3.死ぬ!ダメ!絶対!
「本当に良いのだな」
父様に真剣に言われ、私はこくりと言葉にせず頷いた。世界の終末の止め方も、その後どうなるのかも、何にも分からないけど死にたくは無いからね。出来ることは全部やりたい。私一人の力じゃどうにもならないかもしれないけど、やらないで諦めるよりかはやって無理だと知る方が絶対にいい。
「どうやってとめたらいいの?」
ホントに何にも知らない。それこそ無知な赤子だからやることは聞かなきゃ始まらない。何も知らないまま、世界の終末と言われる現象を止めようなんて馬鹿のすることだよ。世界の摂理を変えようとするんだから、それ相応の知識は必要でしょ。
「世界の終末は世界樹の枯れが原因だ。世界樹が枯れるから世界の終末がやってくる」
はい、ストップー。世界樹って何さ、あの良くRPGとかであるようなでっかい木の事?そんなんが枯れたりすんの?あ、枯れ始めたことで世界の終末が近づいてることを知るってこと?
「何故世界樹が枯れるのかは分かっていない。ある日突然、まるでそうなることが運命だったかのように朽ちて消滅する」
消滅、パッと消えちゃうってことかな?なら、どうやって終末を知るのか。不思議なことばっかりあるもんだなぁ。
まあ、世界樹なんて言うくらいだからそりゃあおっきいんだろう。そんなのがパッと消えるってスゴいよね。手品師でも無理だろう。ていうか、手品師がそんなこと出来たら驚きだよ。
「せかいじゅをからさなかったら、いいんじゃないの?」
「世界樹を枯らさなければそれが一番の方法だが未だ解明されていない。なんといっても、魔樹だからな」
魔樹とな?なんか、意味のわからない単語がたくさん出てきて私の頭では追い付かないのですよ。だからって聞かないわけにはいかないのだけどもね。
「でだ、世界樹を枯らさないのではなく世界そのものを管理するという役割で世界の終末は止めることができる」
世界の管理...めっちゃ重大な役割じゃないですか。そんなのが私に勤まるかなぁ。というか、世界を管理したら世界の終末が止められるってのはどういう理屈なの?世界樹ってどういう存在なんだよ。
「世界樹はそもそも世界を管理すると同時に秩序そのものだったのだ」
「ちつじょ?」
世界樹が秩序?え、感情とか有った訳じゃないよね?何がどうなって樹が秩序になったりするの。勤まる勤まらない以前の問題じゃないのかね。植物でしょ?世界樹なんて言うくらいなんだから。植物が秩序で大丈夫かこの世界。
「世界樹の管理をすることで世界の管理も行われる。また、管理者と呼ばれるものは秩序でなくてはならない」
「せかいじゅのかんりしゃって、どうやったらなれるの?」
そうだよ。それがどういうものかじゃなくて、どういう過程でなることが出来るのかが大切なんだよ。今の私にとっては。諦めるなんて言葉は私の辞書の一番最後のページにしか無いんだよ!!いや、有るのかよとかツッコまれても時には諦めも肝心だよ。
「始まりの地と呼ばれているこの世界の果てである荒野が西の端にある。そこに世界樹の入り口があるとされている」
荒野に入り口があるの?しかも西の果てって。この世界どれだけ広いかは知らないけどたくさんの種族が共存しているんだからそれなりの広さはあるはず。そこに着くまでにどんだけ時間がかかるのやら。
「世界樹の入り口は隠されているため、そう簡単に見つけることは出来ない。何らかの条件があるようなのだ」
まあ、そんなおおっぴらに入り口晒しといたら、駄目だよね。世界の中枢に繋がってるようなとこなんだから。それにしても、隠されてると見つけるの大変そうだなぁ。
「言い忘れていたが、始まりの地は流刑の地ともされているから気を付けるように」
流刑っ!?何でそんな中枢に繋がってるところを流刑の地にしたんですか!?バカなの?!みんなバカなの!?悪いやつに中枢乗っ取られてても文句は言えないよ。
「此処は東の端にある竜族の領域だ。始まりの地に行くまでには相当の時間が掛かる。それでも行くのか」
「いく」
どれだけ時間が掛かろうと、どれだけ距離が離れていようと、私の力では止めることが出来ないと分かっても
「せっかくもらったこのいのちを、みすみすてばなすことなんてできない」
子ども、それも生まれたばかりの赤子がこんなこと言うのも変かも知れないけど、気にしてられないくらい強く思うんだ。
前世と言ってしまうにはほんの数時間前の世界なんだけど、前に生きていた世界ではワケも分からずに死んでしまった。
結婚もせずろくに会話もなかった親には申し訳なさや罪悪感と共に悲しさや悔しさもこみあがってくる。そんな前世があるからこそ今世ではちゃんと命を大事にしたい。
「はぁ、決意は堅いようだな。但し周りに流されるな、自分の意思によって行動するんだ、良いね?」
諭すように父様は頭を撫でた。認めてもらえたことが嬉しくてうん。と頷き父様に抱きついた。背中をポンポンと優しく叩かれ更にギュッと強く抱きつく。絶対に父様のもとに帰ってこようと誓って。