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竜の娘と異世界目録  作者: 柚廻
竜の娘と世界の終末
7/11

7.不慮の事故…だと思う

浅葱の背中に乗って空の旅をある程度楽しんだところで、やっぱり浅葱がちゃんと行く場所が分かっているのか不安になって聞いてみた。これで分かってないって言われたら私はどうすればいいのか…はぁ。


「あさぎ!どこいくかわかってりゅの?」


すると浅葱がキキーッと止まって空でホバリングをした状態で言い放った。何というかホバリングなんて器用なことするな、浅葱。


「(わかんないっ!!)」


分かってなかったー…ハハハ。くっそ、なんだ信じた私が馬鹿だったのか!?最初から分かっているのか聞いとけば良かった!反対側に向かってたらどうすんだよ。


「(でも、とりあえずせかいじゅのほうにむかっとけばいいんでしょ?)」


え?そうなの?確かに世界樹に用はあるけど。世界樹じゃなくて始まりの地に行かなきゃなんないんだよ?もう、分かんなくなってきちゃったや。

ぐるぐると頭の中が混乱して何も考えたくなくなった。

放棄しようかと結構真面目に考えていた時浅葱が急に動き出した。


「(しあん!したからこうげきされてる!)」


「え、こうげき!?な、なんで!?」


何で攻撃なんかされなきゃなんないのさ!?そんなことを言っている間に下からは浅葱の言う通り矢が迫ってきている。

こっわ!!えっ!?怪我するよね?当ったら…。に、にっげろぉー!!


「あさぎぃ!よけて!!」


頑張って浅葱の首にしがみついてるけど筋肉なんかついてないも同然の身体だから、プルプルしている。

しかも浅葱が矢を避けながら飛んでいるから飛び方は相当アクロバティックだ。

ぐるんぐるんと回りながら飛んでいたら浅葱の体が急降下し始めた。


「あさぎ!?どうしたの!?まっすぐとんでよ、おちちゃう!」


「(うぅー、つばさにやがかすめてうまくバランスがとれないの!ちゃんとつかまってる?しあん!)」


掴まってるって言ったら掴まってるけど、今にも落ちそうだよ!

ズルッと手が滑ったかと思うと浅葱から手が離れ、私は真っ逆さまに落下していった。

まだ旅は始まったばっかりなのに、ここでゲームオーバー?そんなの嫌だよ…生きてやるって決めたのに…。

抗って手を伸ばした先には焦ったような顔をした浅葱がいて。そこで記憶はブラックアウトした。



···



ふっと意識が浮上する感覚がした。まだ目は開かないけど周りの状況なら何とか分かるかもしれない。私が空中で気を失ったあとどうなったんだろう。死んじゃった?まあ、あの高さなら無くはないというか。むしろ普通なら死んでる。運良く助かったとしてここがもし敵的な何かの領地だったら元も子もない。


「………しか………だろう…………」


耳をすませていたら少しだけ話し声が聴こえた。鹿?何、今夜の晩御飯の話?鹿かぁ、食べたことないなぁ。


「いくら…………でも…………竜…」


いくら?鮭のイクラ?海鮮なのか肉系なのか統一しなよ全く。食い意地はってんのか?いや、でも竜ってハッキリ言ったよね、いやぁー食べないでぇ!?!?竜は美味しくないよ!!!…多分!


「やはり、殺すしかないだろう」


さっきよりも明確に物騒な言葉が聴こえた。殺さないで!夕飯の食材にしないでぇ!!

パチッと目を開けてしまった。

目の前には強面のおにいさ…いや、おじさんだな。が小心者がチビりそうなレベルのお顔でこっちを睨んでいました。

小心者な(嘘)私は思わずピッと意味不明な悲鳴をあげましたとも。

これで泣き出さなかっただけそこらの子供よりは全然強いと思う。


「起きたぞ。どうする…」


「…殺す」


「しかし幼子だ」


「関係ない、幼子であろうと竜だ。我らに脅威となる存在。今の内に始末しておいた方がよい」


「しかし無闇に殺しても関係を悪化させるだけだぞ」


「不可侵の条約を犯したのはあちらが先だ、どの道裁かなければならぬ」


ど、どうしましょう。

殺されて夕飯にってことは会話からして無さそうだけど、不可侵条約を犯してしまったようですね。

そんなもん知るかよ。父様だって教えてくれなかったし…。わざとかな?わざとなのかな?もうっ、父様のせいで最初っからめっちゃ危険な目にあってるんですけど!!

急に空気が変わった。殺伐とした雰囲気は変わらないけどその中に冷たさが広がった気がする。


「ヒ、ヒーリス様!?このような場所にどういったご要件で…」


「竜の幼子を捕らえたと聞いてな、お前らのことだから先走りすぎないようにと」


ヒーリスと呼ばれた女の人が扉から入ってきた。ちなみに苦笑しながら言っているが、目は全く笑っていない。言外に余計なことはするなよと脅されている気が…。


「不可侵の条約を犯したのです。幼子であっても許されることでは無いかと思われますが…」


ふむ、と考え込んでしまったヒーリスさん。でもね、きっとこの人は考えてなんかいないんだよ。自分の中で結論はついてしまってるんだよ。騙されちゃいけない。

そんなことを思っているとこちらの思考でも読み取ったかのように私をキラリと光る目で捕らえた。

こっわ!!何されるのさ!


「そこな幼子、何故我らの領域に入ったのだ。何かしら目的あっての事だろう?」


おおー!ヒーリスさんは私の意見をちゃんと聞いてくれるんですね!でも意見聞くなら口布外してもらえないかな?

フゴフゴ言って通じるなら別にそれでもいいんだけども。


口布を優しく外してくれたヒーリスさんに自分の意思を伝えてみようと思う。

父様でさえあんだけ戸惑ったことだから、言わない方がいいかもしれないけど…何か言わなきゃいけない気がするから!!





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