十の段
すんごい短くてごめんなさい(ToT)
信長は愉快でならなかった。
藍の顔に嫌悪感が現わになり始めていたからだ。
この世には人を逆撫でする事に爽快感を覚える者がいる。
信長はその類だった。
何故信長は藍に執着するのか……
真の理由はここにあった。
藍が誰よりも優しく寛大で愛に満ち他者を大事にする男である事を信長はとうの昔に知っていた。
それを知りつつ、信長はわざと藍に命を下していたのだ。殺しの命を受けるたびに、ほのかに滲みでる藍の悲しげな表情が信長には可笑しくて堪らなかった。
殺したい人間は山程いた。
信長に刃向う老いた家臣、信長のやり方に口を挟んだ僧侶、信長が邪魔だと思った者はことごとく藍と優忍衆が殺した。その家族も同様に処断された。
女、子供、老人、乳飲み子まで見境なく始末された。
当時の藍には耐える事しか出来なかった。
何故なら、信長こそ己が仕えるに相応しい人物だと心から願い信じていたからだ。
そして、いつの日か信長が人の心を取り戻し、万人に愛される大名として傍らで見守りお仕えしたい。
だが結果として藍はただ信長を待つ間に無駄な血を流し続け、本当に従うべき自分の良心の声にも聞こえぬ振りを続けただけだったのだ。
(俺は本当に馬鹿だった)
藍は悔いた。