第三十五話:闇の揺り籠への招待状
マネー・イーターをスクラップにした後。
瓦礫の中から、一通の封筒が見つかった。
金色の箔押しがされた、高級な封筒だ。
「……招待状?」
私が封を切ると、中には一枚のカードが入っていた。
『素晴らしい余興でした。
続きは私の城、暗黒帝国の首都**「闇の揺り籠」**にて。
最高のディナーと、世界の命運を賭けたゲームを用意してお待ちしております。
――S.G.』
「……ふん。余裕ぶっちゃって」
私はカードを弾いた。
罠に決まっている。だが、行かないという選択肢はない。
売られた喧嘩は買う。それが商人の流儀だ。
「行くわよ、みんな! タダ飯食って、ついでに城ごと乗っ取ってやるわ!」
***
数日後。
私たちは暗黒帝国の首都、「闇の揺り籠」に到着した。
そこは、光の聖都エリュシオンとは対照的な場所だった。
太陽は分厚い雲に遮られ、街は常に薄暗い。
だが、建物は黒曜石で造られ、妖艶な紫色の光が街全体を照らしている。
退廃的で、どこか魅惑的な美しさを持つ都市だ。
「……空気が重いな」
賢者が鼻を鳴らす。
「魔力の濃度が異常です。……強力な結界、いえ、呪いでしょうか」
ソフィアが不安そうに身を縮める。
その時。
街の奥にある巨大な城から、一人の女性が現れた。
漆黒のドレスに身を包み、長い黒髪をなびかせた美女。
その瞳は、底なしの闇のように深い。
「ようこそ、光を捨てた者たちよ」
女の声は、甘く、そして冷たかった。
「私はこの地の支配者にして、暗黒神に仕える魔女、**リリス**。あの子たち……S.G.の命により、貴方達をお迎えに上がりました」
魔女リリス。
S.G.の協力者か、それとも手駒か。
だが、彼女の口ぶりには、どこかS.G.を子供扱いするような響きがあった。
「ご丁寧にどうも。……で、S.G.はどこ?」
「城の最上階にてお待ちです。……ですが」
リリスは妖艶に微笑んだ。
「その前に、少し遊んでいきませんか? この街は『欲望の解放区』。貴女のような強欲な魂には、きっと気に入っていただけるはず」
彼女が指を鳴らすと、街の灯りが一斉に強まった。
カジノ、娼館、闘技場。
あらゆる快楽が、私たちを誘惑してくる。
「……へえ。悪くないわね」
私はニヤリと笑った。
S.G.との決戦の前に、この街の「市場調査」をしておくのも悪くない。
「いいわ。案内しなさい。この街の底の底まで、見せてもらうわよ」
私たちは魔女に導かれ、闇の奥へと足を踏み入れた。
そこには、光の聖都では決して味わえない、甘美で危険な「闇のビジネス」が広がっていた。
***
**【本日の営業報告】**
**文責:クラウス**
* **売上:** 0ゴールド
* **到着地点:** 暗黒帝国首都「闇の揺り籠」
* **接触者:** 魔女リリス(推定属性:闇・誘惑)
* **所感:** この街の経済圏は、表社会の常識が通用しません。……お嬢様にとっては、天国のような場所かもしれませんね。
**【クラウスの一言メモ】**
リリスの視線が、時折賢者に向けられているのが気になります。
「強い種が欲しい」という、魔女特有の本能でしょうか。……賢者殿、貞操の危機です。
(第三十五話 完)




