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パリの青年
パリの生活を堪能し、この街で深呼吸をしながら生きる日々。
そんな中でどこか祐介を思い出させるような美しい青年と出会う。
人間とは不思議なもので、東洋人と西洋人の顔つきは全く異なるのに
なんとなく似た感じの人と出会うのだ。
美香はその青年の中に祐介を見ていた。
フランス語で会話しているのに
彼から発せられる言葉の意図はいつも祐介を思い出させる。
世の中には似た魂を持つ人々が何人かいる。
見てくれや言語が違えど限りなく近い人間が存在する。
そんな事を肌で感じた。
祐介よりは少し年上で、パリの金融街で働く青年は料理が好きだった。
仕事帰りにちょっとした食材を買って 目にも美しいアペタイザーをパパッと作るのが上手かった。
差し入れのワインボトルを手際よく開けて、人数分のグラスに注いてくれるのも いつも彼だった。
彼のアパートで留学生仲間や彼の友人と集まっていた土曜日、
そろそろ夜も遅くなってきたので皆が帰り始めた。
青年は美香を家まで送ると言い、帰り道を一緒に歩き出した。
少し歩いて彼は足を止めた。
「もっと一緒にいたい。好きなんだ。君ってマーメイドみたいだから…」