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ハルシオン  作者: ずかみん
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わたしの秘密の場所

 どんな方法をつかったのかわからないけれど、モーリスはわたしに銃を手に入れてくれた。

 その荷物はテニスラケットと伝票に書いて、宅配便で送られてきた。ずいぶんと重いテニスラケットだ。配達人は首をひねったに違いない。

 

 この国の法執行関係者の間で、もっとも広く使われている銃だと、モーリスが教えてくれた。

 ベッドの上で荷物を開封すると、銃はプラスチック製のケースに入っていた。弾丸はそれとは別に紙製のケースで、百発入りが五箱あった。

 付属品は、予備の弾倉(マガジン)が二つと、弾倉に弾をこめる道具(ローダー)と、銃身の掃除をするブラシだ。その名前も、説明書を読んで初めて知った。


 説明書に目を通すのに三十分かかった。

 その後、銃をバックパックに隠して、森へ入り、開けた秘密の広場へたどり着くのに二十分。雑草が刈り払われた広場に倒木を引きずり出すのに三十分。その上に六つの空き缶を並べるのに、二分かかった。


 この場所は、山肌の滝のそばに有る。観光客が怪我をした時にヘリが着地する為の場所なので、年に何度か手入れをされている。


 紅葉に覆われた滝を見下ろす場所にあって、けっこうな絶景なのだけれど、バーモント州の紅葉はどれほど美しくてもありふれた光景には違いなかったので、あまり観光客はいない。滑落して怪我をするのは鹿くらいだ。

 一人になりたい時の、わたしの秘密の場所だった。


 水筒につめてきた紅茶を飲んでから、ローダーを使って弾を込めるのに、さらに三十分かかった。慣れない作業なので、まだ一発も撃っていないのに指の皮がむけた。


 弾を撃つ前に、心が折れそうだった。

 最初の一発は、説明書を読みながらなので、おっかなびっくりだった。

 二発目は、慎重に狙いを定めたけれど、弾がどこに飛んでいったのかも分からなかった。


 それから一時間、ずっと弾を込めては撃つ作業を続けているけれど、六つの空き缶は、少しも変化がなく同じ場所にあった。ヒステリーを起こしそうだ。

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