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魔王様、不審に思う

ぐぬう、なんという硬さ、なんという無駄な筋肉。


ヤツの腹に盛大に拳を打ち込んだはいいものの、こちらが悶絶する羽目になってしまった。さすがに魔法に特化した余の拳では、武に特化したこの筋肉の腑にダメージを与えることは無謀であったか。いよいよもって今現在、魔力が枯渇しきっていることが悔やまれる。



窶れてみすぼらしくなりおってこんな田舎の農夫になりさがったこやつなど、敵ではないと思ったのだが。


……というか、余が苦心して身体強化とヤツの身を守る盾の魔法をかけまくった、珠玉の武具達はどこにやったのだ。なぜそんな布っ切れを纏っておるのだ。



「……なんだその粗末な身なりは。余が与えた武具はどうした」


「ああ、あれ!役に立ったぜー、さすがリュカルバーンだな!」


「世辞は良い、どうしたのだと聞いておる」


「この家中心に山の裾野の四方に置いてある。すげーよな、ちゃんと結界として機能するんだぜ!?」



なんと。


呆れて物が言えぬ。


そんな用途は余とて想定してはおらぬ。こやつは時々こうして余の想定を根底から覆す時があるのだ。バカだと思えば時に予想外の結果を叩き出す。ただ侮っては危うい相手でもあるのだ。



「リュカルバーンのおかげで平和に暮らせてるからよ、結構感謝してるんだぜ?」



豪快に笑う筋肉に、脱力感しかない。



「ま、積もる話もあるからよ、立ち話もなんだ、取り敢えず俺の城に入れよ」





城とは。

こんなにも粗末なものであっただろうか。


二部屋しかない上に、通されたこの部屋はどうやら接見室と厨房とを兼ねた驚きのつくりである。なんなら物置も兼ねているように見える。斬新だが、余の城の畜舎よりも狭いのではなかろうか。


しかしここでは余も客人、家主が「すげえだろ!?俺が造ったんだぜー!」と自慢げに話すものを貶める不粋な真似はすまい。



「あ、あの……お茶」



さきほどの小娘が、打って変わった蚊の鳴くような声で余に語りかける。茶を勧める手も小刻みに震え、視線も合わせようとせぬ。


うむ、漸く余の偉大さ、恐ろしさに気付いたのであろう。どうやらこの筋肉の元で働く下女のようであるし、さぞや日々この筋肉のアホさ加減に疲れていることであろう、先ほどの無礼は余が訪う筈だった海のように広い心で許してやることとしよう。



「どーよ!可愛いだろう?俺の自慢の娘、ミナだ!」


「なんと!?」



娘!?

この甲斐性無しに娘!?


驚きのあまり小娘を凝視すれば、恥じらうように頬を染め顔を背ける。


いや、あり得ぬであろう。

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