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9)新入生歓迎会5

どうも、おもちです

実は今回の話、もともと7話の後、つまり8話用に書いたものを8話の後用に訂正したものです

そのため若干辻褄の合わないとこがあるかも……許してちょ

リーダーってやつの仕業なんだ(草加風に

 マイクの前に立つ。当然俺に集まる沢山の視線、視線、視線。

(うわあ……)

 副会長からエールをもらったとはいえ、やっぱり物凄い緊張とプレッシャーを感じた。耳たぶの裏が熱くなるのを感じる。

 壇上の中心に立った俺を見て、静かだった体育館がにわかにザワザワしだした。ああ、急に聴力が上がったのか、聞こえる聞こえる。あいつ入学式の時立ちながら寝てた変な奴だよな。なんであいつがあそこに? ってな声がね。しかし、あの可愛らしい副会長にあんな必死な応援を受けた以上、やり遂げねばなるまい。男として。

「えっと……」

 おっかなびっくり原稿をポケットから取り出し、チラリと生徒たちの方を見て、すぐに目を伏せる。やばい、めっちゃ見られてる……

 原稿は一応頭に入れておいたが、そんなものもうすでに吹き飛んでいた。極力視界に新入生たちを入れないようにしながら原稿を読み上げ始める。

「え、えっと、ざ、在校生のみなさん、このような楽しい歓迎会を私たちのために開いてくださり、ありがとうございます。新入生を代表して…………」

 一度読み始めるとスラスラ言葉が出てきた。いいぞ、この調子だ。このまま最後まで突っ走ってやる。

 途中、チラリと会長と副会長の方を見た。腕を組んで真顔で座っている会長の隣で、副会長が祈るように手を組んで俺をじっと見つめている。背中を押されたように感じた。

 そして、丁度半分ほど原稿を読み上げた時だった。

「てめえ! いい加減にしろよ!」

 体育館にそんな声が響き渡った。俺はぎょっとして演説を止めてしまう。

 ドスドスと大きな足音を立て新入生たちを押しのけながら、体育館の入り口方向から誰かが壇上に向け歩いてくる。両手をポケットに突っ込み、肩を揺らしながらこちらに向かってくるのは、金髪ロンゲの男子だった。うわ、めっちゃガン飛ばされてる……ていうか、どう考えても校則違反だぞその恰好は。

「一人好き勝手目立ちやがってよぉ……何様のつもりだぁ? てめぇ……」

 獲物を狙う猛獣のように俺を睨みながら、その男は一跳びで1.5メートルの落差を超えて壇上に降り立った。たじたじになる俺。

 背後からバンと大きな音が鳴る。烏妹が大きく跳躍した音だ。俺の身長の二倍以上というありえない高さまで跳躍した烏妹の右手には、なぜか一膳の箸が握られていた。おそらく歓迎会を妨害するこの金髪を成敗するために出てきたのだろうが、その箸でいったい何をするつもりだ? 下手すりゃ金髪が死ぬぞ!

「ちょ!」

 が、俺のそんな心配は無用だった。金髪は降りかかる烏妹の箸を人差し指と中指で挟んで受け止め、彼女の手から奪い取ったのだ。勢い余った烏妹が盛大にひっくり返る。

「キャ――――――!!」

 体育館のどこかから悲鳴が響き渡った。怯えてる声じゃない。いわゆる女の子の黄色い声ってやつだ。

「KOUJI様よ!!」

 コウジサマァ? もう一度金髪男の方を見ると、男は得意げに笑いながら箸を烏妹に放った。

「そう、俺様こそ第三中の貧弱サッカー部を三年連続全国制覇させたエースストライカーにして、ぶっちぎりで今年の主席の座を手にした天才にして、ピアノの天才にして、少しオカリナも吹ける、椛田孝司はなだこうじ様だあ!」

「は、はあ……」

 申し訳ないが俺は君のこと知らないよ。しかし、体育館のあちこちから聞こえる黄色い声援から察するに、それなりに有名なんだろう。

 あまりのことにボケッと突っ立っていると、手にしていた原稿をパッと奪われた。声を上げる間もなく、目の前で破り捨てられる。

「ああ! 俺が眠いの我慢して3時過ぎまで起きて書いた力作がぁ!」

 ガクリと膝をついて項垂れる。ひ、酷い……あんまりだ……

「は! お前なんかより、よっぽど俺様の方が新入生代表に相応しいだろう?」

 得意げに笑う孝司を、恨めし気に見上げる。人がどれだけ必死だったかも知らないで……! 誰かこの身勝手な男を止めてくれ。そう懇願しながら辺りを見渡すと、丁度会長が険しい顔をして立ち上がるところだった。ホッと息をなで下ろす。が、壇上裏から出てきた星宮先輩が素早く会長の肩を掴んで静止させた。ニヤニヤした顔を隠そうともしない裏生徒会長。あの人、この状況を楽しんでる! なんて人だ!

 もう頼みの綱は副会長しか……。唯一まともだと信じられる三津山さんの姿を探す。

 副会長はじっと椅子に座っていた。そして、なぜか顔を赤らめながら何かをじっと見つめていた。まさか……。恐る恐るその視線を辿ると、その先には金髪野郎が。

(ええぇぇぇ!?)

 何故だろう。凄く傷ついた。原稿破られたことよりずっと傷ついた。なんか、奈落の底に放り込まれた気分です。


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