プロローグ
私は人間なのだと誰が証明してくれるのか?
私自身の思い込み?
科学的な遺伝子の根拠?
それで満足なら幸せものだ。私はまだ当分見つけられそうにない、、、、、、。
――春になりかけの薄ら寒い季節の朝、布団の中で目覚ましを探しながらもぞもぞと芋虫のように動く。
時刻は7時3分、、、、、、。
あぁ、また目覚ましが鳴る前に目が覚めてしまったようだ。
こんな時間にお客さんはくるまいと、布団から出ることなく天井を見つめる。そしていつもと同じ問いを自分自身へとかける。
「私は本当に人間か?」
寝起きの少しかすれた声と横になったままで発声したためか、思っていた以上に小さな声が口の端から漏れた。そして、これもいつものことなのだが、この聞き取れるかどうか怪しい音量に答えるものがいた。
六畳一部屋の和室のふすまに挟まれた隣の部屋からそれは答える。
「あぁ、君は君が思っている以上に人間だ」
安心するような、少し低めの優しい声色で私に対するようにはっきりとした物言いをした。
「ありがとう、佐古屋」
私も先程よりほがらかな声色で返す。
――これが、私の一日の始まりだ。