2人、溶けたい。
視界が真っ白になるほどの雨から、なんとか木の下へ逃げ込む。
先程まで肌を打ちつけていた雨粒よりも、今は、前髪から滴った雫が鼻にぶつかって温みを得ながら首に伝わっていく感触が不快だった。
ハンカチで身体にまとった水分を拭き取っていく。
「……なんか、身体が溶けだしてるみたい」
肩で息をしながら楽しそうに笑う彼女に、ずるいと思った。いつも、彼女はずるい。
「雨の予報じゃなかったのにね。私が使ったやつでよければ、使う?」
「いいの? ありがとう」
2人分の水分を吸ったハンカチが、ピンクから赤色へ変わっていく。
「せっかく今日、前髪綺麗に髪巻けたのに」
私のハンカチで額を拭きながら、平になった前髪を見上げる彼女の目は、周囲の光を溜め込んだかのように澄んでいる。
その瞳に私を映して欲しくて、左手を差し出す。「ありがと」と返されたハンカチはずっしりと重い。
バチっと目が合う。高鳴った胸を悟られないように平然を装って口角を上げた。
雨のカーテンが、私たちを世界から切り離す。世界から切り離された今なら、胸の奥に閉じ込めたこの気持ちを伝えても、曲がることなく届くだろうか。
ドクドクと脈打つ胸を、雨音が掻き消していく。
「ねえ、このまま止まなかったらどうする?」
冗談めかして笑う彼女に、やっぱりずるいと思う。私だけが、こんなに重くてもどかしい想いを抱えている。
「2人で溶けてなくなるまで、ここにいるしかないね」
どうか、これが私の本音だと気づいても知らないフリをして。私も、私の気持ちに気づかないフリをしたままでいるから。
心がぐるぐると渦を巻いていく中、彼女は「それもいいかも」と、また楽しそうに目を細めた。




