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九話


「なあ、せっかく明日休みなんだし、遊びに行こうぜ?」


 親友の山川が最後のホームルーム前に気さくに話しかけてくる。


「まあ、いいけど。どこ行くの?」


「うーん、どうしよっかな。この前はゲーセン行ったし……」


「決めてなかったのかよ……」


 こうやって山川が遊びに誘ってくれるのは、正直うれしい。ずっと塾に行って勉強するだけの毎日では、心が先につぶれないか心配になる。その辺りで気を使ってくれるのはとてもうれしい。


「今日は練習あるし……今日の夜か、明日には連絡する」


「僕は塾あるから、返すのは十時ぐらいになるからな」


 そんなことを言っていると、最後のホームルームが始まった。個人的には何も聞く必要のないもので、軽く聞き流し、帰る準備を始めた。いつも通り、廊下をから階段に行き、昇降口まで行って、靴を履き替えれば帰れた。けれど、一人の生徒が邪魔をするように声をかけてきた。


「ねえ、どうして帰るの?」


 土田佳奈美、一度塾で一緒に授業を受けてから、距離が近い。の僕的には、あまりかかわりたくないタイプの人間だ。


「帰ったらまずい?」


 会話はしているが、目線を合わせず、帰るために上履きを下駄箱にしまい、運動靴をたたきに落とす。


「ええ、合唱コンクールに勝てなくなるわ」


「ふーん……じゃあな」


 心底どうでもいいことを聞き流し、靴を履き昇降口を出る。テキトウに手を振り、さよならのジェスチャーをするが、ちょうど昇降口を出たところで鞄を掴まれた。


「何?」


 合唱コンクールという言葉が出てきて、僕は相当イライラしていた。そのため、かなり高圧的な声だったと思う。


「ねえ、なんで逃げるの?」


 ここで、帰るの。ではなく逃げるのという言葉を使うのは、直感的に何かを感じ取っている。そう僕には思えた。


「今日は塾。宿題も多くて、帰ってやらなきゃいけない。これでいいか?お前も部活行けよ」


 大したいいわけではない。けれど、事実ではある。優先しなければいけないことがある以上、そっちを優先したい。


「……」


 返事はなかった。そのまま僕は昇降口から逃げるように家に帰った。この学校は部活への参加は強制である。一部の人間がほかのチームなどに属していて、免除されていることもあるが、ほとんどの生徒が属している。そして合唱コンクールが迫っているので、この時間に帰る生徒は俺以外ほとんどいなかった。


 遠目に野球のグランドを見ながら、僕は学校を去った。家に帰っれば、着替えて、塾の宿題をして、そして塾へいった。合唱コンクールの言葉を消すようにストレスをぶつけ、問題を必死に解いた。宿題はギリギリに終わり、塾へは必死に自転車のペダルを回し向かった。



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