気持ちの悪い違和感
わたしは、メリッサの作った夕食を食べなかった。
それはとても手が込んだ料理で、料理好きという言葉だけでは片づけられない愛情に溢れていた。
でも、全部無駄になった。メリッサ自身は、いつもつまむ程度しか食事を口にしない。これは、わたしの為に用意された料理だった。
メリッサは、べつに腹を立てずに、わたしのおでこに頬をくっつけて言った。
「じゃあ、これは冷蔵庫に入れておくわ。おなかが減ったら教えてね。すぐに温めるから」
「食べないわ。わたしはもう、メリッサの作った食事は口にしない」
「……そう。でも大事な体なんだから。食事はしなくちゃ。あしたは他の誰かに用意させるわ」
「怒らないの?」
「……怒る? どうして?」
メリッサは、きょとんとしていた。
その反応には、何とも言えずに気持ちの悪い違和感があった。なにかが少しずつ壊れているような気がした。
部屋を出る前にキッチンを振り返ると、メリッサは一心に自分の手の平を見つめていた。まるでそこに、わたしが料理を口にしない理由があるとでもいうように、ペーパータオルでこすったり、指で拭ったりしていた。
それが、二時間前の出来事だ。




