第二十四話:黄金の演説と、熱狂する信者たち
聖都中央広場。
そこには、この街に住む富裕層たちがすし詰めになっていた。
彼らの視線は、大聖堂のバルコニーに立つ私に注がれている。
私はマイク(魔導拡声器)を握り、深呼吸した。
さあ、ショータイムだ。
「聖都の諸君! 賢明なる投資家の皆様!」
私の第一声に、広場が静まり返る。
「先日の魔物襲来、怖かったでしょう? 祈っても神は助けてくれなかった。奇跡は起きなかった。……なぜか?」
私は一呼吸置き、言い放った。
「**対価を払っていなかったからよ!**」
ざわめきが広がる。
「タダより高いものはない。無料の救いなど、不良債権と同じです!
ですが、安心なさい。私が開発した新システム『黄金の盾』は違います。
これは、あなた方が支払った金貨を、直接防御力に変換する。つまり、**『払った分だけ確実に守られる』**、極めて公平で、合理的で、美しいシステムなのです!」
私は背後の巨大な装置を指差した。
黄金に輝く塔。その投入口には『現在レート:金貨一枚=防御力10』と表示されている。
「おおお……!」
「なんてわかりやすいんだ!」
「金さえ払えば死なないのか! 最高じゃないか!」
民衆の目が輝き始めた。
彼らは元々、高額な入国税を払ってでも安全を買おうとした人々だ。
「金で解決する」という提案は、彼らの哲学そのものなのだ。
「さらに! 本日はスペシャルゲストをお呼びしています!」
私が合図すると、隣にソフィアが進み出た。
純白のドレスに身を包んだ、伝説の初代聖女。
彼女はおずおずと手を振り、マイクに向かって言った。
「えっと……みなさん、こんにちは。初代聖女のソフィアです。
……あの、このシステムは凄いです。私の命を削らなくてもいいし、何より……**課金するとキラキラして楽しいです!**」
ソフィアが満面の笑みで、自分の財布から金貨を投入口に投げ込んだ。
**キュイーン!**
塔が光り、空に美しい結界の波紋が広がる。
「うおおおおお! ソフィア様万歳!」
「俺も課金する! 俺の金でソフィア様を守るんだ!」
「私財を投げ打てぇぇぇ!」
熱狂。
広場は興奮の坩堝と化した。
人々は我先にと金貨を投げ込み、結界はかつてないほど強固に輝き始めた。
「……ちょろいわね」
私はマイクを切り、小さく呟いた。
隣でアリスが、飛ぶように売れる「ソフィア様アクリルスタンド」の在庫を補充しながら苦笑している。
「あんた、教祖の才能あるわよ。私が霞んじゃうじゃない」
「あら、あんたも儲かってるでしょ? ウィンウィンよ」
私は広場を見下ろした。
そこには、金と欲望と、そして奇妙な安心感に満ちた「資本主義の楽園」が完成していた。
「……でも」
私は空を見上げた。
聖都の空は青い。
だが、この世界はもっと広い。
ジェラールが飛んでいった暗黒大陸。父王が支配する帝国。そして、まだ見ぬ市場。
「ここはもう、私の庭ね。……そろそろ、次の『カモ』を探しに行こうかしら」
私の呟きに、クラウスが恭しく一礼した。
「お供します、お嬢様。……世界の果てまで、集金に参りましょう」
聖都編、完結。
そして物語は、さらなる混沌と利益を求めて、新章へと突き進む。
***
**【本日の営業報告】**
**文責:クラウス**
* **売上:** 測定不能(『黄金の盾』への課金額が毎秒更新されているため)
* **獲得称号:** 聖都の救世主(兼、支配者)
* **ソフィア様の評価:** 「課金って楽しいですね! クセになりそうです!」……教育的指導が必要です。
**【クラウスの一言メモ】**
お嬢様の演説中、皇帝陛下が変装して最前列でペンライトを振っておられました。
「娘が輝いている……!」と号泣されていましたが、警備の賢者に「邪魔だ」と小突かれていました。
(第二十四話 完)




