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-3-

かなり早い夕飯を食べた後、


「俺、駅のコインロッカーに荷物預けてるから


 取りに言って来る。


 でさ・・・合鍵もついでに作って来てもいい?」


と綺羅人が言った。




「あ、そうだね。合鍵ないと困るもんね。」


あたしは部屋の鍵を綺羅人に預けた。




「ありがと・・・じゃ、行って来る。」




「うん、いってらっしゃい。」


こんな風に誰かをこの部屋から送り出すのは何時振りかな?


あたしはふとそんな事を思いながら綺羅人を玄関で見送った。






2時間後―――。


綺羅人が帰ってきた。




「ただいまー。」




「おかえりー。」


そして、こんな風に玄関で誰かを出迎えるのも久しぶりだ。






―――時過ぎ、そろそろいつもの寝る時間になった頃。




「綺羅人・・・何やってんの?」


ベッドの中でにやにやしながらあたしを待ち構えている綺羅人を発見した。




「何って、もちろん一緒に寝るんでしょ?」




「はぁっ!?」




「だって、俺可愛いペットじゃ〜ん♪」


綺羅人はそう言って可愛らしい笑顔であたしの顔を見上げた。




う・・・


この笑顔・・・また流されそう・・・。




いやいやいやいやいやっ!


ダメでしょっ!?




「な、何言ってんのっ、綺羅人はソファーで寝るのっ!」


「えーっ!?」


「当たり前でしょっ!」


「俺、ペットなのにぃー?」


「普通のペットなら一緒に寝るけど、綺羅人は人間の男の子でしょっ。」


「えー、でも昨日は一緒に寝たじゃん?」


「そ、それは・・・綺羅人が離してくれなかったから・・・


 と、とにかくっ、綺羅人はソファーで寝て。」


「どうしてもー?」


「どうしても。」




「はぁ〜い・・・。」


綺羅人は渋々ベッドから出て、ソファーに寝転んだ。




「はい、コレ毛布。」


あたしが毛布を持っていくと無言で受け取り、


ガバッと頭からかぶった。




あらあら、拗ねちゃった。




でもねぇ・・・確かに昨日は一緒に寝たし、


あたしのベッドはダブルサイズだから綺羅人と一緒でも


狭くはないけど・・・


一応、“成人男性”だしね?




「おやすみ。」


あたしがそう言うと綺羅人は毛布をかぶったまま「おやすみ。」と言った。






・・・クシュンッ!




綺羅人のくしゃみで目が覚めた。




何時だろう?




時計を見ると2時半。




寒いのかな?




綺羅人の方を見ると、やっぱり寒いのか毛布にくるまって丸くなっている。




ホント、猫みたい・・・。




季節は4月に入ったばかり・・・さすがに毛布一枚じゃ寒いよね・・・。


そんな事を思っていると綺羅人がまたくしゃみをした。


しかも今度は連続3回。




このままじゃ風邪ひいちゃうな。




「綺羅人。」


あたしは綺羅人に近づいて小声で名前を呼んでみた。




「・・・ん・・・?」


綺羅人は寒くて半分目が覚めていたのか


あたしの声にすぐ反応した。




「ベッド入っていいよ。」




「・・・え、いいの・・・?」




「だって、寒いんでしょ?風邪ひいちゃう。」




「やった♪」


綺羅人は体を起こすと毛布にくるまったままベッドに入っていった。


そしてあたしもベッドに入ると、


「んー、やっぱベッドの中はあったかいなー。」


と気持ち良さそうに目を閉じたまま笑った。




「おやすみ、仔猫ちゃん。」


あたしがくすくす笑いながら言うと、綺羅人は


「おやすみ、ご主人様♪」


と言いながら少しだけ擦り寄ってきた。




こうして、あたしと人間だけど“仔猫”の綺羅人の生活が始まった。

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