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冷めない情熱の前で
冬晴れの空の下、ある人に会いに行った。
「帰ってきたら僕と結婚して下さい。
美香ちゃんが帰ってくる頃には、
僕は就職しているはずだし、家も出ている。
お互いの親に会う必要だってないと思うし。
沢山働いて、絶対に幸せにします。」
あの日の祐介が今でもはっきりと思い出せる。
希望を取り戻し、輝き始めた一人の若者の時間は今も止まったまま。
沢山の夢を思い描いていた若者は…
永遠に美香の心の中に住み続けている。
思い立ったら時々、その冷めない情熱に会いに行くのだ。
今日はふと、祐介の魂は生まれ変わってこの世のどこかに存在しているのではないか?という気がした。
「祐介さん、あの時結婚しようと言ってくれてありがとう」
冷めない情熱は懐かしくて 特別な思いを蘇らせる。
あの日からやっぱり私たちは一緒にいるような気もする。
「ありがとう…」
心の中でつぶやいて内藤家の墓を後にした。