---Re:9---
まただんだん投稿ペースが……。
忙しすぎなのです、し、仕事が。
ああ愚痴が。
ママはまだまだぼくのこと、本物の妖精だとは信じられなくて誰かがたちの悪いイタズラでもしてるんじゃないか? って感じで疑りまくりの視線をぼくに向けてる……。
けど、それでもぼくが言ったりなちゃんが発作起こしてるって言葉を聞いて、信じる信じないはともかく急いで病室に戻ることにしてくれたらしい。
途中、看護師さんにも声をかけて大急ぎでりなちゃんの病室に戻ってくれたママ。
ほんとかウソかなんてとりあえずどうでもいいことだもん、無事ならそれにこしたことないし……、ほんとだとしたら少しでも早くいってあげなきゃりなちゃんが苦しんじゃう。
ママはきっとそう思ってくれたんだ。
「理菜っ!」
病室に入るなりママが大きな声でりなちゃんの名を呼んだ。看護師さんもそれに続いて入ってきた。
ぼくはといえば、あまりに怪しすぎると思ったのか、つかまえられ……そのままママのお洋服の内側にあるポケットに放り込まれちゃってた。
それでも病室に入った頃にはなんとかはい出し、ママのおっきくて柔らかい……お、おっぱいの間からなんとか外に顔を出すことに成功した。
ぼくはママたちと一緒にりなちゃんのベッドを見る。
「理菜! 理菜、大丈夫?」
りなちゃんはまだベッドで丸くなってうずくまったまま。ママの声にも反応しない。
あわててかけ寄る看護師さん。もちろんママも一緒になってかけ寄る。
看護師さんがりなちゃんに声をかけながら容体を探ってる。でもりなちゃんからは何の反応も帰って来ない。小刻みに弱々しい息しかしてないりなちゃん。もう意識もないみたい。
ママはそんなりなちゃんの様子に気が動転しちゃったのか、顔色が真っ青になってきちゃってる。胸がすっごくドキドキしてるのがぼくに伝わって来る。
「り、理菜……。
か、看護師さん、理菜は、娘は大丈夫なんですか?」
ママが看護師さんにつめ寄ってる。
「遠見さん、落ち着いて。理菜さんは気を失っているだけです。先生を呼びますからどうか落ち着いて。心拍数が非常に落ちて来てはいますが……、まだ……その、だ、大丈夫です」
か、看護師さん、とても大丈夫そうに聞こえない……よ。
あせりまくってるママと看護師さんの会話が続いてるけどぼくはもうそれどこじゃない。
看護師さんは大丈夫とか言ってるけど……、ぼくにはわかる。
もう危ない。
今まだもってるのはテルとメイのおかげなんだ――。
りなちゃんに付いててもらった二人の姿が見えないのは……、隠れてるからってわけじゃない。
テルとメイはりなちゃんの弱った胸に一生懸命力を注いでくれてる。
ただでさえここじゃ精霊の力が弱いのに。
自分たちの体を維持するだけで精一杯のはずなのに――。
ごめんねテル、メイ。
りなちゃん……。
明日が満月の夜なんだよ?
たったあと一日で……きっと。
きっと病気を治してあげられたのに!
…………。
看護師さんが病室から出て行った。
ママは苦しさでしかめられた理菜ちゃんのお顔。ほっぺをやさしくなでてる。「がんばれっ」て、声をかけながら……。
………。
――決めた。
みすみすりなちゃんを……、りなちゃんを目の前で失ってたまるもんか!
ぼくはママの胸の中から勢いよく飛び出した。
りなちゃんのあまりの様子に、ぼくのことなんかすっかり心の外だったのか、ママがすっごく驚いて思わず立ち上がった。おっきな音を立てて倒れる丸イス。
改めて驚いちゃったみたいで、ぼう然とした表情で宙に浮いてるぼくを見てる。
驚かせてごめんなさい。
でも、もう時間にゆうよ……ないみたい――。
まだ満月じゃないけど。
満月の時間、霊光のように神秘的な月の光。
精霊の活力が一番あがる、あの光に満ちた世界じゃないととても万全っていえないけど……。
ぼくはやる!
ママがいるけど仕方ない。もう姿見られちゃってるし……。
ぼくは心の中で幻想世界を思い浮かべる。
そして満月の空。ぽっかりと浮かぶまんまるな月を思い浮かべる。
それを導線に、体の中の精霊力を発現させる。
小さくなって弱まってしまってた考える力が戻って来る。
コンクリだらけのこの世界。あまりに緑の少ないこの世界から、それでもなんとか存在してる精霊さんの力を借り……、僕の小さな体に集める。
僕の内から発現させた力と、この世界の精霊の力を合わせるように集中する。
再び発光現象を纏いだす僕の体。今だけはまるで幻想世界にいた時のように輝きに満ちて来る。
体のサイズはあえて戻さずに力の濃度を上げることに専念する。
ママはあまりの不思議な光景に理菜のことすら失念してるのか、目を驚きに見開いてずっと僕の方を見つめてる。
そんな中、僕は手を突き出し……そこにある物を出現させることを強く願いながら……、更に力を集中させる。
うう……、き、きつい。
体中の精霊力を絞り出してるせいで……色々やばい。
けど、ここでやめたら……理菜が、理菜ちゃんが……。
「精霊さん、力を、僕にもっと力を……」
ついには言葉に出して願う僕。言葉にした方がはっきりとした思いになる……はずだよね? オーサー。
そんな僕を見て……、何か感じるものがあったのか?
驚いたことにママが、ママが僕を優しく包むようにして手に取り、そのまま胸に抱き寄せ……、
「リィンちゃん、私じゃ力になれない?
あなたが何かしようと必死なのがすごく伝わって来る。――あなたが纏うその光……、とっても優しくて、慈愛に満ちているのがわかるわ。
理菜のためにしてくれてるってことも」
今の僕は溢れ出る輝きでママからははっきり姿も見れないはずだけど……、そんな中でも僕の方をしっかり見据えてそう言ってくれた。うれしかった。わかってもらえた!
「わかった……、お願い!」
僕は遠慮なしにその言葉に甘える。しばらく足腰立たなくなるかもしれないけど……、今は理菜が大事。ママ、僕と一緒に理菜ちゃんを助けよう!
力を集めるため改めて集中する。
僕自身の力。この世界に弱いながらも存在する精霊たちの力。そこにママの力も加えさせてもらう。
――人の体にも精霊の力は存在する。それは妖精と違って弱くて、しかも不活性のものだけど……、だからこそ分けてもらえる。
もちろん人だけじゃなくって生きてるもの全て、分け隔てなくその力はある。っていうか、なければそもそも生きられない。
残念ながら、便利で怠惰な生活に浸りきった現代人にその力をどうこうする能力はすでになくなってしまってる。昔は当たり前にように存在してたはずなのに……自己中でばかな人間は欲望にまみれ、文明を発達させ、便利さと引き換えにその力を捨て去った――。
って、オーサーの受け売りだけど。
ああん、余計なこと考えてしまった。今は集中!
でも……、それでも僕の限界も近い。
僕は自分の体を維持するための力を使ってしまってる。
オーサーが言ってた。リィンの力は通常の妖精よりも格段に強いって。だから、もしもの時はその力だけでも……って。
でもそれをしたら――。
ううっ、ま、また、余計なことを。
今は理菜ちゃんのことだけを考えるんだ。
ママの力を分けてもらってるし、ここはなんとかふんばらなきゃ!
そしてついに……、ママの胸に抱えらた僕の目の前にもう一つの強い輝きが生まれ出でてきた。
大きな姿の時の……僕のこぶし大のそれ。
そう、それはオーサーの角。
万病に効くという霊薬。
急に現れたそれにママが息を飲んだのがわかった。
よし! あと少し、あと少しだけがんばろう。
僕は次第に力が抜けて来る感覚に襲われながらも、やり残してることのために今一度だけ気合を入れる。
そうこれを理菜に、理菜ちゃんに処方しなけりゃ意味がないんだ。
僕は僕をやさしく包んでくれているママの手からするりとすり抜け、目の前に浮いて……鈍い銀色に輝いてるユニコーンの角に向かい……、
最後の力を振り絞って飛びたった――。
読んでいただきありがとうございます。




