは納得したように反論を止めた。


「もしそれが本当だとしたら、他の場所でも同じようなことが起きている可能性があンじゃねぇのか?」


「――いや、それも多分ないと思うよ」


「なンでだ?」


「奴らの狙いはあくまでもアキラくんで、そこまで戦いには囚われていなかった。とすると、目的はこっちを倒しに来てるわけじゃなく、アキラくんを攫うことで、リゥを精神的に追い詰めようとしたんじゃないか?」


 たしかに、今回の邪陰郷の目的はアキラを奪うことのようで、元々戦いの意思はなかった。

 そして、戦いをするつもりがないためにそこまでの大群では攻めて来ず、撤退の判断も早かったのだろう。


「つまり、奴らは俺らを直接潰しに来るわけじゃなく、リゥを精神的に追い詰めてそこからの戦力ダウンを目論ンでたってことか」


「そうだろうね」


「ちっ、せこい真似ばっかしやがって……相変わらず気持ち悪ィ集団だな」


 間接的で遠回しすぎる邪陰郷の作戦だが、もしそれが成功していた場合、たしかに危険であることは間違いない。

 リゥは四天王の一人であり、前線を張る際の主格でもある。そんなリゥが万全ではない今、アキラまで奪われたとしたら、次は精神的に追いやられ本当に動けなくなる可能性が高い。


「どちらにしろ、報告には行かないとだね」


「俺が行こう。お前らはここでヴォルフの帰りを待ってろ」


「分かった。そしたら報告はゲンに任せる」


「ああ」


 そう言ってゲンは深く腰を落とす。


「――やべっ」


「えっ、なに?」


 それを見たレイとゴウは顔を腕で覆い、リゥも慌てた様子でアキラの顔を寄せる。


「うわっ!」


 突如、猛烈な風が吹き付けられ、その風に押されたアキラが叫ぶ。


「ったく、いきなり飛びやがって……」


「まぁ、ゲンのあれはいつもの事だしね」


「え、なに? なにがあったの?」


「ゲンが飛んだ……いや、()()()、か?」


 突然の出来事に、アキラは目を丸くして辺りをキョロキョロと見回し、驚きと疑問で頭がいっぱいな様子だ。


「ゲンの跳躍力はマジに半端ねぇかンなー」


「ゲアノさんの店があっただろう? ゲンの跳躍力は、たった一度であの山頂にまで登れるくらいのものなんだよ」


「あの山に!?」


 規格外のゲンの跳躍力に、アキラは開いた口が塞がらない。

 標高三千メートル以上とされていたあの山を、たった一回の跳躍で登りきることが出来るゲンの跳躍力。それは、他の四天王の誰にも真似出来ないほどにずば抜けた能力だ。


「まぁ、そんな感じだからあいつは直ぐに戻って来るよ。それに、ヴォルフもそう遠くないうちに戻ってくるだろうから、俺たちは訓練棟に戻ってるとしようぜ?」


「そうだね。元々その予定だったし、リゥとアキラくんにとってはそれが最優先だ」


 そう言って、ゲンとヴォルフの帰りを待つ四人は、ゆっくりと訓練棟に戻る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ