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10)新入生歓迎会6

どうも、藤です。今回は、少し順番が変わりましたが、僕が担当させていただきます。

 生暖かい目で、クスリとしていただければ幸いです。では、どうぞ

 kouji様、こと椛田孝司は、壇上の縁から少し進んで、俺の居る台の前まで歩み寄ってくる。

 その時に、ギンっと睨まれるのだが、自分はそんなkouji様に何をした覚えもない。唯、半強制的にスピーチまで持って行かれただけなのに、睨まないで、怖い。


 近づく距離はだんだん狭くなっていく。え? 俺に気があるの? なんて思うわけもなく、考司が俺の前にあるスピーチ用のマイクを目的としていることが分かると同時にそこを飛び退いた。

 難なく手に入れたマイクを口元に近づけると、ポンポンっと反応するか確認した。てか、今の今まで俺が喋ってたのに、そんなところは律儀だから少しは女子ポイントとかあるんだろうなって思った。

 「あー、あー」と、再確認して、しゃべりだす。


「さぁぁあ、コイツと俺様。どっちがこのスピーチに向いているか、決着をつけようと思うが、異論あるやつ…………は、いねぇな」

 

 あたりを見回して、なんの茶番だよって笑っている一年生に手を上げている人とか居ないかを確認。

 ほんっと、性格が出るよなぁって思っていると、それが終わったと見える考司が、俺に人差し指を突きつけて


「じゃぁあ、勝負と行きたいが、投票するにも俺様が絶対的に勝つことは決定しているのだから別種目で勝負してやるよ。だが、俺様はオセロでも将棋でもチェスでも金ころがしでも積み将棋もはさみ将棋も……何でも完璧にできちゃうのだから、簡単に勝てるとは思わないことだぁぁ!! ってことでお前に決めさせてやるよ」


 と、またまた女生徒の声援が聞こえた。

 それに、三津山副会長を見てみると、半口開けて「わぁ」って言いたげに、両手を胸のあたりでぱちぱちと拍手しているからまたもや、がっくりだよこのやろう。

 てか、何をすればいい?

 思ったが、コイツ将棋系が多くないか? まさか、ボードゲーム系タイプ? いやいや、全部できるだろって。

 

 俺は少し怖気づいたように頭を抱えて考え込んだ。

 

 何で勝負すれば勝てるのだろう。……運ゲー、といえば代表――――じゃ……じゃんけんか?

 その前に、だよ。スピーチしたいだけならあげるよ? その権利。俺も唯で手に入ったし!?


 そこで、ガタリと椅子が倒れたような音がしたので、考司と俺は、瞬間的に音の方を向いた。

 

 ニヤリと白い歯を剥きだしている星宮先輩。少し不気味な笑みをその表情に浮かべている。気味が悪いし。

 ぱたぱたと、小走りで俺と考司の二人の中心に立って、考司から無理やりマイクを取り上げた。もう一つ予備のマイクがそこにあるんだからわざわざこっちを使う必要……。もちろん、そこ、とは考司が一つ目のマイクを取った台の上に、だ。

 offにして置いてあるのだ。演出をしているのか、それとも、単に忘れているだけなのか?


「お~。これはこれは面白いことになったじゃないか!! 『たっちー』」


 ちょ、ま。こんなに生徒の居るところで『たっちー』は!? なんの公開処刑ですか? 

 クラス以外の人にも広まるじゃないですか!! なんて心配をする内に、話が先に進みそうだった。


「此処は、二人にはこれで勝負して貰おうじゃないか―」

 

 って、ステージ背後のスクリーンに、光が灯った。

 そこに、文字が書いてあるのだが、ここからじゃ近くて見えない。でも、英語だし……ローマ字? ☆って何?


「そーーーう!! JA☆N☆KE☆N だーーーー!!!!」

 

 じゃんけんきたーー(棒)

 その勝負の名前が呼ばれた瞬間に俺は、心の中で「やめちくりーー」と叫んでいた。

 俺は心理戦が一番嫌いなんだ。だから勝負で何をするか考えていた時に外そうとしたのに。

 なんてこと、星宮先輩って分かってやっててそうだから嫌いだよ。女の娘って、顔が七割を占めてるって言われるけど、こんな美女ってひどくないか?




 三回勝負になった。三回勝負ってなんかキワドイよね。一回勝って、もう一回勝てればその時点で勝負は着くわけだけど、そこで一回負けると一勝一敗で三回戦目に突入する。

 それって、なんとなく、プレッシャーに弱い俺の、ペーパーハートがグチャグチャになりそう。


 心理戦開始。

 もう、最初って何出してもいいわけだけど。だって、負けても勝っても後にはほぼ響かないし。残りを二勝するか、もう一回負けるか。

 つまり、詰んだわけだ。そう、じゃんけんというのはもはや運じゃ無い。響かないじゃねぇよ、響きまくり。

 既に俺は、額に汗がだらだらと流れてきた。

 そこで、一つの噂にかけてみることにした。力の入ってる奴が最初に出すのは、『グー』であるという、ガセネタっぽいそれ。


 星宮先輩の合図で始まる


「一回せーーん!! さーいしょはーーグー  ジャーンケーン 」

「ポイ!!」俺はパー

「おりゃ」考司は、グー


「あ、やった。勝った、勝てた」


 なんて、汗を拭って俺は、軽く一回の勝利を喜んだ。

 そう、あの噂は本当だった。いつか聞いた、伝説だった。ああ、メシア。もう一度、俺に勝利をもたらせ――!!


 


 って、願ったのが失敗だったろう。負けた。


「ハッハッハ。この俺様が負けるわけは無いんだよぉ」


 ついさっき、伝説の噂で負けた人が何を言う。そして、さっき気づいたのだがスクリーンってば、この勝負の光景を拡大して流してたのね。

 妙にざわざわしてると思ったわ。 でも、こんな長ったらしいじゃんけんを見てて飽きないのか? この学校の生徒は少しおかしいのか?


 そして、ステージしたに目線を動かすと一人の生徒がこそこそと動いているのが目についた。

 ――――修也だ。何してるんだあいつ。

 耳を澄ませば少しだけ、修也のやり取りが聞こえた。

 「どっちが勝つと思うかい? 旦那。たっちーだと五倍。koujiだと二倍だぜ? どっちにする?」

 賭け事が行われているらしい。しかし、俺が勝てるとは思ってないのか? てか、勝利は三分の一。どちらも同じっていうのに、俺がプレッシャーを感じていることがスクリーンを通して分かるっているのか?

 それはそれで大問題。


「そしてーー。三回せーーーーーん!!」

「「「「じゃーんけーーん」」」」

 皆が一体になった瞬間、そして、勝負が決まった。


「ぽん!!」ぱー

「勝つ!!」ぐー


 つまり、どっちがって言えば。

 俺が勝って、考司が負けた。

 

 全力でこの勝利をkouji様に献上奉りたい。凄く要らない。要るわけない。こんな、皆の前でスピーチするなんて。

 ふと我に返るとそう思うのだ。どうして、この勝負を受けてしまったのか。

 最初から蹴っとけばよかったじゃぁないか。


「ノォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!??」

「「「コウジ様ァァァァァァァァ――――――――」」」


 そんな、女生徒が叫び考司は、その場でへたり込んだ。

 なんか罪悪感。

 しかも、この苦痛。スピーチ用紙はさっき、この金髪がビリビリに破いたし。それをかき集めるのは少し、醜態だし。


 そんな時、星宮先輩が一枚の紙を俺に渡してきた。

 器用に、便箋に書いてある。ウィンクをして少し可愛らしく。でも、性格はすげー黒いけどな。

 

 まぁ、優しいって今回ばかりは感謝せざるを得ない。なので、内容なんて読まずに、そのまま声に出してマイクに読み始める。



「俺はたっちーです。本名は、弧達翼っていいます~☆(ここで照れ隠しっぽく舌を出す)

 みんな知ってると思うけど、俺は入学式で目立とうとして立ってみたんだけど、どう思った?

 そう、俺はたっちー、いつでもどこでも立っていたいのさっ☆彡――――――――――――――――って、何読ませてるんですか!? 星宮先輩!?」


 先輩はカーテン裏で――一年生たちには見えない――後頭部に手を回して、関係ないって感じで顔してるしね!?

 何? 俺がスベったってような空気。 いつの間にか金髪野郎はステージ下に降りてるし。

 イヤだー、こんな空間、どうにかしてくださいよぉ―。


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