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ペース遅くてすみません。
作者はだいたいこんなものです……。
オレ様ユニコーン、オーサーと友だちになった僕。
あの後すぐ、僕は飛べるんだからいいって言ってるのに、オーサーの背中に無理やり乗せられちゃった。そして偉そうに「我が背中に誰ぞを乗せるのは初めてであるから光栄に思うがいい!」なんて言われた。
もう、ほんとえらそう。僕別に頼んでないから……。
ま、偉そうに言うだけあってサラサラの毛並みはとっても触り心地よくって、気持ちよかったけどさ。素肌で跨ってたけど、ぜんぜんごわごわチクチクしたりもしないし。でもちゃんとパンツ履いてて良かった。ノーパンで騎乗なんていやすぎだもん。
で、そのまま岸まで連れてかれて、着けば着いたで集まってた動物たちに囲まれちゃうし。
みんな人の妖精のこと珍しいのか、すっごく近くまで寄って見て来るからちょっと怖かった。熊とか、見たことないおっきな獣とか、もう勘弁してほしい。
まぁそれでもオーサーの背中の上だったからまだましだったけど……。も、もちろん、そんなことはオーサーにはぜったい言わない。図に乗っちゃうからね、えへへ。
どれだけ時間がたったのかわかんないけど……、騒がしかった僕の周りからもようやく動物たちが居なくなり、やっと静けさが戻ってきた。(まぁ、あまりの騒ぎにオーサーの機嫌がだんだん悪くなってきて、動物たちがその空気読んで帰ってくれたってのが実際のとこだけど)
僕はオーサーの背中からふわっと飛び立ち、さっきから気になってることの確認をするため再び泉の方へ向かった。
何が気になったかって?
そりゃもちろん自分の姿やお顔に決まってる。
なんとなくはわかってるけど、でも、一度しっかり見てみたい。
生まれ変わってしまった僕の姿。
妖精……とはいえ、女の子の姿になっちゃったんだもん、そりゃ気にしないほうがおかしいよね?
オーサーはさっきから美形だとか、美しい顔……とか、そんなこと言ってくれてたけど。ユニコーンの美的感覚は僕とは違うかもしんないし……。
僕はドキドキしながらも、鏡面のようになってる泉の上で向かい合わせになるよう静止して、恐る恐る……映り込んでるだろう自分の姿、形をじーっと見つめる。
……!
ほわぁ……。
き、
き、きれぇーー。
「な、なに、これ……。
こ、これが、ぼ、僕?」
僕の姿――、
は、まさしく妖精……のような姿、してた。
つかまぁ妖精なんだけど。
だ、だってしょうがないよぉ……。
まじきれいなんだもん!
我ながら……。
触れば折れてしまいそうに見える華奢な体。
その体を包む、手の先から足の先まで、どこまでも柔らかそうな雪のように真っ白な肌。残念ながら背は低くて、胸やお尻は控えめだけど……。
小さな頭からはきらきらした、金と銀がせめぎ合ってるかのような色をしたサラサラの長い髪が腰まで延びてて、それが重力なんてないかのようにふわっと広がってる。
そして極めつけは背中の翅!
ほとんど透明に近い翅には淡い不思議な模様が浮き上がってて、大きい翅二枚と小さい翅二枚、合わせて四枚が背中からゆったりとした曲線を描きながら伸び、僕の背中でけなげにふるふる震えながら小さな体を空中でしっかり支えてくれてる。ちょっと歪な輪郭をしてるけど、なんか不思議と吸い込まれてしまいそうな綺麗さがあってとっても素敵!
気になるお顔もなんか僕じゃないみたい。
綺麗というにはまだ顔立ちが幼くて、かわいいって言ったほうが合うんじゃないかって思う。
じ、自分で言ってて恥ずかしいけど……でも、僕の好みど真ん中! って、自分の顔じゃ意味ないし――。
澄んだ若葉色をした目は驚きで大きく見開かれて、キラキラ輝いてるし、すっと伸びた小ぶりな鼻はつんと上を向いてかわいらしいし、ぽかーんと開いちゃってる小っちゃな唇はやさしい桜色に染まってる。そして顔の横についてる耳はやっぱちょっと先っぽ尖ってた。なんか物語に出て来るエルフみたい。
うん、やっぱかわいい!
僕は自分の顔にもかかわらず、見惚れてついデレデレと締まりのない表情をしてしまう。
ゴメンなさい。
まだ女の子と付き合ったことなくって、親しい女性っていえば妹の理菜かママくらいだったから……耐性ないんです。はわっ、そういや僕、女の子と付き合うこともなく死んじゃって……、な、なんてかわいそうな僕。
って、あーん、僕の変態!
何自分にデレて、自虐かましちゃってるの!
僕が一人泉をのぞき込んでてれてれ悶々としてたら、テルとメイが不思議そうに僕の周りをまたクルクルと回り出した。
ううっ、恥ずかしいからそんな風に僕を見ないでぇ!
そんな僕の醜態はその後もしばらく続いた――。
ほんとごめんなさい。
僕は今、両手をだらんと下げ、気が抜けてうなだれ状態でオーサーの背中にまたがってる。
はぁ、もう死にたい。
すでに死んじゃった後だけど――。
我ながら情けない姿、さらしてしまった。
「先ほどから何を一人でブツブツ言っているのだ、鬱陶しい。我の背中でそのような陰鬱な空気を振り巻き続けるのなら降りてもらおうか?」
オーサーが僕の様子に嫌気が差したのか、そんなことを言われてしまった。
「はにゃ、ご、ごめん。その、気を付けるから許してっ!
そ、それで、そのぉ、まだなの? お、オーサーのお家って」
僕は慌てて居住まいをただし、誤魔化すように質問を返した。
ちなみに今は森の中をオーサーとテル、メイと共にずんずん突き進んでる最中だったりする。さっきいた泉と違い、鬱蒼とした深い森の中は薄暗いところがやたら多くて薄気味悪い。
僕一人だったらすっごく心細くって泣いちゃうとこだったろうけど……、みんなと一緒なら怖くない。
うん、大丈夫、大丈夫……。
「ふむ……。まぁ、よかろう。
で、質問の答えだが――、すでに我の支配する地に入っているぞ。
リィンが言う家というものは人間が住む、やたら狭い囲いのことであろうが、我にはそのようなもの不要。
が、休息の場と言い換えるのであらば、それは幾つもあるぞ。まぁ近い場所へはあと少しで着くゆえ、今しばらく我の背中で待て」
やたらややこしい答えを返してくるオーサー。
はいはい、オレ様は縄張りいっぱい持ってるんだね。わかりましたわかりました。
「ふーん、すごいんだね。じゃ、どんなとこか楽しみにしてる~」
僕から聞いたこととはいえ、なんかめんどくさいから適当に返事を返した。
とりあえず知らない場所、見たこともない風景を時折びくびくしつつも楽しみながら、わかんないこともみんなに教えてもらいながら……、
ひとまず落ち着ける場所をめざし、すべては人任せ、僕はオーサーの背中で一人ぐーたらしているのだった。
うん、らくちんらくちん!
読んでいただきありがとうございます!