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四話目をどうぞ。
僕のこぶしより少しおっきいくらいの光の玉というか塊。
呼びにくいから適当に名前をつけちゃった。
意思を通じてみて元気で男の子っぽい子をテル。反対に、控えめでちょっと恥ずかしがり屋さんな女の子っぽい子をメイって名前にした。ちなみに元ネタは"照明"だったりして。だってなんか電球みたいなんだもん。えへ、これは二人? にはないしょ。あははっ。
っていうか、あの子たちのこと二人っていっちゃってるけど別にいいよね、意思疎通が出来る存在なんだし。
ところでテルとメイも僕と同じ妖精みたいなんだけど、僕が元々人の魂から生まれた、よ、妖精なのに対して、二人はこの地の小さな生き物の魂が寄せ集まって、いつしか妖精としての個性が出来上がった存在みたい。
うーん、なんか不思議。
そして肝心のここはどこか? ってことなんだけど……。
ここは僕が住んでた日本……っていうか地球なのか? って言えば、間違いなくそうらしい。
でも直接僕の生きてた世界と繋がってるかっていうとそれはまた微妙で、人が僕たちの姿を見ることは決してなく、交わることもほとんどないらしい――。
どういうことなんだろ? SFで読んだパラレルワールド? それとも異次元の世界?
ほとんどないってことは、たまにはあるってこと?
ふぇ?
うーん、わかんない。
でもテルとメイが言いたいこと……、僕にもなんかわかる気もする。
今僕が居る場所と、生きてた場所。
そことは世界が違うってこと。そして……、今の僕ではもうあの場所へは戻れないってこと――。
ただ、
人は居ないらしいけど生き物……、動物たちは確かにいる。
っていうか今も僕が浮かんでる泉のほとりにはいっぱい動物たちが居た!
テルとメイに教えられて今更ながら気付いた。
だって仕方ないじゃん。僕、自分のことで精一杯で周りをしっかり見る余裕なんてなかったんだもん。
だけどどんな動物かって言われるとこれも微妙。
なんか微妙。
どこか僕が知ってる動物じゃない奴も見える。でもどんな動物? って言われてもちゃんと答えられない。
そもそも野生の動物なんてほとんど見たことないんだもん、僕。
でもまぁ、鹿とかウサギとか、知ってるのもいたりするし……なんか一杯いるってことは確か。
それでいいよね。
テルとメイが、彼らは僕が生まれたから祝福してくれてるんだって伝えてくる。
そして僕みたいな、こんな人の姿をきっちりとった妖精……が、生まれてくるのはめずらしい……とも。
ふーん、そうなんだ。
でもそう言われて見て見れば、岸にいる動物たち……、じっとこっちを見てる気がする。よく見ればなんか熊っぽいのも居る!
ちょ、あれ、僕を食べようなんて思ってるんじゃないよね?
僕が内心ちょっと焦ってるとメイがそんな訳ないってなだめてくれる。
ほっ。だ、だよね。よ、良かった~。
っていうか、熊とか居るのに周りの動物たちが逃げないのも不思議だけど……。
そんな疑問にテルが答えてくれる。
妖精の誕生は神聖なもの――。
僕みたいな珍しいのは余計で、それは野生である動物たちにもちゃんとわかってる。ううん、野生であるからこそ自然……というか超自然の理には従順、忠実ってことらしい。
ほぇ~、人間なんかよりよっぽど素直でかしこいや。
僕なんか、そんなたいそうな奴なんかじゃない気がするけど。
神聖なものとして見られてるなんてちょっとこそばゆい――。
それにしてもなんで人は居ないんだろ?
って思ってたらこれもテルが教えてくれる。
人は賢さを手に入れたけど……、素直じゃない心はこの世界の存在に気付けないし、認めることも出来ない。必要以上に自然を破壊する、その行いは精霊に嫌われ、余計この世界を認識することが出来なくなる。
欲に溺れた心は精霊や妖精がいる世界とは相容れないもの――。
動物たちや、当然植物なんかはそれがないから普通にどちらの世界にも存在し、行き来したりもするらしい。
なんかこれでもかっていうほどダメな理由が伝わってきて……、元人間としては恥ずかしいくってしょうがない。昔はそれでも少しは居たらしいんだけど……。それももう百年以上も前の話らしい。
って、テルとメイって幾つなの?
思わず変な突っ込みいれちゃった。
なんか歳は関係ないみたい。自然とわかるんだって。
へー、じゃ、僕もそのうちそんな感じになれるのかな? ちょっとわくわくした。
でも僕……、
ほんとに死んじゃったんだ。
一通り状況が確認出来て落ち着いたところで、改めて思う――。
理菜……、パパにママ。
僕が死んじゃって悲しんでるだろ……な。
理菜。
理菜ぁ……。
僕が居なくなって、あいつ大丈夫かな?
さみしがってないかな?
泣いてないかな?
元気無くして……病気、悪くなってないといいんだけど――。
僕は、僕の家族……、大好きだった家族のことを思い起こす。
もうどうしようもないことなのかもしれないけど……。
一人残してしまった双子の妹、理菜のことが心配で心配で仕方ない――。
そんな僕の心のうちがわかるのか僕の周りをテルとメイがふわふわとゆっくりと回る。そして二人のやわらかな輝きが僕をやさしく照らす。
ふふっ、やさしいなぁ……。
「ありがとう!」
僕はつい言葉に出してその気持ちを素直に伝えた。
で、今となってあることをはたと思い出す。
そういや僕……、は、はだか。
その、ぱ、パンツとかすらはいてないんだった!
「いーーやーー!」
女の子となった僕の、きれいで高い声が泉中に響き渡った。
読んでいただきありがとうございます!