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人間回帰怪譚  作者: 柳 山茶
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8.裁きの日

「ただの見間違いじゃないのか?」

「だよね。本当だったとしても、試合が近くてピリピリしてたとか?」

 翼と理子が、彰先輩の様子は例の事件とはさも関係ないかのように意見する。美優もそう思った。彰先輩のそんな顔は見たくないと思った。


――その時だった、


「――きゃああぁぁぁっつ!!!!!!」

 複数の女子の叫び声が重なるようにグラウンドに広がっていく。声の発生源はすぐ近くだった。美優たちと同じ目的、つまりサッカー部の練習を見に来きていたミーハーなファンの女の子達だった。

 すかさず首だけで隣を向くが、どうやら女の子達の間で何かがあった訳ではないようだ。俯いている子が幾人かいたが、目を見開いている子達の視線は全て前を向いていたのだ。

 その視線の意味を悟り、美優もその子達と同じ場所を見つめようと、さっと再び前を向く。


――グラウンドの真ん中に赤色が見えた。

 それは鮮やかに砂の上を広がり、じわじわとこちらまで浸食しそうな勢いであった。時間が遠く感じられるようにさえ思えた。食い入るようにその色を見つめていた気がする。

 しかし、直後顧問の先生やチームメイトによって赤は隠され、駆けつけた大人達によって場は収められた。すぐ下校するようにと命令され、生徒達はその場を後にした。


 美優は、家に帰るなり通学カバンから携帯を取り出す。

 大人しくしていろとは言われたものの、その探求心は皆同じように止められなかったに違いない。

 グループトークは、次々と更新され文字の塊が上から下へとものすごいスピードで流れていく。なんとか情報を繋ぎ合わせると、何が起こったのか大まかなことは分かった。


 美優が見た赤色は、サッカー部の副キャプテンである坂井先輩が大怪我をしたことが原因らしい。その時、サッカー部の練習内容は模擬戦で、坂井先輩がボールをパスしようとした直後に背中が一瞬にして赤くなったという。それに、気付いた女子が悲鳴をあげた。それと、かすかに聞いたバタンという重めの音は、坂井先輩か地面に膝から崩れるようにして倒れた音だという。



「それで、その坂井先輩の怪我の話をしたということは、彰先輩とやらの手紙と関係があるのよね?

 3枚目の手紙はどこにあったのかしら?」

 じっとこちらを見つめ熱心に話を聞いていた灯華が口を開いた。

「はい、私達は関係は確実にある、と思っています。

 手紙は彰先輩の、、、、、、。彰先輩の、部室のロッカーの中にありました。

 着替える時に見つけたそうで、近くにいた部員もその手紙を見ています。その後果歩先輩から情報が回ってきました」

 理子が、その時の様子を思い出したようで低めのトーンで答える。

「手紙の内容は?」

「また真っ白な用紙で、これがその画像です」


 そこには、やはり1枚目、2枚目と同じような可愛らしい文字が並んでいた。

 “正義の裁きは下されました。

 これが2つ目の奇跡です。

 神を見る者“


「警察にはもちろん、連絡したのよね?」

「はい。さすがに怪我人もでましたし、、、、、、。

 ただ、怪我をした瞬間を見た部員とファンの子達に事情聴取をしてたみたいなんですが、

 皆声を揃えたかのように同じことしか言わないから、きっと捜査が進んでないんだと思います」

 そう、皆言い方は違えど、最後にこう言ったのだ。


――坂井は、何もないところから現れた刃物に切られたようだったと

 あれは一体どういうことなんとだと


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