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二度目の四天王ライフ  作者: 羅弾浮我
第一作:〜異世界への突入、『聖陽郷』での波乱〜
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17話:乱入

 会議終了から約六時間後。リゥ、アキラ、ゴウ、レイ、ゲン、クロ、シロの七人は、先刻の話通りファクトリーへと場所を移していた。


「う、わぁ……!」


 大きく開いた目をキラキラと輝かせ、感嘆の声を上げるアキラ。その目線の先には、これまで見てきた中で最も大きい建物が広がっている。

 それは、あれほど大きかった宮廷やリゥの自宅よりもさらに大きく、かなり離れなければ全体が視界に収まらない。


「ここが、ファクトリー?」


「そうだな。聖陽郷で一番大きい学校だ」


 たしかに、これ以上に大きい学校はないであろうと思うほど大きい。


「え、これどのくらいの広さあるの?」


「詳しくは分からんけど、百平方キロメートルくらいは余裕であるんじゃねぇか?」


「百!?」


 アキラの素朴な疑問に、桁外れな答えをサラッと出すリゥ。その規格外の広さに、リゥがゼンジを蹴り飛ばした時よりも驚く。


「え、百平方キロメートル……? それって本当に? ってゆーかどんくらい?」


「いやまぁ、本当かどうかって聞かれたら正確ではないけど、だいたいそんくらいじゃねーかなって。広さもよくわかんねーしなー」


 百平方キロメートルと言えば一般住宅が約四十万、学校などで言ったら十万程入る広さだろうか。

 因みに、リゥの家が数千、宮廷や研究施設が数百入るくらいの広さだ。


「その単位での正確な広さは分からないけど、リゥの言うことは嘘ではないと思うよ。このファクトリーはたしかに聖陽郷でも五本の指に入る人工建築物であるのは事実だからね」


「まぁ、トレーニング施設の他にも座学用の部屋とか研究施設、用具室、医療施設とか色ンな施設が揃ってっかンな」


「まあ、入ってみれば分かるさ」


「そうだな、行くかー!」


 そう言って、リゥたちはファクトリーの中に入っていく。

 ファクトリーはリゥたちの見える範囲では鉄柵で囲まれていて、その中央にある大きな門をくぐり、レンガ造りの道のりに庭園を渡る。庭園には走り込みをしてる人が多い。

 そして庭園を渡りきり、リゥたちは建物内に入る。

 目の前にはかなり広いロビーがあり、頭の良さそうなスーツ姿の人々や強靭な肉体を誇っている人々、研究服のような白衣を纏っている人々など、若い男女が多く、連絡を取っていたり、待ち合わせをしているような人など人の数はかなり多い。にも関わらず全然混雑していないそのロビーの広さは、端から端まで大人が五十人寝そべっても余裕があるほどだ。

 そしてここでもやはり、四天王を囲む者は大勢いる。


「おい! あれリゥさんじゃないのか!?」

「帰ってきたってのは本当だったのか!」

「あれがリゥさん!? 会ったの初めて!」


 一人が四天王にきづいた瞬間、広いロビーに広がっていた人があっという間に密集する。

 それに逸早く気づいたレイが、咄嗟にシロに耳打ち。そして何かしらの指示を受けたシロが素早くその集団から抜け出し、ロビーの受付へと向かった。


「四天王が四人、天使が二人、それから准天使の称号を得た子が一人。計七人で不定期、無期限でのフリーパスを早急に出していただけますか?」


「え、あ、はい。分かりました。今すぐにご用意させていただきます」


 シロが七人の使用許可を申請し、フリーパスを持ってくる。


「クロ、頼むわ」


「荒々しいことは好みませんが、時間もありませんしね。分かりました」


 そう言って、クロはステッキを軽く振る。

 瞬間、周辺の動きがピタリと止まり、一瞬で辺りが無音になる。


「時間を停止させて頂きました。今この世界で動けるのは私たち七人だけですね」


「あぁ! そう言えばクロさんって時間を止められるんですよね!」


 一瞬で無音の世界へと化した空間にキョトンとするアキラを見て、クロが説明。アキラは思い出したように手を打つ。


「時間を止めるだけではないですけど……まぁ、それはいいとして早く行くとしましょうか。このまま止めてるのも申し訳ありませんし」


「お、そうだな。行くか」


 少し含みのある言い方をするクロだが、話すと長くなるのか、それ以上には踏み込まない。アキラも、時を操れるなら他にもできるのだろうと納得し、それ以上は聞かずにただただ歩を進めた。


「これからどこに行くのー?」


「そーだなー……コロシアムにでも行くか」


「コロシアム?」


「あぁ、一対一のタイマン……じゃなくてもいいけど、とりあえず闘い合うところだな。コロシアムにはかなりの実力者がいるから、感覚取り戻すにはもってこいの場所だ」


 そう言ってやる気満々のリゥ。そしてゴウたちも反対は無さそうだ。考えていることはやはり同じなのだろう。


「コロシアムはこことは別の建物だ。敷地は同じだけどな」


 そう言って今いる建物を出て、一度渡り廊下を通りると、目の前には大きな丸い建物がある。


「あれがコロシアム?」


「そーだな。かなり人が多くて歓声とかやばいから覚悟しといた方がいいかも」


「それでは、そろそろ解除しますか?」


「おう、頼むわ」


 そう言って、もう一度軽くステッキを振るクロ。

 瞬間、周辺の景色がパッと動き、一瞬で辺りに音が響き渡る。


「――ッ!!」


 時間が動き出した瞬間、コロシアムの方から咆哮のような歓声が上がる。離れていても分かるほどの熱狂。そんな歓声を聞き、リゥとゴウのテンションが上がらないわけがない。


「おーおー、やってンなー!」


「俺たちも急ごうぜ!」


 そう言ってリゥとゴウが走り出し、リゥに手を引かれてアキラも走る。そんな三人を見て軽く笑い、レイたちもその後を走って追う。


 ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶


 コロシアムに入ったリゥたちは、直ぐに特別観覧席へと案内された。


「ンじゃ、ちっと乱入して来るか!」


「俺も行くわ! アキラはさすがに危ないからここで待っててな」


「え、あ……うん!」


「よっしゃァァァァァァァッ!」


 ゴウの発言に、多少戸惑いながらも何となく流れで返事をしたアキラ。そんなアキラの返事の直後、リゥとゴウは大声で叫び、観覧席からコロシアムの舞台へと飛び降りる。

 土煙を上げ、ド派手に登場したリゥとゴウ。熱狂に包まれていた会場の視線と注目を、一気に集める。


『あーっと! 突然の乱入! そしてその乱入者は――――――! 四天王! リゥさんとゴウさんの二人だァァァァ!!!』


「――――ッ!!!!!」


 突然の乱入者。そしてその正体は四天王の二人。

 こんな豪華な波乱イベントで会場が湧き上がらないわけがなく、これ以上にない程の歓声が上がる。


『コロシアムのルールを変更します! これから参加者の皆さんには四天王のお二人と戦ってもらい、お二人からギブアップを取ってもらいます! ルールは殺さなければなんでもオーケー! 治癒係も準備万端ですので、思い切り戦ってください! ――それでは、戦闘開始(バトルスタート)!!』


「うおおおおおお!!!」


 アナウンサーの戦闘開始の合図があった直後。コロシアムに参加していた全員が咆哮し、鬨の声を響かせて二人目掛けて襲いかかる。


「ゴウ!」


「おう!」


 リゥの短い呼びかけにゴウが短く応える。


炎壊(ディストラクション)!」


 両手を地面に押し当て、ゴウが高らかと詠唱し、両の掌から炎を構成。それを地面に向かって放ち、炎が地面を抉る。

 目の前で起こる光景。それは、この世界における魔法のようなものである。

 そして初めて魔法を目の当たりにするアキラは、目をキラキラと光らせて食い入るように凝視する。


「――な、ぁぁ!?」


 抉られた地面が隆起し、参加者の集団の足場が崩れる。参加者の前陣は一斉に体勢を崩し、一瞬でドミノ倒しとなった。


「もう一丁!」


 体勢が崩れたところにもう一度追撃し、先頭を切っていた集団は壊滅。

 しかし、コロシアムの参加者もそこそこの実力者揃いだ。後方にいた者は瞬時に周りに散り、各方向から攻撃を仕掛ける。


「行けぇぇえええええッ!!」


 全方位に散った参加者が、その中の一人の合図を受けて一斉に攻めてくる。


「後ろ頼んだ!」


「お前もな!」


 リゥとゴウは背中合わせで中央に立ち、お互いに背中を預ける。


「はぁッ!」


 右足で回し蹴りを放ち、そのまま背を翻して二人目にも回し蹴りを放つ。そのまま地面に足を着いてから姿勢を低くし、三人目の足を取る。その直後に一瞬で立ち上がり、それから四人目と五人目の首を両腕でフックして後ろに倒す。

 数十人の一斉攻撃を、二人は先頭から順番に数回の攻撃で素早く片付けて行く。一撃で確実に急所を突く攻撃、そのための予備攻撃、軽い攻撃の連発。

 身体が不完全なリゥも、戦い方は身体が覚えているのだろう。体力の消耗を抑えて決定打を放つ動作には、無駄を殆ど感じさせない。

 そんな華麗な闘いを繰り広げている後ろでは、ゴウがド迫力の闘いを繰り広げている。

 一人目の顔面を殴りつけ、その相手が吹っ飛ぶ瞬間にその両足を鷲掴み。ジャイアントスイングの要領で振り回し、数人を巻き込んで吹っ飛ばす。

 洗練されたリゥの華麗な攻撃と、見ていて清々しいゴウのド派手な攻撃に、観覧席の熱狂は今まで以上に高まる。


「ゴウは当たり前として、リゥも戦い方は忘れてないようだね」


「元々が天才だったからな」


「リゥくんって、やっぱり強いんだ……」


 リゥの戦いを見て、レイ、ゲン、アキラの三人は各々の感想を持って感心する。

 レイとゲンはリゥの復活を改めて噛み締め、アキラはリゥの強さを改めて認識する。


「そうですね。リゥ様は本当にお強いですよ」


「リゥ様が本来の身体を取り戻すことができた場合……いえ、そうでなくてもでしょうけれど、必ずアキラさんのことも守ってくれるでしょうね」


 四天王だけでなく、天使からも絶対的な信頼を得ているリゥ。

 たしかに本調子ではない状態であの人数をあれだけのスピードで相手をするのが、どれほど難儀なことかは素人のアキラでも十分に理解できる。


『あーっと! あれだけいたはずの挑戦者が全滅! 圧倒的なパワーとスピードで四天王の二人が圧勝してしまった!』


「もう終わったのか。あの人数をあれだけの速さで倒すのは、やはり二人とも流石だね」


「治癒隊の苦労が目に見えるな」


「いや、それがな? 結構優秀な治癒師が多く集まってるみたいで、結構早いんだよな」


「まぁしかもかなり手加減したし、大怪我してるやつはいねーだろ」


 そう言ってレイたちは、フィールド内からそのままジャンプで戻ってきた二人と話をしている。


「どーよ、アキラ。かっこよかったっしょ?」


「そうやって言わなければかっこよかったのに……」


 褒めてもらいたかったリゥはドヤ顔で自らアキラにアピール。しかしそれは吉と出ず、アキラの反応に「えー」っと頬をふくらませながらリゥは不貞腐れる。


「でもまぁ、かっこよかったと思うよ。あれだけ強いんだもん」


「お、まじ? へへ……改めて言われるとなんか照れるな」


 不貞腐れるリゥに、アキラは素直な感想を伝え直し、それを聞いたリゥも満足そうに笑みを浮かべる。


「あれだけ戦えたのでしたら、体も少しは解せましたよね? そろそろお休みになられた方が良いのでは?」


「そうだな。結構日も暮れてるし、ここって寝るところあったよな?」


「ええ。先程確認しておきました。普通に空いているそうですよ」


「ンじゃ、今日はここで泊まりだな」


 そう言って七人はコロシアムから出て、寝泊まりができる個人室がある建物へと向かう。

 そしてやはりここでも、リゥとアキラは同じ部屋を選び、レイとゲンとゴウで同じ部屋。シロとクロで同じ部屋。計三部屋を借りることにした。


 そうして、タイムリミット二ヶ月の初日が幕を閉じる。

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