序章
手くせの悪い人たちの国の話をしよう。——そういう国があるとしたらっていう、もしものお話だよ。
その国の人たちは皆、手くせが悪い。手紙をそのままだすと勝手に中身を読まれてしまうし、品物はくすねられてしまう。だから絶対に壊れない箱に入れて、絶対に破れない錠をつけ、鍵をかけて送る。そうすれば大丈夫だ。
さて、お父さんがこの手くせの悪い人たちの国へ旅をして、そこから家に手紙を送るとする。
だってお前やお母さん、エリスに会えないのは寂しいからね。うんと長い手紙を書いて、ついでになにか素敵な贈り物もたくさんつけて送ることにした。そうだね、お前には地図や本がいいかな。
ところが最初に言ったように、この国の人たちは手くせが悪い。錠をかけた箱に入っていないものは盗られてしまう。
そこでお父さんは絶対に壊れない錠と鍵と、箱を手に入れた。そして手紙と贈り物を箱に入れて、錠に鍵をかけた。
もちろん、お父さんは旅先で錠と鍵を手に入れたんだから、お前たちはお父さんの持っているのと同じ鍵は持っていないんだよ。
さあ、ここで問題だ、トゥーレ。
この手紙と贈り物が、無事にお前たちの手に入るようにするためには、どうすればいいかな?
考えてごらん、トゥーレ。お前ならきっと解けるよ——。