4.家族構成どうなってるの!?
父様に抱かれ歩き続けることかれこれ30分ちょい。短いと思うだろう?だがしかし、これが結構長いんだよ。
そりゃ最初の方は初めて見るものが多かったから退屈はしないけどもね?おんなじ景色が永遠と続いてるから、飽きてきちゃったんだよ。綺麗だし神秘的だよ?でも流石に30分は眺めらんないなぁ。
なにもせずボーっとしていると突然どこからか奇妙な音がした。
(ぐきゅーるるる)
父様に見下ろされ、思わず顔を下に向ける。絶対顔赤いもん。そう、皆さんお察しの通り私のお腹の虫が鳴いた音だよ!!悪いっ?!誰に向かって逆ギレをしているのか。
「くっ、くくく。悪かった、腹が減ってはなんとやら、もうすぐ家に着くから我慢してくれ。」
イケメンな父様だ。しかし笑いをこらえきれてないよ!!ぷぅ、と頬を膨らませてそっぽを向く。そんでもって、父様の服に顔をグリグリする。
またしても上からクスクスという笑い声がしてさらにグリグリする。
「そんな可愛い事をするな。髪がぐしゃぐしゃになってしまうぞ?」
ポンポンと父様に窘められる。さりげなく髪を整えてくれる辺りがイケメンだと思う。
「...おなかすいたの。とうさま、まだ?」
話を変えようとしたが、結局はご飯の話になってしまった。解せぬ。
また、笑われらだろうか?チラリと父様を見上げれば、穏やかな微笑みが目の前いっぱいに広がった。思わずサッと顔をそらす。いやいや、あんな素敵笑顔を真正面から受け止められるはずがありませんよ~。
何で私の心臓はこんなにもバクバクいっているのか、あるぇ?おかしぃなぁ?
「もう少しで着くさ。ご馳走が用意してあることだろうな」
柔らかな声音で父様が言う。
ふと、上を見上げると父様と視線が交わる。ニッコリと笑顔0円でサービスしたら、私の笑顔なんか比にならないくらいの特上スマイルを向けられた。
だからっ、ダメだってば!!ドキドキするでしょっ!!おかしなキレ方をしつつ、またも火照りだした顔をそらした。
あれから5分少々(父様が)歩き、私はお腹がなる度に顔を染めながらお散歩が終了した。
「「「お帰りなさいませ、ルーカス様」」」
大きなお屋敷に入ったと思ってたら、盛大なお迎えをいただきました。なんだ、これはヤの付く自由業さんでもいらっしゃるのか。
こんなだだっ広いお屋敷に、たくさんの使用人さんとおぼしき人達。父様、もしかしてスッゴク偉い人なのではないのか?
「ルーカス様、王子様方は白銀の間でお待ちです」
使用人さんの中でも偉い身分の人であろう、男性が父様に静かに告げた。
ちょと待て、王子様方だと?そんな偉い人のとこに連れてかれるの!?いーやーだー!父様はーなーしーてー!!心の中ではじたばたと暴れてみるものの、現実ではこのチキンハートな私では暴れることはおろか、目線を他の人に合わせることさえも出来ないのだ。
いや、だってさぁ、睨まれでもしたらどうするんだよ。絶対泣くよ?断言できるぜ。
「さっきから体が固くなっているが大丈夫か?心配することはない、みなそなたの兄なのだから」
はい?聞き間違いでなければ父様今、兄って言った?兄?ほわっつ?王子様が待ってるんでしょ(決してメルヘン的な意味合いではなく)?王子様が私の兄になるのかな。
ん?ちょおまちぃや、それやと父様が......。いやいやありえへんわー、父様が王様なのは納得できるけど自分がそないなとこに生まれたのがありえへんわ。
などと見よう見まねな関西弁でパニクっていると、あれよあれよという間にその白銀の間とかいう部屋についてしまった。
早いって、心の準備があぁぁあ!!内心暴れていても父様に伝わる訳もなくて、扉をバッと開けた。
いやぁ、扉の開け方も様になっててカッコいいですね。じゃないんだよ!
「あぁ、お帰りなさい父上。お待ちしておりましたよ、我らの新たな妹よ」
一番年上っぽい優しげな青年が言葉を発した。お待ちしてってスッゴい丁寧なんだけと。え、兄妹でしょ?何で妹相手に敬語使ってんの?
「...飯が冷める...」
クールに言い放った目のキツイ青年がこちらを無表情で見ていた。なに考えてるか解らないからとてつもなく怖いんですけども。
えぇえぇ、私チキンハートなものですから皆さんにとっては何でもないものだって体が震えるのですよ。
震えているのに気付いたのか父様が背中を優しくポンポンと叩いてくれる。安心したぁ......チラッ......やっぱり無表情怖いぃ。
「父上、早く席に着いて!ご飯美味しくなくなっちゃうよ~」
一番年下であろうヤンチャそうなTHE少年が空腹に耐えきれなかったのか父様を急かした。確かにお腹すいたよグッジョブ少年。
「ふふ、分かっているさ。今日は新たな家族の為の宴だ。では、この国の新たなる王女に乾杯」
父様が音頭をとり、王子様方...私の新しい兄様方が手元にあったグラスを持って続く。祝福されていることが嬉しくて、無意識のうちに頬が緩んでいた。
「っ、カッワイイなぁ......あ!!僕はアレン、アレンジスタ·ルーカス。三人の中では一番末っ子だよ。年下が出来て嬉しいなぁ」
いきなり始まった自己紹介。可愛いって何が?君が可愛いよ。というかやっぱり末っ子だったんだ。そんな匂いがぷんぷんしますがね。
「アレンは元気だね。僕はセラクイナ·ルーカス。気軽にセラ兄様とでもよんでね。僕が一番年上だよ」
最初に敬語で挨拶してきたお兄様です。良かった。この先ずっと敬語だったらどうしようと思ったけど、どうやら挨拶の形式みたいなものだったんだね。でも、優しいお兄さん感はいまだに健在です。流石、父様の息子だよねって感じ?
「......レイコード·ルーカス。2番目」
あの無表情お兄様もボソッと名乗って食事を再開した。みんな意外だという目で2番目のお兄様を見つめている。普段はこんな事言わない人なのかな?
「改めて、マレフィシア·ルーカス。この竜族が暮らす王国の竜王だ。よろしく頼むぞ、我の愛し子よ。」
暖かく笑顔で迎えてくれた父様たちが嬉しかった。こんなあったかい世界を壊させたくない。
また一つ世界の終末を止める理由が出来た。