表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハルシオン  作者: ずかみん
9/37

ああいう種類の狂犬

 モーリスが『戦車』で攻撃をする様子が、モニターに映っていた。

 相手はニュースで見るような、よく知られた形の戦車だけれど、モーリスが操作しているのは、バイクに両サイドの車輪を追加したような、華奢な構造の車だった。


 モーリス自身は、脳に直接情報を投影するヘッドセットを身に着けて、戦車を操作しているのだけれど、わたしにもその様子が見えるようにと、平面のモニターに戦闘の様子を映してくれた。


 戦車と呼ぶには、華奢で壊れやすそうな形をしていた。細身で、バイクのようで、ミサイルだけを抱えて『カミカゼ』みたいに突っ走る車だ。


 機体は、砲弾を受けてばらばらになった。普通のニュースでよく見かける形の戦車に、一撃でばらばらにされた。


 弱いんじゃないの? こんなに繊細な兵器って、ありうる?


 モーリスが顔に似合わない罵り声をあげて、頭に被ったヘッドセットを投げ捨てた。その王冠みたいな機器を接続すれば、脳に直接画像や、音を送れるらしい。少し前に実用化された軍事技術だけれど、実はゲーム機の方が五年は進んでる、とモーリスは言っていた。


「やられちゃった?」

「うるさいな。ぼくは筋肉頭の軍人じゃない。武器なんか使ったことない、仕方ないだろ」

「怒らないで、ただのゲームでしょ?」

「ただのゲーム? ぼくの芸術をただのゲームだって? ふざけるなよ。ぼくが扱うのは超現実だ。現実の上をいく現実だよ。ぼくはまぎれもない本当の戦場を、このサーバーの中につくった。スケールダウンすれば現実にも応用可能だ。わかるかい? 現実の方がぼくを追うんだ。決してその逆じゃない」

「……悪かったわ。よく分からないけど」

「馬鹿にするなよ」


 モーリスの目つきが少しおかしかった。ケモノみたいに吊り上がっているし、すこし充血している。逆上しているのだと気付くのに、少しかかった。母の言葉を思い出した。


 気をつけるのよ。あの子、時々、感情をコントロールできなくなる。わたしにはわかるの。ああいう種類の狂犬を分析するのが、わたしの専攻だから。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ