2.和風喫茶
彼女は華やかであった。決して宝石のような光る類の装飾品を多く身に着けているだとか、顔立ちがくっきりしていて芸能人並みだとかという華やかさではない。
つい目を止めてしまうような、鮮やかな花に似た存在感があった。
背丈は高校生の彼女達と同じくらいかそれより低いくらいだろうか。落ち着いた紅色に淡い牡丹の花が散りばめられた浴衣姿の上から一回り大きい紺色の打掛を羽織っているが、その裾は床擦れ擦れを行ったり来たりしており、草履が時折垣間見える。
容貌は例えるなら日本人形と言ったところだろう。幼さもあり、女子受けする目鼻立ちの作りである。胸元まで伸びた黒檀色の髪は綺麗に切り揃えられている。
「皆様、私を指名されたということは集会への参加をご希望なのでしょうか?」
灯華の問いに対し、こくり、と三人の少女の首が揃ってゆっくり前方へと傾いた。
「まあまあ!本日は吉日となり得ましょう。
では、こちらへ。奥の部屋へとご案内致します」
灯華の元々感じの良かった朗らかな顔つきに、笑顔が表れた。その様子に、少女達は少し安堵し距離を開けながらではあるが店主の後ろをついて行く。
外観は普通の喫茶店であったが、店内の装飾はフローリングの上に和風小物と西洋のアンティークが入り混じり、窓に散りばめられたステンドグラスが不思議な空間を演出していた。
どちらかと言えば、西洋風であったが灯華や助手の恰好、そして筆で書かれたメニューの内容から察するに和風喫茶の方が正しいのかもしれない。テーブルや椅子の間をすり抜け、厨房入口であろう暖簾の更に先に曲がり角が見えた。そこを右へと曲がった直後に、扉が視界いっぱいに広がる。
その、奥へと通じる扉を開けた時その憶測は確信へと変わった。
ぎぃ、と少し重めの木特有の音を立ててその扉を開いた途端空気が変わった気さえするであろう。履物を脱ぐための簡易な石畳みの玄関の上に続いている床の素材は喫茶店内と同一の木で出来てはいるものの、踏みしめられた年数の違いが素人目でも伺える。
――喫茶店の奥には、扉一枚を隔てて日本家屋が存在していた。