新緑の頃③
本書はフィクションです。実在の人物・団体・省庁とは一切関係ありません。また、執筆にあたり複数の公務員の取材や架空のエピソードを組み合わせて構成しています。
ご覧いただきありがとうございます。
本作は、実話をもとに再構成した「叩き上げ公務員」の半生を描くサクセスストーリーです。
学歴もコネもなく、定時制高校からスタートした主人公。
決して順風満帆ではなかった彼が、どのような葛藤や壁を乗り越え、霞ヶ関の本省、そして幹部へと駆け上がっていったのか。
実際の官僚機構や他省庁でのリアルな泥臭さ、そして人生後半での新たな挑戦までを丁寧に描いていきます。
働くすべての人、そして逆境から這い上がりたい人に届く作品になれば幸いです。
ぜひ最後までお付き合いください!
定時制高校に転入学してほどなく、浩一は自分の生活スタイルに合ったアルバイトを見つけた。
働く場所は、神戸市営地下鉄・大倉山駅の近くにあるガソリンスタンドだ。
勤務時間は朝9時から16時まで。仕事を終えたあと、大倉山駅から地下鉄で三ノ宮駅へ向かい、そこから市営バスに乗り換えれば、学校の始業時間である17時45分に余裕をもって間に合う。
数あるバイトの中からガソリンスタンドを選んだのは、時間の融通が利くことに加え、他のアルバイトに比べて時給が良かったからだ。
主な仕事内容はガソリンの給油と洗車だが、先輩のアルバイトたちはオイル交換やタイヤ交換までこなしていた。
面接の際、「頑張り次第で時給は上がるよ」と言われていた浩一は、早く仕事を覚えて車整備の作業も任されるようになり、時給を上げてもらうことを当面の目標に掲げた。
また、春休みのうちに取得していた原付免許も大きな武器となった。ちょっとした配達や用足しをこなせる点が評価され、採用にも優位に働いたのだ。
アルバイトへ通うためには、毎朝8時前に国鉄(現JR)舞子駅から電車に乗り、神戸駅で下車して大倉山まで歩かなければならない。
朝9時から16時までしっかり働き、そのまま学校へ向かって21時まで授業を受ける。それからすぐに下校しても、自宅にたどり着くのは夜の22時30分過ぎだった。
朝8時に家を出て、夜22時半に帰宅する毎日——。
いくら体力のある16歳とはいえ、身体的にも精神的にも決して楽な生活ではない。
けれど、これこそが働きながら学ぶ定時制高校生のリアルな日常だった。
(仕事と学校の両立で大変だと思うけれど、体に気を付けて学校生活を送ってください)
初日に担任の川津先生が語っていたあの言葉の意味が、今になって身をもって理解できた。
(でも、やるしかない。自分の力で頑張るんや——)
疲れの残る体を引きずりながらも、浩一は心の中で静かに、そして力強く自分を奮い立たせるのだった。
ご覧いただきありがとうございました!
大倉山のガソリンスタンドでの勤務から、夜のH高校での授業へ。
神戸の街を駆け抜ける浩一の多忙なスケジュールを通じて、定時制高校生たちが背負う「現実」と「たくましさ」が生き生きと伝わってくる一章となりました。
給油や洗車だけでなく、先輩たちのようにオイル・タイヤ交換もこなしたいと意気込む浩一。甘えることなく自分の足で立とうとする彼の強さは、これから先、どんな困難も乗り越えていく大きな糧となっていくはずです。




