幸せなひと時
パリスに連れられて『蝶屋敷』に行ってからよく行くようになった。
高校もアゲハの家の近くというのもあり、ほぼ居候になってしまった。
毎日、アゲハの息子のハルやパリスと散歩したり、工房で働く聖の手伝いをしている。
家を出れて小さい頃からいる町をでてほっとした。
「見て見てアゲハ、超可愛いだけど。あんな生意気なガキに着せるよかナオに着せるほうが良くない?」
アイドルやらの衣装を手がける聖の手伝いをしている。
片親しかいなくてしかもバンドマンでほとんど家にいないなら住んじゃえとアゲハが強引に引き取ったというのが事実だが。
アイドルのための衣装は身長も同じだからと聖がためしにと言うとアシスタントのマイさんまで張り切って本業の練習と言ってメイクからヘアーまでしたので鏡の中の自分にビックリだ。
「あら誰かと思ったらナオちゃんだったのね。着る物でかわるね、このままスタジオいかせたらスカウトされそうよ。」
フリフリのドレスなので恥ずかしい。
パソコンから顔あげてアゲハがカメラまで持ってきた。
「でしょう。こないだの着物だとセクシーだけどこれだとキュート。あっおっさん見てやって可愛いだから。」
ちょうど帰ってきたパリスも捕まえておおはしゃぎだ。
「可愛いなあ。ワッごめんウミ。」
きいをとられて足元のウミにつまづきウーといわれる。
「母さん原稿…てごめんお客さんだった。てナオだし。ビックリしたあ。」
アゲハの息子の春樹が顔だしておどろく。
「ハルくん横たって。いい感じこんどのファッション誌につかおうかしら。どうせまた気にくわないとかいわれて作り直しになるんだろうし。」
パリスも優しい顔で整った顔だが手足がスラーと長い春樹はモデルみたいだ。
「聖、こんなの雑誌モデルにしてもしょうがないって。」
アゲハの言葉に春樹が肩をすくめる。
「俺のほうがよくないか?」
パリスが横に立つ。
「あんたじゃなんかねえ。親子みたい。」
ブッとアゲハが吹きだす。
「失礼な俺はそんなに年じゃない。」
聖はアクセサリーの確認しなきゃとつぶやきながら部屋から逃げていった。
「やっぱり気にくわないとかクレームだし。ほんと生意気なガキ。」
マイが足音荒くしながら現れる。
「あたしもゆうつ、あのメガネザルにまたせかされるし。」
アゲハも文句いいながらパソコンの前に座る。
「ハル、お茶と甘いもの。」
ソファに腰おろす。
海を撫でていたハルがお茶をとりにでていく。
母さんもマイさんも俺のこといいようにつかうだからと、ナオになげきながらもいやと言わずやるハルだ。
優しいお姉さんとお兄さんとお母さんがいっきにできたみたいで嬉しい。
高校生活は不安だけどここにいるだけでいい、ナオはそう思った。