3)自己紹介
三番手を書かせて頂く、藤 結有です。 つたない文章ですが、物語が伝わってくれると幸いで す。 では、どうぞっ!!
「あ、えっと……じゃあ」
と、僕は席を立った。
「お、来たぞ」
「目立ってたやつか」
「同じクラスだっ たの?」
「あいつじゃん」
なんか、有名になってて少し複雑な心情なんだが。
そんなモノは聞き流してポイだ。
「僕は、弧達翼です」
「「「たっち~~!!」」」
おい。
なんだ?
入学式で立っていたのと、弧『だち』 を掛けているつもりなのか?
まぁ、気を取り直して。
「で、趣味は――「たっちーはずっと立ってるのが趣味 でーす」」
おいっ。
誰だよ被せた奴。
さっきから邪魔してきていますが、僕の知り合いですかッ!?
いや、修也ではない。
「はいはい。じゃあ次――」
西澤先生が言う。
てか、先生ッ!?
地味にスルーしないでくれますか?
そんなキャラが立ってしまいます!!
と、まぁこんな感じで、他クラスにも何気に『弧達 翼』という人名が知れ渡っていたそうであるが、それを知るのは、まだ後のことだ。
次々に自己紹介が行われていくのだが、翼以上にいじら れた人はいなかった。
逆に、初対面であるはずなのにここ までいじられると、誰が予想したであろうか。
――――――ガラガラガr
そうやって考えていく内に残りが半数になっていた。
が、その時、教室の扉が開いた。
教頭先生が廊下に立っていて、そして西澤先生に視線を 送って手招きする。
「ちょっと待ってね」
先生がそう残してから廊下へ出た。
――修也を見れば、 早くも近くの女子と話していて少し取り残された感がすご い。 そして、縦肘をついて一心に黒板を眺めていた。
数分後に先生が帰ってくる。
「おい、たっちー。君に会いたいという生徒がいるそう だ。行って来い」
ちょ、たっちーやめてください。
浸透してしまったらど うしてくれるんですか?
というか、誰だろう。
先生に「僕ですか?」と確認すれ ば「そうだ」と返される。
修也を見た。
唯一人のこのクラスの友人を見ると、にた りと口角を釣り上げて嘲笑う。物凄く悔しかった。
これが、最初に高校デビューに失敗した例と成功した (?)例の差だ。
翼は教室を出た。そこには教頭先生が 待っていたようで、「ああ、来たね」という。
「さあ、コッチだよ」
と、案内された。今日来たはずの学校には一方的に知っ ている生徒会は例外として、知り合いは居なかったはずで ある。
そう思った。 教室から下駄箱方面に行き、そこ辺の階段を上がって正 面に職員室。
そこに向かって左側にもう一つの階段があっ た。
教頭に着いて行くのは良いのだが、会話がない。
その階段は細く、人が一人入るのがギリギリ。
横になれ ば空間はあるだろうが、不便に変わりはない。
その階段を上りきった所の突き当りに、一つだけ扉が あった。
「ここだ」
その扉には手書きで『特別教室』と書かれた紙が貼って あった。
「………」
その雰囲気に、変なオーラ染みた何かを感じていると、 「失礼するよ」と前を行っていた教頭が扉を開けた。
それ に続いて「失礼します」と中へ入った。
「やぁやぁ。やっときたね、待ちくたびれたよ弧達く ん……いや、たっちーと呼ぼうか」
「弧達でいいです」
瞬間返した相手は、いつぞやの女生徒だ。
なんか、僕の 脇腹に手を突っ込んでくれてた女子。
と、彼女は足を組んで『特別教室』に一組しか無い椅子 にすわっていた。
その脇に二人、この学校の生徒会長と副 会長が壁に寄り掛かり、腕を組んでこちらを見ていた。
彼女の椅子の正面に出してある机に、『弧達 翼』と名 のある学生証。
通帳とリンクしていて、こ のカードでこの学校内での買い物ができるそれが、置いて あった。 あれ?
そのカードはポケットに入れていたはずでは無 かったか?
「このカードはちゃんとカードケースに入れないと。ポ ケットじゃあ盗られてもしかたがないぞ」
その女生徒が言うと、脇に待機していた生徒会長が近づ き女生徒に耳打ちする。
「カードケースは入学式後に配布される物です」
「ああ、失礼。まぁ、このカードは返そう」
「そうして下さい」
「そうだよ。私は君に頼みたいことがあるんだよ。だから 呼んだ」
彼女は、少し小悪魔じみた笑みを作って言った。
――――――――――――――四月八日。
入学式当日の日。
その日に頼まれた依頼を、今更ながらに引き受けなけ ればよかったなぁとしみじみ後悔する。
けど、もう遅かった。
既に事後だ。明日からが辛い が、辛抱すればいつか………。