16話:タイムリミットは二ヶ月
邪陰郷が潜んでいると思われる迷い森。その森への突入は、二ヶ月後と決まった。
本来ならば直ぐにでも突入したいところではあるが、リゥの身体がまだ不完全な事から、二ヶ月の期間を設けたのだ。
突入班が決まり、残る者は防衛班。そして突入は二ヶ月後。その内容が決定され、会議は終わった。
「いやー、流石にゼンジさん蹴り飛ばした時はビビったぜ? ンな所で乱闘始まったら俺らはどっちに付きゃァいいか分かンねーしな」
「まぁ、本来ならゼンジさん側に付かなければいけないのだろうけど、あの場合は僕も判断に困るよ。ゼンジさんの言葉にはアキラくんへの軽蔑のようなものがあったしね」
「あの場合、俺はリゥに付く」
「私たちは、どちらにも肩入れできなかったような気がします。しかし、先程のゼンジ様の言葉は引っかかるものがありますね」
と、先程の会議であった乱闘騒ぎの話をするのは、会議を終えて宮廷を歩いている四天王と天使たち。いつもの七人だ。
あのまま乱闘が始まった場合、四天王や天使は立場上、主郷であるゼンジに付かなければいけなかった。しかし、心情的にはリゥに付きたいのが実のところだ。
「アキラくんに放った不必要なまでの侮辱的発言。あれが、単に作戦を成功させたかっただけで出てきたものなのか、他に理由があるのか……」
「最後まで挑戦的だったし、何か別の理由があンじゃねーのか?」
顎に手を当てて考え込むレイに、ゴウは頭の後ろで手を組みながら直感で推測する。
「どっちにしろ、アキラへの侮辱は許さねぇ。邪陰郷の本拠地を丸ごとぶっ潰して吠え面かかせてやるよ」
体の前で拳を合わせ、好戦的な態度を取るのは、先の会議でゼンジを蹴り飛ばしたリゥだ。
会議の最中も会議が終わってからも、リゥの怒りは全く収まっていない。
「まぁ、お前に協力するって言ったしな。それにゼンジさんの吠え面も見たくないわけじゃねぇし、邪陰郷の奴らは全力でぶっ潰してやるか」
「俺も協力しよう」
「僕は防衛班になってしまったから、そこでの協力は出来ない。だからこっちは僕に任せて、安心して戦ってきてくれ」
「おう、サンキュー! アキラも、頑張ろーな!」
「うん!」
思ったよりもゼンジとの対立に不安を感じていない四天王。
それは、リゥたち四天王の団結力に安心感があるからだ。ゴウやレイ、ゲンの後押しで、リゥは不安などなく、それどころかアキラを認めさせるためにかなり前向きだ。そして、そんなリゥの強い意志を感じ、アキラも不安など感じず、リゥの元で安心していられる。
やはり、昨夜の四天王の会談、その後のアキラとのスキンシップがかなり有効だったのだろう。
「それで、この後はどう致しますか? リゥ様の身体を慣らされるのでしたら、ファクトリーの方に行くのが一番かとも思いますが」
「ふぁくとりー?」
新しくでてきた新単語に、アキラは首を傾げる。
「ええ。ファクトリーとは、今ではSHCなどの機関に入ろうとしている人たちが集う場所です。まぁもっとも、今回の戦いで邪陰郷を殲滅させられればSHCは解体されますが。しかしそれでも、SHCに入らなくても、陸軍や海軍、空軍、防衛軍などの軍隊に入る人もいますね。治安の維持や改善などの活動に取り組みたいと望む人々が身体を鍛えたり、知識をつけたりする場所です」
「まぁ、向こうの世界で言えば学校とか、専門校みたいなもんだよ。肉体強化がメインの学校みたいな感じだな」
肉体強化がメインの学校であるファクトリー。そこには、治安維持などの活動に興味を持つ人、または災害や内戦などで親を亡くし、孤児となってしまった子どもたちが集まる場所でもある。
年齢制限はなく、希望すれば誰でも入れる場所であり、授業のように教官がつく場合や、自主トレ用の施設もある。
「まぁ、あのファクトリーの方針は『来るものは拒まず去る者は追わず』の精神らしいかンな。何よりも生徒の自由を優先するところだ。休みたいなら休めばいいってなってる」
「そんな甘くて大丈夫なんですか?」
「どっちにしても基準値を満たしていない奴は切り捨てられるから問題ないんだよ。第一、そこに入ろうと思う人たちはそれなりに覚悟とか持ってるからな」
確かに、そのような学校なら生徒個人個人の意思も高いだろう。
「まぁ、とりあえず行ってみるか。俺も身体を慣らしたいし、二ヶ月あればアキラもそこそこ鍛えられるだろ」
「うん! 俺も、リゥくんたちの足を引っ張らないように頑張る!」
リゥたちと共に迷い森へ行くまで二ヶ月。アキラの実力不足は明白であり、少しでも鍛えておく必要がある。それはアキラも十分に自覚していて、二ヶ月後に向けてやる気満々であった。




