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12)体育祭1

二周目! 燐肖から改名しました、風見鳩です! 今回は中二病全開です、中二病満載です! ……はい、すみませんでした、反省はしてません。


俺が裏生徒会の雑用係(?)となってしまい、一週間ほどが過ぎた。

 一週間の間、事あるごとに俺は星宮先輩から呼び出され色々な仕事を任せられるという、ブラック企業のような気分を味わっていた。


「よく来た、たっちー」


 そして本日も、例のごとく俺は『特別教室』へ出勤している。


「今回はなんですか? またロクでもない仕事じゃないですよね?」

「酷いなあ、たっちー。私がいつ、君にロクでもない仕事を押し付けたのかい?」

「いつだってそうだったでしょうが!」


 別に裏方を死ぬほどやらされているわけではなく、むしろ表舞台の仕事ばっか押し付けられている。

 今まで特に目立つことのなかった俺としては拷問であり、何度裏舞台の仕事に憧れたのやらである。


「ぐすん、怒鳴らなくたっていいじゃないか……姫ー、たっちーが私を苛めるよおー」

「知りません、自業自得でしょう」


 嘘泣きをする星宮先輩に、バッサリと切る白岡会長。星宮先輩も会長みたいにしっかりして欲しいなあ……。


「で、なんですか? また何かの演説ですか?」

「いやいや! 今回は主に裏方だよ!」


 おや。

 てっきりまた何か黒歴史を刻まれると思っていたのだが……これは意外である。


「……まあ、聞きましょう」


 『裏方』というキーワードに反応した俺に、星宮先輩は満足そうに頷く。


「今回の仕事は……体育祭の準備作業だ」

「体育祭?」


 星宮先輩の言葉に俺は首を捻る。


「体育祭って……あと一ヶ月後ですよね?」

「わかってないなあ、たっちーは」


 問いただす俺に対し、星宮先輩はチッチッチと指を振る。


「君達一年生が初めに参加する学校の大行事だよ? つまり、一年生を楽しませなくてはならない重要な行事だ」

「……なるほど」


 確かに、そう考えると体育祭というのは一ヶ月前から行動を開始してもおかしくはないだろう。


「実というと、我々は既に三月から準備を始めている。だから、今回たっちーはそこまで難しくない仕事だと思うんだ」

「まあ、そうですね……」


 既に作業を開始されているのであれば、あらかた土台は決まっているだろう。そうなると、俺に回ってくる仕事は簡易的なものになる。


「というわけで、たっちーに仕事をお願いしたいんだ」

「……わかりました、そういうことなら」


 別に今回は目立つことないしな……と、首を縦に振った俺に「ありがとう、ありがとう!」と星宮先輩が俺の手を取ってブンブンと振る。

 と、コンコンと扉を叩く音が聞こえる。


「どうぞ」

「失礼します」


 星宮先輩の発言の後に入ってきたのは、いつぞやの金髪ロン毛男子。俺にジャンケンで負けたKOUJI様こと、椛田孝司だ。

 新入生歓迎会の後にわかったことだが……彼は(表の方の)生徒会にスカウトされていたらしい。今までも、一緒に仕事をしてきていた。


「会長、体育祭の資料についてお聞きしたいことがあると体育委員が……」

「ああ、今はちょっと用事があるから後で直接お伺いしますと伝えておいてちょうだい」

「わかりました」


 補足するまでもないが、ここでいう『会長』というのは白岡会長である。

 星宮先輩も一応会長なのだが……未だ、俺は彼女を『会長』として認識できていない。呼び方も白岡会長と被ってややこしくなりそうだし。


「ああ、それとこの資料を剣子に渡しておいてください」

「はい…………では失礼しました」


 と、孝司は一度俺の方を睨むと教室を出て行く。

 出会って一週間しか経っていないせいもあるが、未だ彼とは仲良くなれそうにないようだ。


「さて……たっちーも今日はいいよ。とりあえず仕事は後日伝えておこう」

「あ、はい。わかりました」


 いつもと違って、あっさりと終わってしまい拍子抜けだったが……まあいいか、早く帰れるんだし。


「では失礼します」


 俺はそう言って特別教室から出ていき、帰宅するのであった。



 ***



 たっちー、もとい弧達翼が去った後、星宮景里はふう、と息をつく。


「……で、用事って? 私の知る限り、姫に用事なんてなかったと思うんだけど?」

「いえ、あなたに用事があるんですよ、景里」


 白岡姫乃はそう言って、すっと目を細める。


「あの少年……弧達に執拗に構いますね?」

「なんだ、嫉妬しているのかい?」

「そういうことじゃありません」


 生徒会長(ひめの)裏生徒会長(かげり)を睨みつける。


「弧達に対するあなたの執着度は異常です」

「…………」

「そこまであの少年に――何か、あるんですか?」


 星宮景里という人間は、基本的にどうでもいい人とは距離を取る。大半は知人以上友人未満の関係で、白岡姫乃や三津山剣子のような関係はごく少数なのだ。


「嫌だなあ、姫。それじゃ私が冷徹な人間じゃないか、私は誰に対しても優しいぜ?」

「……答えてください」


 ふざけて誤魔化そうとする景里に姫乃は口調を強くする。

 景里はやれやれと肩を竦めると、ギラリと白い歯を見せた。


「何かあるなんてもんじゃない。彼は希望の塊だ……いや、奇跡と言った方が早いね」

「奇跡……私にはそうは見えませんが」

「ふふっ、姫もいずれはわかるよ」


 そう言う景里はいつもと雰囲気が異なっていた。

 獲物を見据えるかのような強い眼光と、獲物を仕留める為の(きば)、そしてただならぬオーラを纏っている。


「あの子は私――いや、姫をも超える逸材だ」


 姫乃がピクリと眉を動かす。

 超える。あの至って普通にしか見えない少年が――自分たちを超える。


「彼はいずれ、この学校を変える存在となる」


 私達の先代たちがそうしたように。


 景里の瞳に映っていたのは特別教室の隅。

 物置として使っているロッカーの中に、静かに眠っているもの。


 右腕部分しかない白い学ラン――初代裏生徒会長の学ランが目覚める時が来ると、景里は確信していた。

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