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竜の娘と異世界目録  作者: 柚廻
竜の娘と世界の終末
1/11

1.ここはどこ、わたしはりゅう

目を開ければそこは白い空間だった。

なんてベタすぎて笑えてくる。この白い空間は果てなく広がっている訳ではないようで、手を伸ばせば少しして壁にぶつかった。外から仄かに光があたっていて、暗いということはない。

ドームのようなこの空間の真ん中らしき所まで移動し、三角座りで座った。


(何でこんなことになったんだっけ。)


心のなかで自分に問いかける。あやふやな頭のなかを整理しようと、こうなる前の出来事を思い出すべく目を閉じた。



「慧ちゃん、また明日ー」


そう言ってにこやかに去っていった相手に手を降り、自分も家に向かって歩き出す。

大学の講義が終わり二人で研究室に籠っていたら、いつの間にか日が沈んでいて帰ろうということになったのはつい先ほど。

平凡な頭と平凡な顔、運動神経も平凡で特に秀でたものは無い。強いて言うならば勘と運だけはある。

高校から第一志望の大学へ浪人無しで行けたのは運が味方についてくれたからだろう。こんな平凡な頭では合格は難しいと先生にも言われていたから。正直、合格した時は本当に受かったのか何度も確認したものだ。

今ではその受かった大学でそれなりに友達もでき、それなりな一人暮らしを十分に満喫している。

ふと空を見上げればそこには満点の星空が輝いていた。星空が輝くという言い方はおかしいかもしれないが、まさにそんな感じなのだ。小さな星から大きな星まで、ありとあらゆる星が闇色に染まる空で輝いていた。

ここら辺は街灯も少なく夜中までやってるような店も無いから星がよく見える。しかしこんなにも綺麗に輝いてるのは久しぶりだ。

空を見上げつつ歩いていたらいきなりまばゆい光に包まれた。反射的に目をつむれば、その直後に大きな衝撃が体を襲った。

一瞬息が止まり、自分が車にはねられたのだと分かったときには意識は闇の中へ沈んでいっていた。



(そうだ。私死んだんじゃないっけ?)


すごく今更な気もするが、死んだはずなのだ。自分の不注意かそれとも相手の不注意か、相手が故意にやったということは有り得ないと思いたいけど。

なんにしろ自分は死んだのだ。ならここはあれか、死後の世界というやつだろうか。


(壁ってことは、外があるのかな?)


何もない所は退屈なので外があるのならば、外に出たい。辺りを探るべくうろうろする。壁に触れてみると、変な感触がした。プラスチックやゴム、ガラス、木、布、金属とかそんなものでは無い。硬く、冷たい少しツルツルとした壁だ。

出るような所は無いので外に人が居ること期待して壁をノックしてみる。コンコンと軽く叩くと、何処からかペキャという音が聞こえた。ペキャ?何だその音は。不思議に思い周りを見渡すが異変は感じられない。目線を手元に移すとそこの壁にはヒビが入っていた。


(ヒビ?!そんな強くしてないですけど?!)


混乱で頭がついていかない。確かめるべく、もう一度軽めにコンコンと叩くとまたペキャという音が聞こえた。もしかしてこれ、外に出られるのでは?!おもいっきり殴ったら壊れるかな、この壁。と無茶苦茶なことを考えてみる。でももし壊れなかったときが大損害だよね。主に自分に。てか自分だけに。血まみれとかやだよー。などと考えながらも身体はファインディングポーズをとる。


(ここは当たって砕けろだよね。ホントに砕けたら嫌だけどっ!!)


せいやっ!!っと掛け声を掛けて拳を壁に向けつきだした。壁がガシャーンと音を立てて崩れるのを見ながら、自分の右手を確認する。血に濡れてはいなかったものの赤くなっていたので痛みを逃がすため軽く振っておいた。


(やっと外に出られるー)


ホッと息を吐き壁の外側を見れば、そこには神秘的な景色があった。緑色の木々は密集して立っているにも関わらず圧迫感は無く、むしろ抱擁感さえ感じる。目の前に広がる池にしては少し大きいくらいの湖とも取れる水溜まりは、太陽の光を反射してキラキラと輝いていた。まるで違う世界にでも来てしまったような感覚に少しの間呆然とした。

まずはこのよくわからないドームのような所から出ようと端っこに向かう。しかし球形に近いこのドームの端っこに行けば滑り台の如く真ん中に戻ってしまった。何回か試しても結果は変わらない。うがー!!と端に勢いを付けて向かっても変わらない結果にどんよりと落ち込んだ。


「ふふっ、楽しそうな事をしているね。我の可愛い子」


楽しくなんてないやい!!やってみればいいんだよ、大変なんだぞ!......ん?な、何だこの蝶でも飛びそうな爽やか系イケメンボイスは!!突如聞こえてきた素敵声に後ろをバッと振り向いた。その先に見えたのは声のように爽やかなイケメンでした。


「だれ?」


此処に来て初めて声をだしたかもしれない。聞き慣れたそれよりは幾分か高い自分の声に首を傾げながらも、イケメンなお兄さんを見る。お兄さんは我か?と私を抱き上げながら言った。...ちょっと待て抱き上げた?正確な年齢は言わないがおおよそ20歳の自分をこんなにも軽々しく抱き上げられる訳がない。ぎょっとしてお兄さんを見上げると、間近にイケメンフェイスがあって思考がブッ飛んだ。


「我はマレフィシア·ルーカス。そなたの父親だ。父様と呼んでも良いぞ?あぁそれと、そなたはシアン·ルーカス。よろしくな、シアン」


え?父親だと?!自分の父親はこんなにもイケメンではないぞ?!あと、とって着けたように私の名前言うのはよしてください。


「とうさま?」


チラリと父様を見つつ小さくそう告げれば、とってもいい笑顔といい声で何だ?と言われたので恥ずかしくなり、父様の服に顔をうずめさせてもらった。あー、何気にいい臭いがするー。グリグリと額を押しつけ満足したところで顔を離し、はたと気付いた。

目の前にある手がぷにぷにとしていてまるで赤ちゃんの手のようだったのだ。ペタペタと身体中をくまなく探り、どこもかしこもぷにぷにのもちもちではりのある赤ちゃん肌だという事実がわかった。


「あかちゃんになってる」


ボソッっと呟いた声は幸いにも父様には届かなかったようで胸を撫で下ろす。

くるりと後ろを向いた先にあったあのドームのようなものはスーパーでよく見るアイツの巨大バージョンにそっくりだった。


「たまご...」


卵っておいおい人間は卵から生まれねーよ?でもあの中にいたんだよね。あれ?言外に、自分は人間じゃ無いって言ってるぞ。

後ろを向いていた頭を元の位置に戻し父様を見た。イケメンフェイスを間近で見るのはこたえるが、ジーっと見つめてみる。


「とうさまのおみみ、とんがってるのね」


髪に隠れてよく見えなかったけど、こんな近くで間違えるはずがない。父様の耳は確かに尖っていた。人間じゃ無いよ、この人。あ、人じゃないのか。


「あぁ、この耳は竜族だからだ。人族はもっと丸い耳を持っているがね」


りゅう...とな?え、りゅうってドラゴンの事ですよね?何だと、じゃあやっぱり人では無かったんだな。なんてこった、パンナコッタ。死んだら竜に成っちゃったみたいですよ。どうしよ、ままー。



誤字脱字などがあれば教えてくださると幸いです

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