#008 国の末路 (上)
今回は少し短いですが、勘弁してください。
いままで投稿サボってすみません。
「ありがとうございました!」
この言葉とともに執事バイトは終わりを告げた。手に入れた給料と執事長の計らいでもらった新調してもらった服を持ってトウマはミカさんが経営する『明清』へ向かった。
◇ ◇ ◇
「いらっしゃ……ってトウマさん!」
「お……はようございます」
たった一週間だったけれどトウマにはお久しぶりという言葉が出そうになる程に懐かしさを感じた。そして、ツケになっていた代金を支払い、一旦明清を後にした。
トウマはモノロイド公国の実態を知った。はっきり言ってこの国は地下ないうちに滅びるだろう。どんなにキルカが有能であっても王があれじゃ持たないだろう。
「よし!」
トウマは思考をめぐらせ一つの答えを見つけた。一介の高校生である自分には大した力はない。が、しかし、手帳の能力を使えば未来すらも見る事ができるはず。世界の全てを記した手帳には未来も過去も関係ない。まあ、小説の話なのだが、なんとかなるだろう。そう考えトウマは手帳に意識を集中させた。
◇ ◇ ◇
不意に意識を奪われたトウマは暗闇に飲まれるかのように眠りについていた。
「汝の望みはなんだ?」
身に覚えのない声がする。このパターンには定評があった。戸惑うことはせず、冷静にトウマは自分の目的を話した。
「ぼくはトウマというものです。あなたの素性は知りませんが、とにかく、モノロイド公国の未来を見たいんです!」
「それに見合う対価を払え」
「あいにく、ぼくはこの世界にそんなものはない。だから、寿命1年でどうかな?」
寿命。人の命は尊いものだが、1、2年寿命が減ったところで不都合があるとはどうしても思えない。ならぼくは、自分の好きなように命を使いたい。
「いうではないか。汝は転生者とみた。この世界がそんなに気に入ったか?」
「気に入ったよ。特にこの国のある人たちがね」
「よかろう。汝の願い聞きとどけたり」
その言葉とともにトウマの頭の中に未来50年間の記録が記憶された。
「これは……」
公国が破滅する未来は本当に遠くない。もっといえば3年後、この国は滅びる。理由は国王の乱心による戦争によって伯爵位が剥奪されたこと。戦争によって疲弊したこの国は他国からも攻め込まれ、王族を含めた国民全てが奴隷となった。もちろん、キルカやミカさんも。
「さらばだ」
そして、また意識がなくなった。
◇ ◇ ◇
「あ、気がついた」
みると鑑定やの老亭主がそばにいた。彼がここまで運んでくれたのか、道中にいたはずなのに広場のベンチに横たわっていた。
「すいません。また貧血になったみたいで」
「いいんですよ、困った時はお互いさまさ」
とっさについた嘘で自分を助けてくれたご老人を騙すのはこころが痛むが仕方がない。そうトウマは割り切ると、礼をいってミカさんの経営する宿屋に帰ってきた。
「お帰りなさーい」
快く挨拶をしてくれるミカさんに今までのことを思い切っていってみた。すると、ミカさんからは意外な答えが返ってきた。
「やっぱりそうかー。この国いつかはそうなると思っていたんだよね」
自分が奴隷なってしまうといったのにあまりショックは受けていないようだった。でも、もう一度奴隷になるなんて嬉しいわけがないだろう。ソウゴさんの作りあげたものを壊したくないといってこの街からミカさんは動かないった。
キルカにいっても聞き入れてくれるとも思えない。
トウマは最後の手段を迫られた。あの頑固な国王の説得だ。
「やるしかないよな」
トウマは身体能力を手帳により最大まで引き上げて足で国王の元へ向かった。
次回は1週間以内に投稿します。