#001 始まりは意外と平凡
展開の早さを武器にしたいです。
誤字脱字などの報告、又は文法の誤りなどがありましたら感想にお書きください。
いきなりだが、高校最後の夏。いつものように小説を書いていたぼくに一通のメールが届く。
『弊社のゲームに小林様の小説の内容を、世界の全てを記した手帳を取り入れてもよろしいでしょうか?』
やけに短いメールを要約するとゲーム化だった。書籍化ではないにしろ、ゲーム化だった。
しかも、この小説をゲーム化するわけではない、『世界の全てを記した手帳』この手帳をゲームに登場させたいということだった。
そんな些細なことでも、ぼくは嬉しかった。自分の作ったものが人に評価される、これがたまらなく嬉しかった。聞けばゲームを無料でくれるという。断る理由が見つからないと、すぐに了承の連絡をした。
◇◇◇
3週間後の朝『ピーンポーン』と家のインターホンが鳴る。
「宅急便です、小林さんいらっしゃいますか」
「はーい。ありがとうございます」
軽く返事をして荷物を受け取ってからドアを閉める。
「荷物はなんだ?」
ダンボールの箱を見ると・REG株式会社・と書いてあった。
「REG」聞き覚えのある言葉だった。
そうか、あのゲーム会社か。もうゲーム完成か〜早いもんだな。
机の上にあったカッターでダンボールを開けた。そこには手紙と小さな箱があった。
手紙には、『小林様、弊社のゲームの開発にご協力いただきありがとうございました。ゲームが完成しましたのでお送りいたします。ゲーム名はネクストワールド・オンラインこちらのゲームは最新版ですので箱に触れてゲームスタートといえばゲームが開始されます。』とあった。
ゲームはこの小さい箱なのか、まあやってみるか。
言われた通りに小さな箱(ゲーム機)に手を触れて言う。
『ゲームスタート』
目の前が急に暗くなり、何も見えなくなった。
◇◇◇
「これよりキャラクターメイキングを行います」
気がつくと真っ白な空間に立っていた。やけに機械っぽい声が聞こえる。
「ここどこだ、確か家でゲームを始めたはずだ」
「ここは、箱の中です」
「箱?」
「はい、ゲーム機の箱です」
「え?じゃあゲームの中に入ってるのか?最近のゲームって凄いな」
機械っぽい声が質問の回答してくれる、こんな異常な状況を東舞は理解していない。
なにせ、小説に夢中で他のことに興味を示さなかったためにゲーム自体が数年ぶりだったのだ。 何が起きも「ゲームだから」で説明がついた。
「ニックネームはコバヤシトウマでよろしいですか」
東舞の前に選択肢が現れた。
:YES or NO:
ん?ニックネームがコバヤシトウマってことか?長いな。
「NO.トウマでいいです」
「了解しました、ニックネームはトウマで登録しました。続いて職業を選択してください」
:剣士/狩人/魔術師・攻撃/魔術師・回復/記録者:
「迷うなぁ、って記録者ってなんですか?」
「記録者とは自分の手帳に記した内容を具現化する能力です」
「例えば?」
「事象を繰り返すことができます」
「よく分からないなぁ」
「他にも武器を生成することができます」
「それは面白そう」
「ただし制限があります、記録者には具現化制限ありLv.1だとティッシュ一枚を具現化するのがやっとです」
「うわー現実的だなぁ」
ゲームで現実感を求めることに疑問を抱きながらも、聞き覚えのない単語を連発されて、東舞の興味は確実に記録者に向いていた。
「Lvが最大になれば、人も作れます」
「へーそりゃあすごいって人!?」
「はい、人です」
「まるで神みたい」
「Lvが最大になればです、それでも5人までしか作れません」
「人数にも制限ありか、でもやっぱり面白い職業だなぁ」
「記録者になさいますか?」
「はい、お願いします」
即答だった。ティッシュに武器に人までも作ることができる。久しぶりのゲームにこれほど打って付けの職業はないだろう。
「了解しました、続いてステータス設定を行います、100ポイントを振り分けてください」
:腕力/体力/知力/脚力/魔力:
「おっここは大切だよな」
「それぞれのステータスを押せば1ポイントずつ上がります、押し続けると連打に変わります」
「よし」
目の前の選択肢に手を触れる。
:腕力16 体力30 知力30 脚力10 魔力14:
「う〜ん。ちょっと違うな」
:腕力60 体力10 知力10 脚力10 魔力10:
「いやいやこれは」
:腕力20 体力20 知力20 脚力20 魔力20:
「うん。無難だな」
「決定しますか?」
「お願いしま──」
──こんなところまで平均でどうする。ゲームまで取り柄があったほうがいい。
後に人生の分かれ道ともなったこの選択で東舞は変わった。
「まった、変えます!」
「了解しました」
記録者という職業がどういう職業かを頭に入れて、一般的ではなく、独自の考えでポイントを振り分けていく。
・腕力はそんなにいらない→腕力10
・体力は少し多めに→体力25
・知力は……記録者だしな→知力35
・脚力もそんなにいらない→脚力10
・魔力は残りで→魔力20
:腕力10 体力25 知力35 脚力10 魔力20:
「決定します!」
「了解しました。これにてキャラクターメイキングを終了します」
「おっ終わりか」
「では最後にガチャをどうぞ」
真っ白な空間の中に巨大なガチャポンが現れた。デパートで良く見るガチャポンと大差ない。
「こちらのガチャは記録者の★1〜★10までの武器が出ます」
「職業別のガチャってことか」
「ちなみに★10が出る確率は0.00000000001%です」
「うわー当たったら奇跡だな」
「1回どうぞ」
決して運が良いわけでもなかった東舞は★10に期待するのではなく、「役立つ武器が手に入ればいいなぁ」とだけ考えてガチャのハンドルを回す。
『テレテレッテレー』という奇妙な音ともに出てきたのは、黒色の大きなカプセルだった。全身を使ってカプセルを開く。そこには赤色の手帳があった。
手帳の表紙には、
『The world was recorded』
「世界は記録された?」
金文字でそう書かれていた。手を触れるとアイテム説明書のようなものが現れる。
◆◆◆
『世界の全てを記した手帳』 レア度 ★10(最大)
世界の全ての情報を記した手帳、記録者が使用することにより力を発揮する。この手帳にはたくさんの記録者が記録し代々受け継がれてきた……。その後は設定の話が続いたので略。
・全ステータス 5倍
・Lv改竄可能
◆◆◆
「奇跡起きちゃった」
というか、ぼくの小説がこんなところに。
ゲーム登場させたとは聞いていが、喜びのあまり詳細を確認していなかった東舞は自分の渾身の作品がゲームの景品だったことに少しガッカリする。
「おめでとうございます」
「ん?」
最後のLv改竄に目がいく。
普通に考えれば、Lv改竄なんてすればゲームバランスは崩壊は免れない。もし崩壊しないとしても、プレイしている側からすればチートすぎて楽しくはないだろう。
「Lv改竄?どいうことですか?」
「Lvを自分の都合のいいように改竄できます。トウマ様の小説に登場させた通りの仕様にしてあります」
東舞の小説に登場する、『世界の全てを記した手帳』にはチートと呼べる能力も備わっていた。
それは、時間の巻き戻しと早送り、このゲームでのLv改竄とはこの能力を元に作っているのだろう。
しかし、ステータス5倍には心当たりがなかった。
「装備をされてはいかがですか?」
「どうやってやるんですか」
「メニューオープンと言ってください」
『メニューオープン』
目の前に画面が現れた。画面には:ステータス・装備・アイテム・マップ・ヘルプ:があった。
「そちらの画面の装備を選択して下さい」
装備を押すと装備可能と書かれた枠に:世界の全てを記した手帳:があった。
手帳を選択し装備するが何も変わった気はしない。
「装備は完了しました」
「え?でも何も変わってないんですけど」
「記録者は剣や弓と違って直接装備はしません、使用時は『来い』と念じれば手元に来ます、使用が終われば勝手に消えてくれるので窃盗も防止できます。」
「そうなんですか」
やけに都合よくできている。まあ、あんなに分厚い手帳を持つのもな。
手帳とは名ばかりで厚さでいえば辞書ほどあったソレを持ち歩くの面倒がかかった。
「メニューを消すときはどうすればいいんですか?」
「手をかざして軽く握れば消えます」
言われた通りに画面に手をかざして軽く握る。すると、数秒も経たないうちにメニューが視界から消えた。
「ありがとうございます」
「では良い旅を……と言いたいところですが、最後の質問をさせて下さい」
「なんですか?」
:異世界に転生しますか?:
:YES or NO:
次回も同じ時間に投稿します。
他の連載作品も再開するので、ぜひ読んでみてください。
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