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運命の赤い糸を信じる彼女曰く  作者: 青空のら


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第6話 先の見えない泥沼

「ねえ、駿河? ちょっと聞いてもいい?」


 朝七時、朝食を食べにキッチンに向かうと咲良と鉢合わせになった。この時間なら、いつもの咲良は身支度を済ませて出勤しているはず。


「おはよう、咲良。どうかした? 改あらたまって、らしくないぞ」

「そんな事はどうでもいいの。昨日さ、何かあった? 駿河の部屋まで行った事は覚えてるのよね。ただ、その後のことを思い出せないの」

「寝落ちするのは毎度のことじゃないか。何を気にしてるのさ。咲良らしくないよ」

「もう、人が真剣に聞いているのに茶化さないでちょうだい。改めて聞くわね。昨日、何かあった?」

「酷いな。僕にあんな事しておいて忘れちゃうなんて」


 出来たての汚物を頭からかぶるなんて、そう滅多に体験しないだろう。

 あの後、身体についたゲロを軽く拭き取ると、思う存分吐き出して気分が良くなりそのまま眠りについた咲良を部屋まで抱えて行った。

 さすがに自分が吐いた物とはいえ、所々ゲロのついた部屋着で寝かすわけにはいかない。適当にみつくろって着替えさせてベットに寝かせて部屋を出たのだが、何かまずかっただろうか?

 いや、さすがに酔っ払っていても着ていた服が変わった事くらいは気づくか。それならここは先手を打つしかない。


「くう、咲良に汚されてしまった。もう、お婿に行けない。責任とってよね――」


 なんて、冗談だよ、と最後まで言わせてもらえなかった。


「そうなんだ、わかったわ。私も女よ、責任はちゃんと取るわ。駿河、ついてきなさい。パパもまだ出勤前で家にいるから丁度いいわね」

「えっ、おじさん? どうしておじさんの所に?」

「ママも一緒に決まってるでしょう!」

「おじさんとおばさんと一緒に揃えて何しようって言うんだよ。責任なんて取らなくていいよ。冗談――」

「今、なんて言ったのかしら?」


 ゆっくりと振り返る咲良の顔にツノが生えているように見えた。僕は何かを間違えたらしい。


「いや、何でもないです――」

「そう? それならいいんだけど。遊びとか冗談とかふざけた事を言ったらコロスわよ。駿河を刺して私も死ぬからね」


 何が起こっているか理解はできないが、どうやら僕はどこかで選択肢を間違えたようだ。

 おじさんたちの部屋に着くと、険しい顔をしたおじさんとニコニコしているおばさんが二人揃って待っていた。


「まあ、そんなにかしこまるな。駿河、この家に来てから何年になるかな?」

「そうですね。二年ですね。いつもお世話になってます。感謝してます」

「うむ、感謝の態度を見せて欲しいところだが――」

「あなた!」

「ごほん。いや、話がそれたな。咲良の事はどう思っている? うん? さあ、遠慮せずに言ってみろ?」


 隣にいる咲良を横目でチラリと見るも、真っ直ぐにおじさんを見つめているだけで何の参考にもならなかった。


「素敵な女性だと思います。部屋が散らかってるところとか、酒癖が悪いところもありますが――」

「まあ!」


 なぜか僕の発言におばさんが口を押さえて喜んでいる。


「昔と変わらずに今も面倒見の良い姉のような――」

「わかった。本来なら二人揃って報告を受けたかったが、駿河の気持ちも確認できたので良しとしよう。二人の結婚を認める!」

「おめでとう! 駿河ちゃん、咲良。幸せになるのよ」

「ふふふ、ありがとう! パパ、ママ」

「ふぇ?」


 なぜいきなり咲良との結婚の話が出てくるのだろうか? それよりあっさりと承認されてる事に唖然とした。


「どうしたの、駿河? 何を驚いているの? 責任は取ると言ったでしょう」

「これが責任?」

「そうよ。駿河を襲っちゃったから責任取ってお婿さんに貰ってあげる。もしかして、嫌とか言わないわよね」

「そんな事言わないよ。わーい、嬉しいな。咲良と結婚だなんて幸せすぎて死んでしまうよ」


 僕の口から棒読みセリフが流れた。


「えへへへ、私も幸せ」


 咲良が僕の左腕に抱きつく。


「あっ、こらこら。親の前でイチャつく奴がいるか。自分たちの部屋に戻ってからしなさい。それ以前に、急がないと会社に遅れるぞ」

「そうよ。焦らなくても時間はたっぷりとありますからね。ママをあんまり早くおばーちゃんにしないでちょうだいよ」

「それはわからないわよ。もう出来てるかもしれないもの」

「まあ!」

「何!!」

「ふぉ?」


 咲良の爆弾発言にその場が騒然とする。僕に心当たりはないので、誰の子なんだろう? 僕は咲良と誰の子を育てるの?

 頭の中をハテナマークがぐるぐると回っていた。


「何、驚いた顔をしているのよ、駿河。自分で言ったくせに、心当たりがないとは言わせないわよ」

「そうだよね。僕だよね」


 うんうん、頷きながらも内心はパニックに陥っていた。冗談のつもりで言った事が、咲良といたしてしまったと認識されている。

 今更、否定するような状況ではない。

 さらに、咲良が処女じゃない限りはバレない嘘。バレる確率は限りなく低い。

 ここは嘘を突き通すしかないと僕は判断した。


「子供が出来てたなら一月後にはわかるから、それまでは無理しないでね、咲良」

「えへへへ、わかってるって。心配しないで」

「あとは二人で話しなさい。それで何か問題があるなら報告に来なさい。父さんと母さんも力になるから」

「そうよ。二人とも心配しなくても大丈夫よ」


 おじさんとおばさんの温かな言葉に見送られて僕たち二人は部屋から出た。

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