#005 使徒への転生
もう少し話が進んだところで間章と人物の振り返りをを入れます。
登場人物が多くなってくるので、そこで整理をしていただけたらと思います。
話は変わりますが、最近、とても寒いですよね?
「ほっ本当だ。一つ足りない……」
店主さんも驚いていた
消えていた『使徒への転生権』は先日、第七使徒ミストを倒したときにゲットしたものであった。
アイテム説明も役にたたないから、期待していたのだが……。
「店主さん。どういうことですか⁉︎」
「私にも何が何だか」
この様子では店主さんも状況の把握ができていないらしい。
「あれ?なんかクラクラする」
トウマは不意に意識を奪われて地面に倒れこむ。
「お客さん…お客さ…お客…」
だんだんと目の前が暗くなっていった。
なんだろう。このデジャブ感。
◇◇◇
「お久しぶりです。トウマ様」
目がさめると、見覚えのある白い空間に聞き覚えのある声が聞こえる。
ここはトウマが異世界に転生した場所であった。
「その声はあのときの──」
「私のことはドールとお呼びください」
「ドールさんですか」
「さんは入りません。ドールで結構です。さて、時間がないので本題に移ります。トウマ様は現在、第七使徒ミストの討伐に成功されています。これにより、使徒へ転生する権利が与えられました。転生しますか?」
「使徒になった場合に何か変化することってありますか?」
「亜人種たちの言語が理解できるようになります」
亜人種。ミカさんから聞いていた情報の中にそんなものがあった。
エルフやら獣人やらがたくさんいるとかなんとか。
「転生します!」
トウマは言い切った。
亜人種たちとの交流。そんな興味をそそるものはない。
「では、前回と同じようにお願いします」
:使徒に転生しますか?:
:YES or NO:
「YES.転生します」
「かしこまりました」
今回は青い光がトウマを包んだ。
◇◇◇
「お客…お客さ…お客さん!」
「も、戻ったのか⁉︎」
「お客さん!大丈夫でしたか?急に倒れこんでビックリしましたよぉ」
「すっすいません。ちょっと最近、貧血気味でして」
「そうなんですか。気をつけてくださいよ。で、先ほどのアイテムなのですが、弁償させていただきます」
「いえいえいえいえ!大丈夫です」
弁償してくれるって言ってもな。
実際は、もう使用されていて、ぼくが使徒になっているなんて言うわけにもいかないしな。
「ですが、店の信用にも関わります。この件も含めて、金貨10枚と銀貨50枚で買い取りましょう」
「金貨10枚⁉︎」
先日のミカさんの話には通貨のこともあった。
価値は上から順に、
・金貨
・白金貨
・銀貨
・白銀貨
・銅貨
100枚ごとに一つ上の硬貨になる。
よく、白金貨の方が金貨よりも価値が高いように思われがちだが、実際は違う。
白金は金と銀の混じり物であるため、不純物というイメージが強い。価値は、金貨の下で銀貨の上。
日本で言う、2000円札というところだろう。金貨は額が高すぎて使う人が少なく、銀貨は丁度いいぐらいでわざわざ白金貨を使う理由もない。
「そんなにいただけませんよ」
「そう、おっしゃらないで下さい。どうかお納め下さい」
──その後。
店主さんの圧に負けてしましい、金貨10枚と銀貨50枚で売却した。
総額にして、約家一軒分の大金を手にいれることになった。
◇◇◇
「宿泊費を払ってしまうと王都で何かと不便になるかもしれない」とミカさんに言われて宿泊費を払うのは仕事の終わった頃に払うことになった。
宿泊費を払わなかったために、大金をそのまま手にしたトウマは一人で市場を歩いていた。
「まずは服を買わないとなぁ」
なにせ服がこの厨二臭い黒服しかない。
王都に行くのだから多少はマシな格好をしなければ。
たくさんの店があったがまともな服を売っている店はほとんどなかった。
仕方がない、とトウマは市場を後にし、行きにチラッと見かけた洋服店に足を運ぶ。
「すいませーん。洋服が欲しいんですけど」
「いらっしゃい。洋服ね。どんなのがいいかしら」
快く出迎えてくれたのエプロンを腰に巻いた老婆だった。
「そうですねぇ……とにかく派手じゃなくて動きやすい服でお願いします」
「派手じゃなくて動きやすいね。探してくるから待ってなさい」
そう言うと老婆は裏手の倉庫へ向かった。
あたりには、たくさんの服が置かれていた。ドレスにシャツにスカートにパンツになど。このパンツはズボンの方ね。
こうして見るとなかなかの品揃えだ。
「あったわよ。こんなのどうかしら」
「これ──ですか」
老婆が差し出したのは、いわゆるタンクトップ。
確かに動きにくくて派手じゃない。でも、でもね、筋肉0の俺がこんなの着たら……想像するだけで恥ずかしい。
「他にはありませんか?」
「他?ならこれはどうだい!」
次に老婆が差し出したのは、『痛快!』と書かれたシャツだった。
痛快!って何だよ。バカにしてんのか?
「……」
「驚きすぎて声も出ないかい。これはねぇある貴族に書いてもらった一品なんだよ。ツ・ウ・カ・イって読むらしいよ」
ミカさんによれば漢字は王侯貴族でしか理解できないらしい。
痛快は明らかにバカにされているようだけど、本人が嬉しそうに自慢するんだからそっとしておこう。
「他のありますか?」
「これでもダメかい。ならこれしかないね」
最終的に老婆が差し出しのは、某、ユ二◯ロにあるような真っ白なシャツとチノパンのようなパンツだった。
しかし、よく考えると、これも周りの人から見ると浮いているのではないだろうか。周囲の人の服装は洋服と言うようりどこかの民族衣装のようだった。
やはり時代設定がズレているような。
「これ買います」
「そんなのでいいのかい?」
「これを3セットとそこにある下着を5セットお願いします」
「はいよ。合計で金貨1枚と銀貨30枚ね」
なるほど。
洋服を着ている人を見かけなかったのは高いからか。
「どうぞ」
「毎度あり!またのお越しをー」
ミカさんからもらった、旅行用の大きめのバッグに買った着替えを詰めて店を出る。
この後は、寄り合いギルドで職を申し込みに行かなくちゃいけない。
◇◇◇
「公爵の執事をお願いします」
「かしこまりました。では、身分証明書を提出して下さい」
「みっ身分証名書ですか……」
「お持ちでないですか?でしたら、このギルドで発行しますが、この村の補償人となる方がいなければ発行は出来ません」
予想外の身分証名。
お試し転生でこの世界に来ている高校生です、と言えるわけもなく。補償人になる人もミカさんぐらいしか心当たりがないが、何度もお世話になってるからなぁ。
「私がなりましょう」
そう言ったのは見覚えのない小さな女の子。
容姿は幼いながらも整っていて、将来を約束された美少女と言う感じだ。
声はとても大人びていて、その風格から気品を感じる。
「あなた様はキルカ様⁉︎なぜこんなところに」
「え?え?どちら様?」
「ちょっと町を見に来たついでよ。そこの男の人。私はモノロイド公国・第3公女、キルカ・ドラーノ・モノロイドと申します」
「こ、公女様⁉︎でも名前は漢字なんじゃ……」
「樹瑠夏って書くの」
「あぁそういうオチか」
「オチってなんですの?」
「いえ、聞き逃してください」
「そう。さっきも言ったように私が保証人になります。せっかく執事が久しぶり現れたのですから」
「か、かしこまりました!今すぐ発行してまいります。お名前と年齢をお書き下さい」
身分の保証人が明らかに自分よりも年下の女の子というのは、かなり気がひけるが仕方がない。
トウマはペンを使って自分の名前を漢字で書いた。
「漢字が書けるんですの?」
「えぇまあ」
「あなたは貴族ではないのですよね?どうして漢字が書けるのですか?」
「高校生だからです!」
「コ・ウ・コ・ウ・セ・イ?」
「いえ、気にしないで下さい。口が滑りました」
危うく転生者とバレるとこだった。調子に乗りすぎだな。
自分を戒めると共にこれからは漢字は使わないことにしようと決意した。
バレるとまた面倒だしね。
「コバヤシ・トウマ様ですね。身分証明書の発行と寄り合いギルドの登録を行いました。これより、あなたの身分は寄り合いギルドと保証人であるキルカ様が保証します。しかし、この証明書を紛失されてしまうと再発行には3ヶ月かかるのでご了承ください。では、どうぞ」
「ありがとうございます。助かりました。キルカ様もありがとうございます」
「じゃあ早速、王都へ向かいます。準備の方はよろしいですか?」
「はい。問題ありません」
トウマの身分は王族が保証人のこともあり、基本的な公国からのサービスを受けられるらしい。
何度も言うようだが、福祉サービスまであるのは時代設定がズレている気がする。
戸惑いながらも、キルカ様の後をついて行き、そのまま馬車に乗る。
「馬車に乗るのは初めて?」
「お恥ずかしながら」
「初めはお尻が痛くなるから、あまり無理しないでね。もし、きつくなっても横に倒れてはダメよ。その時は馬車を止めるから言ってね」
細かいところまで配慮ができている。とてもいい育て方をされているのだろうなぁ。
やはり、王族となると様々な才に恵まれているのだろうか。どちらにせよ、自分とは住む世界が違う。
そんなことを考えていると。
「──……っ」
「酔った?」
「は、はい」
合図をだして馬車を止める。
アストむ村から王都までは、普通の馬車で2日。これは王族専用の特急馬車だから、半日で王都に着くとのことだった。
残り時間もなかなか地獄だ。
トウマは元の世界で乗り物酔いを体感したことがなかった。ひょっとしたら自分は酔わない体質なのかもすれないとまで思えたが、馬車はダメだったみたいだ。
──5分後。
「出発して下さい」
キルカ様の合図で馬車が再び動き始める。
うっと襲う吐き気をぐっとこらえて平常心を保つ。
「キルカ様は……」
「様はいらないわ。私は第3王女だしプライドも高くないしね」
「そうですか。ではキルカさんは……」
「さんもいらないわよ。これから2週間は私に使えてもらうのだしね」
「いえいえ、そんなとではいけませんよ」
「いいって言ってるの!話を聞きなさい」
少し頬を膨らませていることからムキになっているのがわかる。大人びていても、まだ子供のような部分もあるらしい。
可愛らしい仕草にトウマは安心していた。
「……じゃあキルカ」
「なぁに?」
「君は何歳?」
「14歳よ。少し背は小さめだけどね」
少しハズレていたが、キルカの年齢はほぼ予想通りだった。歳の差は4年になる。
しかし、14歳でここまでしっかりなるものか、14歳って言ったら普通は思春期真っ盛りだよな。
経験論で言うと、トウマの14歳はなかなかにハジけていた。自分と照らし合わせると自分が惨めで仕方がない。
「着いたわよ」
キルカの声で目を覚ます。
お尻を含めて体が痛いが、先程よりはマシになった。
あの会話の後、直ぐに寝たらしく目が覚める頃には大きな王城の中にいた。
「ようこそモノロイド公国へ。楽しんで、とは言えないけど、2週間よろしくね!トウマ」
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