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竜の娘と異世界目録  作者: 柚廻
竜の娘と世界の終末
9/11

9.結論と再開



「あにょ、ヒーリスさんはこのくにのえらいたちばのひと…じゃないにょ?」


この人軍司令部監督って言ったよね?言ったよね?!

そんな人がこんな幼女についてきていいわけ?世界の終末を止めることがイコールで世界の支配に繋がるから私が何しでかすかわからなくて見張る…とか?

いやいや、でも…ええー??理解が追いつかないぜー。


「偉い立場…か。それはあくまでも立場の問題だ。私がいつ抜けてもいいように後釜は育ててあるし、私は他の奴らには嫌われているからな。私が抜けたところで困るやつはいないさ」


…悲しげな顔で言われてしまった。そんな顔させたかったわけじゃないんだけどな。

それに、他の奴らに嫌われてるって…みんながみんな嫌ってるわけじゃないでしょ?慕ってくれる人だっているでしょ?

困る人がいないなんて嘘だよ。


でも…泣きそうな顔で笑わないで?辛そうな顔で平気だって強がらないで?痛いよ…傷を負ったとかじゃない、心が、痛いよ。


「ヒーリスさん」


私、決めた。こんな顔させるような場所にヒーリスさんを置いとくわけにはいかない。私自分の目の前にいる人を、優しく微笑んでくれた人を、悲しい顔させとくままにするなんて出来ないよ。


「わたしはきらわないよ。ヒーリスさんのことまだあってまもないけど、だいすきだよ。こどもだってあしらわないでちゃんとはなしきいてくれたもん」


だから、だから…


「いっしょにいこうヒーリスさん。わたしがあなたのいばしょになるよ」


帰ってきたのは沈黙だった。目を合わせてから一時たりともそらされていない。感情が最も出やすい瞳には私が反射しているだけだった。


もしかして迷惑だったかな…いらないお節介だった?それともこんなこと言われて引いてる?


ぐるぐると頭の中を雑念が渦巻く。うぁー!!言わなかったらよかった?…けど自分の想いを伝えることはいいこと…でも!!

堂々巡りを始めた思考が、頭の上に乗せられた手によってストップした。


ポンポンと何度か軽く叩かれ、ゆるりと撫で始める。頭のてっぺんにあった手は徐々に下へと降りていき、頬に至った。

あの…すごく、ものすごく恥ずかしいんですが…。


「私の…居場所になってくれるのか。幼子、いやシアン」


なんの感情も見えなかったヒーリスさんの顔が柔らかくなった。ふっと笑うヒーリスさんに助けになったかな?と自己完結した。


「もちろん!!ヒーリスさんさえよければわたしといっしょにいこ!ひとりはさみしかったんだ」


浅葱もいるけどね。浅葱は竜だし…いや私も竜か。あれ…そういえば…浅葱は!?!?近くにいないし、さっきまで自分の身が危なかったためすっかり忘れていたが私の相棒は何処!?


キョロキョロと周りを見ていたのをヒーリスさんが見て察してくれたのか、小さい竜は違うところで捕まっていると教えてくれた。


うぅ、不甲斐ない主でゴメンね浅葱ぃー!と心の中で大声で謝っておく。


「シアン、小竜のもとへ行くのだろう?案内するぞ」


コクコクと頷く。ふわっと笑って頭を撫でてくれるヒーリスさんにノックアウトされながら手を引いてもらい移動する。ヒーリスさんからなんか知らないけどすごくいい匂いが(すんすん)…はっ、これでは変態みたいじゃないか!!


「段差は少し高くなっているからな、転けるなよ」


ほとんどヒーリスさんに引っ張られる状態で目的の階まで到着致しました。ヒーリスさんお手を煩わせて申し訳ない…。


一人しょんぼりとしているとどこからかキュイッという聞き慣れた声が聞こえた。


「あしゃぎー!!!」


声の元へ走っていくと足枷をジャラジャラいわせながら懸命に外へ出ようとする浅葱の姿を捉えた。


そんなふうに無理に羽ばたいたら綺麗な鱗に傷がっ。少しずつ血がポタポタと流れ出ているのが分かって思わず駆け寄り格子扉を開けるためガタガタと揺らす。


「シアン、少し離れろ。鍵は私が持っている」


後ろからヒーリスさんに窘められスっと横にずれる。ヒーリスさんが格子の鍵をあけ浅葱を優しく持ち上げ足枷の鍵も外してくれた。


「あしゃぎ!ごめんね、すぐこれなくてごめんねぇ!」


出てきた浅葱に勢い余って抱きつく。うりうりーと浅葱に頬擦りをしてごめんねーと連呼する。浅葱もスリっと頬に寄ってきた。


「(だいじょうぶ!しあんこそたいへんだったんじゃないの?ぼくはおむかえにきてくれただけでうれしいよ!)」


なんていい子なんだ。

ううー忘れたりなんかしててホントにごめん。情けない主で浅葱に申し訳ないよ。


「シアン。再開のハグは分かるが小竜が潰れてしまうから程々にしておけよ?」


はっ、潰してしまうのはダメだ。手を離すと浅葱は小さな体でトトっと腕を駆け上がり肩に落ち着いた。

やだーうちの子可愛すぎぃ!


そういえばヒーリスさんに浅葱のこと紹介してなかった。というか自己紹介もしてないような?

なんて事だ!!ヒーリスさんに一方的に挨拶させてたなんて!!


「えっと、えっとヒーリスさん!」


「ん?どうした?」


挨拶していないという失態を犯した私は勢いのままにヒーリスさんに詰め寄った。

しかし動じず対応してくれるヒーリスさん優しい。


「ごあいしゃつがおくれてもうしわけありましぇん。わたし、シアン·ルーカスっていいましゅ。で、こっちがあさぎです。よろしくおねがいしましゅ!」


カミカミなところはご愛嬌ってことで許してくださいましあ!

浅葱も私と一緒に挨拶がしたいのかキュイッと鳴いている。まあ私にはちゃんとよろしく!って言ってる声が聴こえるけどもね。


流石に急すぎただろうか。見上げたヒーリスさんはポカンとしている。ほ?と首を傾げて見ていると数秒もしないうちにクッと笑いをこらえるような声を出し顔を背けて肩を震わせ始めた。


あのー、笑いこらえられてないですよ?何か変だったかなー。しゅん。


「ふふっ、いや、面白いなシアンは。よろしく頼むぞ我が主」


「ほぁー、はっ、はいっもちりょんでしゅとも!」


笑った時のヒーリスさんの破壊力パネェな。ほぁーとか変な声出しちゃったよ。

私の返事を聞いて更にヒーリスさんは笑みを深める。神々しいっ、眩しいよヒーリスさん!!


「さあ。挨拶も済んだところで、人事部と話を付けに行くからシアンもおいで」


そうだ、ヒーリスさん私に着いてくるにはここ抜けなきゃならないんだよね。

てか人事部って…普通の軍隊とかでもそういうのあるの?

…え?私も行くんですか!?ヒーリスさん!?ちょ、ヒーリスさん?問答無用のいい笑顔で私の手を引かないで!?いぃやぁぁだぁぁぁあ!!





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