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悪役令嬢は性悪執事とお金に溺愛される ~皇女の身分を捨てて商売を始めたら、国家予算レベルの資産と最強の夫が手に入りました~  作者: 蒼山りと


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第四話:嵐の前の訪問者(招かれざる客)

 赤いドレスの令嬢は、扇子で口元を隠しながら、私を上から下まで値踏みした。


「ふん。貧相な体つきね。こんな小娘が、私のピギー様をたぶらかした泥棒猫?」

「あら、ご挨拶ね。私はただの『被害者』よ。たぶらかすどころか、監禁されて困っているの」


 私は優雅に紅茶を啜った。

 彼女の名前は、ローズマリー・フォン・バーミリオン。

 隣国の伯爵令嬢であり、ピギー御曹司の「本命の婚約者(親が決めた相手)」らしい。


「嘘をおっしゃい! ピギー様は私に『運命の相手を見つけたから婚約を破棄したい』と手紙を寄越したのよ! それが貴女でしょう!?」

「へえ、そんな手紙を」


 私は心の中でピギーを罵倒した。

 二股どころか、一方的に婚約破棄を突きつけていたとは。どこまでもクズな男だ。


「で? 貴女はどうしたいの? ローズマリー様」

「決まっているでしょう! 貴女を追い出し、私が正妻の座に収まるのよ!」

「どうぞどうぞ。今すぐ代わってあげるわ」

「えっ?」


 ローズマリーが目を丸くした。

 私は立ち上がり、彼女の手を取った。


「私、こんな豚小屋(豪華な屋敷)から一刻も早く出たいの。貴女が代わってくれるなら大歓迎よ」

「ぶ、豚小屋ですって!? ここは王都でも有数の……」

「あら、知らないの? この屋敷、実は借金まみれで、もうすぐ差し押さえられるのよ」

「なっ……!?」


 私は適当な嘘(半分本当)を吹き込んだ。

 クラウスがすかさず、偽造した「赤字決算書」を差し出す。


「ご覧ください、ローズマリー様。ピギー様の資産は火の車。貴女が嫁げば、莫大な借金を背負うことになります」

「そ、そんな……! お父様は『玉の輿だ』と仰っていたのに!」

「騙されてはいけません。これは『不良債権』です」


 ローズマリーの顔が青ざめていく。

 単純な子だ。チョロすぎて心配になるレベルだ。


「でも……でも、婚約破棄されたままなんて、私のプライドが許さないわ!」

「そうよね。悔しいわよね。弄ばれて、捨てられて」


 私は彼女の肩を抱き、悪魔の囁きを吹き込んだ。


「ねえ、ローズマリー様。復讐したくない?」

「復讐……?」

「ええ。明日の結婚式、貴女が『真の花嫁』として乱入するの。そして、衆人環視の中で彼を断罪し、婚約破棄の慰謝料をふんだくってやるのよ」


 ローズマリーの瞳に、怪しい光が宿った。


「……慰謝料」

「そう。金よ。愛なんて不確かなものより、確実な現金を奪い取るの。それが、貴女のプライドを守る唯一の方法よ」

「……悪くないわね。いえ、最高だわ!」


 彼女は扇子をバチンと閉じた。


「わかったわ! 協力してあげる! 明日の式、私がめちゃくちゃにしてやるわ!」

「ふふ、頼もしいわ。期待しているわよ、同志(共犯者)」


 私たちは固い握手を交わした。

 これで、明日の結婚式には「裏帳簿」だけでなく、「本命婚約者の乱入」というビッグイベントが追加された。


 クラウスが、こっそりと私に耳打ちする。

 (お嬢様。彼女の実家、バーミリオン家は武闘派で有名です。彼女自身も『炎の魔法』の使い手だとか)

 (あら、最高じゃない。物理的な破壊力も期待できそうね)


 役者は揃った。

 火薬庫(屋敷)に、導火線(私)と、着火剤ローズマリーが揃ったのだ。

 あとは明日、盛大に爆発するのを待つだけだ。


***


**【本日の営業報告】**

**文責:クラウス**


* **売上:** 0ゴールド

* **経費:** 偽造書類作成費(インク代のみ)

* **獲得戦力:** ローズマリー嬢(炎属性・攻撃力高め・知力低め)

* **明日の予定:** 結婚式という名の「解体ショー」


**【クラウスの一言メモ】**

ローズマリー様のドレス、素晴らしい生地を使っておられましたが、センスが少々古臭いですね。

お嬢様が彼女のスタイリストになれば、それだけで一財産築けるかもしれません。


(第四話 完)


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