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終わりに始まる異世界鎮魂歌‐End is an absolute prerequisite‐  作者: 常闇末
おわるセカイとおわらぬイノチ
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第八話 明日ありと思う心の仇桜

パーティーはいきなり始まった。


もともと形式ばったような大変なものではないのかもしれないし、それがこの世界の習慣によるものなのかは分からない。


「ムシャムシャムシャ」


しかし、そんな僕の思考もお構い無しに京二はひたすら料理を貪り食っていた。

その姿はさながらハイエナだ。


「……京二。そんなに食ってたらこんなになるよ?」


手を目一杯広げて見せる。


「ああ?別に腹周りがそんなんなろうとどうだって……」

「いや、頭囲が」


ズコッと京二がこける。


「……あのな、頭がそんなになってたまるか。俺は一体何頭身になるんだよ」


想像してみる。


………………。

…………。

……。


「どこで×ドアー!」


……。

…………。

………………。


「ブフォッ!?」


変な想像をして、つい吹き出す。


「……絶対、その想像通りにはならないからな」


京二は呟いていた。


「まあ、そうならないように気をつけなよ」


そんな意味深な言葉だけ残してその場を去る。京二の食事スピードは少し落ちてしまった。


まあ、京二にこの会を満喫させないことも狙いの一つだったんだけど……。

理由といえばただの嫌がらせだ。


代わりに晋也の方へ行く。


「やあ、晋也。元気……なわけないね」


晋也は相変わらず埃まみれだった。

あいつの誇りも既に埃に形質変化しているのだろう。


「いや、俺は元気だぞ」

「でも、どうみたって……」

「いや、俺は元気だぞ」


突然、遠くからラミの声が聞こえる。


「晋也ー!ちょっと料理を溢したから舐めなさい!」


「ハイヨロコンデー!」


晋也はたちまちのうちに某居酒屋のような雄叫びを上げ、ラミの方へと飛んでいった。


あれが幸せなんて……。なんて不憫な奴なのだろう。


そうこうしている内に、周りには見知らぬ大人たちが立っていた。

皆、いかにも使用人というような風体をしている。


「す、すいません。和巳様……」

「はい……。何か用ですか?」


僕が返事をすると、周りがざわめく。

しゃべったぞ、とか話しかけられた、とか。僕が宇宙人かなんかのような扱い。


まあ、異世界人だから、間違ってはいないけど。


「い、いえ……。本当に別の世界からいらしたのでしょうか?」

「ま、まあ。そう思いますが」


また、それに答えると周りがざわめく。

向こうの世界ですって、とか質問に答えていただけました、とか。


正直、物珍しいのは分かるけど、見せ物にされているのは良い気分ではない。

僕がウサギならとっくにストレスマッハで死んでいる。


「で、では……」


「こらぁ!働け!」


そんな中、怒声が鳴り響く。最初は自分に向けたものかと思って身構えたが、どうやらそれは周りを囲んでいた召し使いとおぼしき大人たちに向けてのものだった。


貫禄のあるしわがれた大声に思わず召し使いさんたちは散り散りに去っていく。


「……ったく。客人をもてなせと言っておろうに」


声の主を見ると、いかにも英国紳士という格好の白髪のお爺さんだった。


「あ、あの……」

「おお。これは。驚かせてしまいましたか?」

「い、いえ」


僕はというと、その老人の醸し出す厳粛さにすっかり萎縮してしまっていた。


「あら、和巳さんと、タボ爺!」


そこにサラさんと京二がやってくる。どうやらこのご老人はサラさんの知り合いらしい。


「おう、和巳!こんなところで何やってんだ?肉、なくなっちまうぞ!」

「ああ。京二。ちょっとこのご老人に助けてもらって。あと野菜も食べなよ」


ご老人と聞いて、京二がその人に注目する。


「ああ。この人はタボル・エデリック。召し使いの長のような者ですわ」


サラさんが紹介してくれる。


「ご紹介に預かりました。サラ様に仕えております。タボル・エデリックと申します。今後ともお見知りおきを」


すると、そんなタボルさんを見て、京二は驚いているようだった。

まだ、サラさんがお姫様だって信じていなかったのか……。


「や、やっぱり!お前……」

「ようやく理解していただきましたか……。私は正真正銘、」「奴隷商人だったのか!」

「なんでそうなるんですか!」

京二はあまりにも認めたくないのか、いらぬ勘違いをしていた。


「奴隷商人!ぜひ私めをご購入ください!そして思う存分こきつかってください!」

「わ!晋也!どこから湧いて出た!?」

「奴隷。俺を呼ぶにはその言葉だけで十分さ……」


変態。彼を呼ぶにはその言葉だけで十分形容できることを知った。


「き、貴様!奴隷という言葉で晋也を人質にとるなんて卑怯だぞ!まとめて倒してやる!」


どうやら晋也にも慈悲はないらしい。


「京二さん!それボケですよね!ボケなんですよね?!」


サラさんが必死に確認をとっている。残念ながら京二の反応はボケとは思えない。


「お、お嬢様を奴隷商人呼ばわりなんて……!不肖タボル。いざ参る……!」


そして雇い主を貶されたのが許せないのか。タボルさんがそう呟いた瞬間。


タボルさんの姿が視界から消えた。




「ちっ!あの爺さん強すぎんだろ!」


数分後、タボルさんの襲撃を受けた晋也と京二は医務室にいた。僕はそれの付き添いだ。


「はっ。京二もあんなお爺さんに負けるなんてまだまだだね」

京二を鼻で笑う。


「あぁ?じゃあ、お前なら勝てるのか?」

「当たり前だよ。少し相手が疲れていて怪我をしていて人質をとられているだけで僕は勝てるよ」

「どこが“だけ”、だよ」


まあ、そんな冗談しか言えないくらいにタボルさんの動きは速かった。

そのあと腰をやっていたようだが。


「……俺だってあと20年あれば……」


京二が負け惜しみを呟く。


それで勝ったところで勝因はタボルさんの老衰だと思う。


「はあ……あんたらね。タボ爺に勝とうなんて、無理よ」


ラミがはっきりと断言する。


「あの爺さんはね。戦ったあと絶対に腰をやってしまうけど若い頃はこの世界の最強だったんだからね」


腰をやった後なら勝てるのでは、と思ったけどその思いは心の奥底に押し込めた。


「へえ。あの爺さんが最強、ね。まあこの怪我じゃ認めざるおえないけど……」


晋也が呟いた。その顔は不満そうだ。

京二に巻き込まれたようなものなのだから仕方ない。


さすがに晋也もそのMが守備する範囲には老人は含まれていないのだろう。


「あーあ。せっかくのパーティーで女の子に罵ってもらえると思ったのになぁ」

「なんでパーティーだからという理由で罵られるんだよ……」


晋也の意味不明な言動にツッコミを入れる。


けど、実際残念だったのは僕も同じだ。せっかくのパーティーを途中退席なのだから。


「けど、ちょうどいい機会です」

「あれ?サラさんにミスズ?」

どうして二人がここに?


そんな疑問をよそに京二はさっきの言葉を追及していた。


「いい機会?なんのことだ」


「それはもちろん、あなた方をここに喚んだ理由です」


核心に迫るような発言に一旦、静寂が場を支配する。


「……話してくれ」


京二が説明を促す。僕も興味深々だ。

晋也はもう知っているのか、あまり深刻な表情をしていない。


「はい。そのためにはまず、この世界における神の存在について説明しなければなりません」

神?宗教事か何かなのだろうか。


僕のそんな考えを表情から読み取ったのか、サラさんがそれを否定する。


「神といっても何かの象徴ではありません。実際にこの世界には神がいるのです。……この世界はあなた方の世界より劣っているという話を神から聞いたことがあります。あなた方の世界は神の庇護下になくとも存続できる。少なくとも今まではそうしてきたはずです」


確かに未だに僕らの世界は大きな問題を持っているけど、神の介入のようなものはなかったはずだ。


少なくとも神は概念。誰も会ったことのない遠い存在だ。


「けど、私たちの世界は神のサポートなくては存在することすらできません。神はあなた方の世界のように完璧な世界を作ることができなかったのです。だから、この世界は神の作った未来、そのレールから外れることなく存在しています。……そこから外れてしまうとすぐに滅んでしまうから」


神の存在は信じにくかった。

現に僕らは神に会ったことはない。


けど、異世界の存在はある程度の非現実的な現実を信じやすくしてくれた。


「けど、ないんです。そのレールが」


サラさんが陰気に呟く。


「そのレールが存在するか如何はこちらから確認することができるようになっています。……神にもしものことがあったときのために。そしてそれは起こりました。私たちは神に会いにいかなければなりません。その際に、」


サラさんが一つの古書を取り出した。

紙は既によれよれで立派に現存しているのが不思議と言えば不思議だ。


「神は一つのマニュアルを残していました。異世界からの召喚です。……神はそちらの人間を完璧に作りすぎたと言っていました。こちらの世界において、あなた方は……桁外れに強い」「けど、強くある必要があるのか?神は会いにきてほしいんだろ。だったら、」


サラさんが京二の問いに首をふる。


「……このような件は一度だけ前例があります」


サラさんがその前列について話した。


「その時も三人のそちらの世界の方をこちらへ喚んだ、と古い文献にありました。その時はもちろん神に会えましたし、三人も自分たちの世界へ帰れたそうです。ですが、その時も今もなぜか神を護るメカニズム。獣たちは止まっていないんです」


帰れることには帰れるらしい。

でも、強い人って言ったら。


湧いてきた疑問をぶつけてみる。


「でも、タボルさんの方が僕らより全然強かったけど……」

「それはね。“魔法”なのよ」


ラミが僕の疑問に答えてくれる。


「魔法?」

「ああ。どうやら俺たちは桁外れの魔法を使うことができるらしい。それが俺らの異世界における“強み”らしい」


晋也が説明する。


普段なら腕のいい精神医を紹介するところだけど……。


「その、どうか信じてもらえると……」


「信じるさ」


京二がそれに応える。


「だって異世界だもんなー!魔法くらい使えて当たり前だよな!」

「ああ。京二。魔法くらい序の口だよ!きっとスライムとかゴーレムとかもいるよ!」


僕らはその説明を頭ではなく体で適応していた。

魔法といわれてテンションの上がらない中高生はいない。


「良かったね。サラ姉。この人たち適応力高いよ」

「その代わりにかしこさが低そうですけどね……」


端の方で姉妹が呟いていた。


「魔法!魔法使えんのか?今すぐ?」


京二の子供のような視線にサラさんがたじろぐ。


「い、いえ。まず儀式で魔法を呼び起こさないと……」


「儀式!?」


僕も子供に還って騒いでいた。


「晋也はもう儀式やったの?」

やったなら嫉妬でコロス。


何しろ友達同士は平等が一番だからね。


「お前らに殺されそうだから抜け駆けはしてないぞ」


賢明な判断で何よりだ。


「では、儀式を行いましょうか……」


「「「儀式!!!」」」


三人は小躍りしながらサラさんについていった。


「はぁ……。バカばっか……」

去り際にミスズがそう呟いたのが聞こえた。




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