5.ファンレター
「私は倉本 美優と言います。洋慶高校の2年生です。
そして、、、、、、」
「多賀 翼です。美優と同じく2年生です」
「岡田 理子です。2年生です」
ことの始まりは、4月に入り学年が上がった直後のことだと言う。
3人は1年の頃体育の授業などで会話したことはあるものの、友達とまではいかなかった。
しかし、あるツールを使ってお互いの存在を日々認識していた。
それが、、、、、、
――携帯を媒体としたトークグループ 「彰先輩ファンクラブ」
彰先輩は文武両道を体現したような爽やかなイケメンで、人当たりもよく男女問わず人気があるそうだ。美優達が昨年入学した頃には既にそのファンクラブが存在していた。
私の方が最初好きになったのだとか、私のことを好きなんじゃないとかと言った争いを避けるため自ずと出来たのがそのグループだ。互いに抜け駆けを防ぎ、彰先輩に関する情報を共用するのに都合がいいらしい。
本人にとってははた迷惑な話かとは思うが、驚いたことに最初に発案したのは彰自身だったそうだ。
彼女達は、寝る前のちょっとした時間にそのグループを利用する。今日の彰先輩はここがかっこよかったといったエピソードだとか、彰先輩と一緒のクラスの3年の女子はクラス写真を載せたりとか各々思い思いの使い方をしていた。
美優は見るのが専門だったためコメントをすることは稀だったが、ある日不思議な写真が一枚投稿されているのを発見した。
投稿者は彰先輩と同じクラスの果歩先輩。彼女が写真を載せるのが特に好きなことは知っていたが、その日はおかしかった。
“ねえ、この手紙を彰君に送ったの誰だか知ってる?”
その一文の下に添付された写真には一枚の手紙。罫線の引かれた紙の色は真っ白で、そこに鉛筆で可愛らしい文字が並んでいるようだ。
――誰か抜け駆けして彰先輩にラブレターでも送ってしまったのだろうか?だとしたら、揉め事がおきてしまうんじゃ、、、、、、
美優は明日からの学校生活が不安になったが、内容が気になりその写真をタップした。徐々に画像が読み込まれ、スマホの画面いっぱいに表示された。
「えっ、、、、、、?」
思わず声が口から漏れた。
――その手紙の内容は常軌を逸するようなものだった。
“彰先輩へ
いつも私、彰先輩をずっとみていました。そんな大好きな彰先輩にどうしても伝えたいことがあるんです。
実は昨日、夢でお告げを聞きました。
なんでも、彰先輩は天使に選ばれたそうなんです。そして、このことを彰先輩にも伝えるように言われました。
その証拠として、彰先輩にこの手紙が届いた日の翌日から7日間、彰先輩の周りで奇跡を起こすとのことです。
なんて、素敵なことなんでしょう、、、、、、。
これからも、大好きです。
あなたのファンより“