第四十八話:オリハルコンの輝きと、絶対に壊してはいけない戦い
研究所の最深部。
そこで私たちを待ち受けていたのは、神々しいまでに輝く巨人だった。
「……嘘でしょ」
私は目を疑った。
その装甲は、ミスリルではない。
虹色に輝く、伝説の金属。
「オリハルコン……!?」
市場価格でグラム一億ゴールド。
世界で最も硬く、最も魔力を通し、そして最も高価な金属。
目の前の巨体は、推定重量五十トン。
計算するだけで脳がショートしそうな金額だ。
『排除シマス』
オリハルコン・ゴーレムが腕を振り上げる。
賢者が受け止めるが、衝撃で床が砕け散る。
「ぐっ……! 硬え! 殴っても響かねえぞ!」
「魔法も弾かれます! 私の炎が効きません!」
リリスが叫ぶ。
物理無効、魔法反射。まさに無敵の要塞だ。
だが、私には別の意味で「無敵」に見えた。
「総員、攻撃中止!」
私は叫んだ。
「絶対に壊すな! 傷一つつけたら給料カットよ!」
「はあ!? 死にますよ!?」
「死んでも守りなさい! あれは敵じゃない! **『歩く国家予算』**よ!」
私はゴーレムを指差した。
一歩間違えれば即死。だが、そのリスクを冒してでも手に入れる価値がある。
「あれを無傷で手に入れれば、私たちは世界の経済を支配できる!
それに、あの素材があれば『黄金の盾』を強化できるわ! 万が一の時の切り札になるのよ!
S.G.も魔王も目じゃないわ! 真の支配者になれるのよ!」
私の言葉に、仲間たちの目の色が変わった。
恐怖が消え、強欲な光が宿る。
「……なるほど。やる価値はありますね」
クラウスが眼鏡を光らせる。
「オリハルコンの剣……欲しい!」
レオナルドが涎を垂らす。
「でも、どうやって倒すの? 傷つけずに」
ルナが問う。
私はニヤリと笑った。
「科学の授業を思い出して。
どんなに硬い金属でも、急激な温度変化には耐えられない。
**『熱疲労』**を狙うのよ!」
私は指示を出した。
「リリス! 最大火力の炎で炙りなさい!」
「任せて! 『地獄の業火』!」
ゴーレムが紅蓮の炎に包まれる。
オリハルコンが赤熱し、周囲の空気が歪む。
「今よ! ソフィア! 最大出力で冷却して!」
「はいっ! 『絶対零度』!」
ソフィアが祈りを捧げると、極低温の吹雪がゴーレムを襲った。
ジュウウウウウ!!
凄まじい水蒸気爆発。
急激な膨張と収縮に耐えきれず、オリハルコンの装甲にピキピキと亀裂が入る。
「いける! 賢者、関節を狙って!」
「オラァ!」
賢者が脆くなった関節を殴りつける。
ガキン! と鈍い音がして、ゴーレムの腕が外れた。
「やった! その調子よ! バラバラにしてお持ち帰りするわよ!」
私たちは歓喜した。
世界を救う戦い? 違う。
これは、史上最高額の「解体ショー」だ!
***
**【本日の営業報告】**
**文責:クラウス**
* **売上:** 測定不能(オリハルコン50トン確保)
* **経費:** 0ゴールド
* **戦利品:** 古代の超兵器(ジャンク品として回収)
* **所感:** お嬢様の「物欲」は、物理法則すら凌駕するようです。
**【クラウスの一言メモ】**
オリハルコンの輝きに目を奪われる一行の中で、賢者だけが「食えねえのか」と残念そうにしていました。
……彼のブレなさは、ある意味で癒やしです。
(第四十八話 完)




