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初心者妖精の願い  作者: ゆきのいつき
5/21

---5---

5話目をどうぞ。


※8/23 

話中、主人公の呼び名でリーンとなっていたところをリィンに修正しました。

 丸裸の僕。

 生まれたままの姿でいることに羞恥心がどんどん湧き起こり、し、しかも自分が女の子の姿になってることに改めて気付かされてしまった。



 僕はもう全身真っ赤。

 肌が白いから余計にめだっちゃうよ~。


 そんなボクの周りをテルとメイが不思議そうにふわふわと回ってる。

 

 え、どうしたのって?

 急に変になった僕の様子に、二人が問いかけて来た。


 そ、そんなの恥ずかしいからに決まって!

 って、そうか、こんな感じ、二人にわかるはずもないか……。


 僕はちょっと冷静になる。それによくよく考えれば周りに人なんて居ないし、泉の岸にいるのは動物たち。はだか見られる心配なんてそもそもないんだった。


 とは言うものの。恥ずかしものは恥ずかしい。元日本人の男の子の羞恥心なめんななのだ。



 僕のそんな気持ちがなんとか伝わったのか、メイが教えてくれる。


「へっ、思い浮かべたらいいって?」


 どうやら僕、自分の体に触ってなきゃいけないって条件さえクリアすれば、思うようなものを作り出すことが出来るみたい。まぁ、あまり複雑な形は維持することが難しいから慣れが必要みたいだけど……。


 早速ためしてみた。


 うーんと女の子が着るお洋服のイメージを浮かべる。そもそもあんまし難しい元男の子の僕にはわかんないし簡単なワンピースをイメージしてみる。それと合わせてパンツもイメージ。


 僕の体の周りに淡い光がまとわりつくように現れてくる。

 モチベーションがぐんと上がる。


「ふわぁ、よ~し!」


 も、もうちょっと! い、イメージだ、イメージ!


 光が形になってきてついに……。


「で、出来た! えへっ、ちゃんとワンピースになってる! むふふっ」


 現れたのは淡い淡い緑色のワンピース。

 僕自身なんか発光してるみたいだし、その光のイメージに合わしてみた。

 出来たワンピはノースリーブで、首周りに少し大きめのまあるい襟ぐりがついてる。小さい胸をしっかりと覆い、そこからはすとんと膝上くらいまで伸びてる。軽くひだがついたスカートの部分はさらさらと揺れてとっても軽やかに見える。


 うんシンプルだけどちゃんと出来た!

 チビな女の子の姿とはいえ、これでようやく文明人って感じがする。(妖精だけど……)


 なんとなくくるっと回ってみたら、ふわっと裾が広がってなんかうれしくなった。

 背中の翅のとこはどうなってるんだろ? 自分で作っときながらよくわかんないし。


 けど……、ちょっと布地が……その透け気味というか、なんかスリップ? みたいな感じの生地になってしまった。肌が微妙にすけちゃってちょーっとだけ恥ずかしい。


 メイにまだまだ詰めが甘いって感じに笑われちゃった。

 ううっ。


 おまけにパンツはどうにもうまくいかず、出来たものの、すとんと腰から落っこちちゃって全然うまくない。


 もー!


 ネックはゴムのところ。どうにもうまく出来ない。


 仕方ないから紐でくくるイメージにしたらなんとかなった。

 ださい……。

 でもなんか女の子のパンツって、ピッタリしてて変な感じだ。自分で作り出しといてなんだけど。


 でもブリーフやトランクも今更だし、この姿には似合わなすぎだし。

 ま、慣れてかなきゃね。


 誰に見られるわけでもないけど、自分なりにとりあえず満足気な表情浮かべてたら、テルとメイがなんか急にアタフタしだした。


「どうしたの?」 


 尋ねてみたら岸の方を見ろだって。


「うわっ!」


 驚いちゃった。


 そこには真っ白なお馬さんがいた。

 もうちょっと前に見た時には確かそんなの居なかったはずなのに……。

 しかもそのお馬さんはちょっと普通じゃなかった。まぁこの世界で普通ってなんなの? って感じで今更だけど。


「ゆ、ゆにこーん?」


 僕は思わずそう口に出してしまった。


 そう。

 お馬さんの頭には、物語のなかではもう定番と言っていい、いわゆる角が生えてた。


 僕の身長くらいはありそうなながーい角。螺旋を描きながら伸びるその角はすっごく優美でかっこいい。

 艶やかな白い毛並みはすっごくきれいなんだけど、角に見合った体はすっごくおっきくて、だんだん僕のほうに近づいてくるユニコーンはちょっと怖い。


「ど、どうしよ、近づいてくるよ?」


 未だ生れ出た? ところでふわふわ浮かんでる僕はどうしようかと、さっきのテルとメイみたくアタフタしてしまう。

 そんな僕を見てユニコーンの目が笑ったような気がした。少なくとも僕はそう感じた!


 むぅ。

 ば、ばかにしてぇ。


 なおも近づいてくる真っ白なユニコーン。


 あ、あれ?

 もうずいぶん泉の中に入ってきてるはずなのに、あいつったら足が水の中に沈んでいってない? っていうか水面歩いてる~!


 驚いてるボクに落ち着きを取り戻したテルが伝えて来た。


「え、幻獣? だからそれぐらい当たり前? え、負けるな?」


 な、何言ってるのテル。負けるなって? なんなのそれ?


 僕がいろいろ戸惑ってると――、更に輪をかけて戸惑う出来事が起こってしまった。


「妙に精霊が騒がしいから何事かと思って来て見れば……。ほぉ、人の姿をした妖精が生まれ出でるなど久しいな」


「はぇ?」


 僕、耳がおかしくなった?

 思わず自分の耳に手をやったけど、そこでもちょっとびっくりした。

 だって……耳の先、ちょっと尖ってた。


 って今はそれどこじゃ!

 

「しゃ、しゃべった! ゆ、ユニコーンが、しゃ、しゃべったぁ~?」


 とうとう驚いてる僕の目の前まで来てしまったユニコーン。

 浮いてる僕の目線とユニコーンの目線が合ぴったり合う。

 固まってしまう僕。


「何を驚く? 我が話すとそんなに変か? おかしな妖精だ。

 しかし、ふむ、悪くない。少々幼くはあるが、我好みの美形。悪くない」


 わー、更にわけわかんないこと言い出した。


「あ、あの、は、初めまして! ぼ、僕――」


 あ、僕の名前。

 そ、そーいやこの世界で生まれたての僕に名前なんて……。


「ふん、僕……? なんだ人の妖精。何が言いたいのだ?

 しかし僕とは似合わぬ。人の女は確か自身のことを私と言うのではなかったか? ……だがまぁ、妖精の身ならばどうでもよいことか――」


 軽く文句言いながら一人? 納得しちゃってるユニコーン。僕が自分のことなんて言おうが僕の勝手じゃない、ほっといて、べーだ!


 そ、それはともかく、名前かぁ。


 うーん。


 ま、いっか、人だったころの僕の名前で。パパとママが付けてくれた名前。


 りん


 僕が生きてたって証し――。


 うん。


「あの、僕、凛。りんっていうの! その、ユニコーンさん。あなたのお名前はなんて言うんですか?」


 僕のその問いかけになんか怪訝そうな表情を浮かべるユニコーン。

 不思議とお馬さんの顔でも表情読み取れるもんなんだなあって、どうでもいいけど思った。


「名前とな? ふっ、またおかしなことを言うものよ、人の妖精。

 我は我。

 それ以上でもそれ以下でもない。ワラワラとアリのごとく湧いて出でる人間ならばともかく、唯一無二の存在、崇高なユニコーンである我に区別をつける記号など必要ない」


 うわ、なにこのえらっそうな態度。それに湧いて出るだなんて、どこまで人間ばかにしてんの?


 僕はそんな思いからつい表情にそれを出す。

 だって仕方ないじゃん、僕まだ子供だもん。妖精としてなんて実際まじ生まれたてだし。


「ふむ、不服そうな顔をしているな? そんな顔をするとせっかくの美しい顔がだいなしであろうに。


 ふん、よかろう。


 人の妖精、いや、リィンと言うのだったな?

 リィン、我に名を付けることを許す。好きに名付けるがよかろう」


 どこまでも自信たっぷりな自己中ユニコーンは、鼻息荒く偉そうにそう言うと、首を傾げながら僕を見た。


 な、なんてオレ様!(あ、オレ様っていうより我様かな? ま、いいけど)

 名前も微妙に間違ってるけど……、でも怒っちゃダメ。テルが教えてくれた通り。


 僕はこんなオレ様ユニコーンになんか負けない。


 僕はざわめく心をぐっとしずめ、自己中幻獣、ユニコーンに向かって目一杯、心を込めた笑顔を浮かべ――、


 僕を見てどこか照れた様子のユニコーン。ふぇ? なに赤くなってるんだか?


 そして答えようとして、


「それじゃ、あなたのお名前はぁ……」


 えーっと、えーっと、どうしよ?

 考えてなかった!


「うーん」


 どうでも良さそうなこと言っときながらどこか期待を込めた目で見て来るユニコーン。緋色の目がすっごくきれいで吸い込まれそう。


 な、なにさ、かわいいじゃん。どきっとしてしまった!


 えーい、もう適当だ。


「じゃ、オーサーでどうかな? だ、ダメ?」


 オーサー。


 自己中"オレ様"ユニコーンだし、オレサマからもじってみたんだけど。かなり苦しい……。


 僕が伺いを立てるように上目使いで見つめてると一瞬ふにゃっとその表情が緩んだ。


 あ、これ落ちた?


「オーサーか。オーサー……。


 ふむ。


 ま、まぁ……よかろう。

 好きにすればよいと言ったのだし、是非もない。


 うむ――、


 我はこれよりオーサーと名乗ることとする!


 リィンはこれより我の友と認めよう。

 ふふ、まだ妖精として生まれたばかり。遠慮せず我に頼るがよかろう!


 ――ふっ、オーサーか、オーサー……。ふふふっ」


 僕の付けた名前、どうやら気に入ったみたい。

 周りにいる動物たちにすら聞こえるくらいのおっきな声で名乗りを上げたあと、なんだか不気味にブツブツ言ってる。



 ま、とりあえず。

 僕は言葉とは裏腹にすれてないユニコーンと友だちになれたみたい。



 テルとメイも一緒にいてくれるし、頼りになりそう? な、ユニコーンの友だちも出来たし。


 これからの妖精生活……なんとかなりそう……かな?

 なんて思いつつも、不思議な色合いを見せる空を仰ぎ見ると、やっぱ不安しかないな……と、そっとため息をつくしかなかった。


なかなかお話進みませんが、文字数少ないからこんなもの、かな?


読んでいただきありがとうございます!

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