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ハルシオン  作者: ずかみん
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最新の「暴力」

 モーリスは、わたしを地下のガレージに連れていった。見せてくれたのは、昨日、母とコンラートが眺めていた、あの機械だ。


 かけられていた白いシートを取り除くと、その機械には四つのタイヤがついていて、バイクみたいな形をしていることが分かった。バイクの両脇に補助輪がついているような格好だ。


「きっかけは、ミサイルの設計(CATIA)データ流出だよ。ニュースになったんだけど、知ってる?」


 そのニュースは見たことがある。多額の開発費を投じた兵器に関する設計データ流出は、大きなスキャンダルになって、先進国では産業スパイを取り締まる法律が厳しくなったそうだ。


 フランス政府はカンカンになって怒り、EU圏の国は共同で捜査をしたけれど、とうとうその愉快犯を逮捕することは出来なかった。


「フランキスカ……ミサイルの名前だよ。画像認識で追尾する、最新の携帯型対戦車ミサイルだ。日本やアメリカにも同じようなのはあるけど、機能の多様さでいうなら、こいつが最高だ」

「フランキスカ? 可愛らしい名前ね」

「べつに可愛くはないよ。フランキスカは、大昔に存在した古い民族が使った『投げ斧』のことだ。あばら骨や頭蓋骨を砕く威力はたいした物だったけど、命中精度はよくなかったらしいね」

「この上の、筒になっている部分がそうなの?」

「そう、先進国の一部の最新主力戦車以外は、モンロー/ノイマン効果で、装甲を破ることができる。流出事件の後、対戦車ミサイルは誰にでも作れる武器になった。アフリカの小国でも、東ヨーロッパの破産しかけた国でも、熱光学センサさえ外部から入手すれば、誰にでもつくることができる。それがフェアっていうもんだろ? フラット化だよ」


 モーリスはくすくすと、こそばゆげに笑った。


「実は流出事件、ぼくのオイタなんだ。だって先進国のお偉方は、最新の「暴力」を独占して、神様みたいにふるまってる。この国には「火」を与えるが、この国は「火」を使うことはまかりならん、みたいな感じだ。「炎」は自然現象だ。そこに超常的な力はなにも働いていない。料理をする為に使う人間もいれば、街を焼き払う為に「炎」を使う人間もいる。誰がどのように使おうと自由だよ。科学的知見と技術はみんなのものだ」


 モーリスは、国家や企業といった人が作る共同体に、生理的な嫌悪感のようなもの感じているようだった。


「ともかく武装を手に入れたので、ぼくたちは戦車を作ることができるようになった。機体の設計はボランティアたちがしてくれた。世の中には、会社との契約で、思う存分に自分の腕をふるえない技術(ギー)馬鹿()が、たくさんいるからね。連中はフラストレーションのはけ口を求めていた。次は武器を操る兵士だけど、こいつはちょっと厄介だった」


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